豊かな音楽表現を可能にするピアノロール。その活用術について、アーバンギャルドのキーボーディストで作編曲家の、おおくぼけい氏が基礎から解説。本稿のテーマは、ベロシティでシンセのフィルターを開け閉めするという“モジュレーション”の基本技です。
ワウのように常に音色が変化
シンプルなフレーズに少しの変化を加えるだけでも、曲の彩りが豊かになります。題材曲のシンセ・シーケンスは、その一例。ベロシティでシンセのフィルター・カットオフを動かし、ワウ・ペダルをかけたように、常に音色を変化させているのです。“ベロシティでフィルターを動かす?”と思った方もいるでしょうが、簡単に言うと、ベロシティが強いときはフィルターが開いて明るいトーンになり、弱いときは閉じて暗いトーンになるよう設定しています。だからベロシティをランダムな値にすれば、常にトーンが変わるわけです。
今回は、シーケンスのベロシティをバラバラの値にしてから❶、Logic ProのシンセES2のモジュレーション・マトリクスを以下のように設定しました❷。
- Source(ソース):エンベロープ・ジェネレーター
- via(ヴィア):ベロシティ
- Target(ターゲット):フィルター・カットオフ
これにより、ベロシティの値によってフィルターがさまざまな開き具合になり、ワウ・ペダルのような効果を得られます。いわゆる“モジュレーション”という音作りの手法ですが、まずはベロシティ一定の状態(♪9-1)とベロシティをランダムにした状態(♪9-2)を聴き比べて、違いを感じてみてください。
◎題材曲のMIDI素材をダウンロード!
※上のページにアクセス後、パスワード「pianoroll2302_snrec」を入力してください
※MIDI素材は、トラックのスタンダードMIDIを書き出したものです
おおくぼけい
【Profile】アーバンギャルドのキーボーディストで、作編曲家としても活動。頭脳警察や戸川純、大槻ケンヂらの音楽にも携わり、映画や演劇のための作編曲も手掛ける。アーバンギャルドは、2023年1月25日にユニバーサルから『URBANGARDE CLASICK ~アーバンギャルド15周年オールタイムベスト~』をリリース。3月31日には、中野サンプラザホールにてライブ『15周年記念公演 アーバンギャルドのディストピア2023 SOTSUGYO SHIKI』を行う。