「PSP AUDIOWARE PSP 285」同社PSP 84とPSP 85を土台としたセミモジュラー式ディレイ・プラグイン

同社PSP 84とPSP 85を土台としたセミモジュラー式ディレイ・プラグイン「PSP AUDIOWARE PSP 285」

フックアップが運営するオンライン・ストアbeatcloudから、注目のソフトをピックアップする本コーナー。今回レビューするのはコンプ/リミッター・プラグインVintageWarmer 2でも有名なブランド、PSP AUDIOWAREからリリースされたディレイ・プラグインのPSP 285です。Mac/Windowsに対応しており、AAX/AU/VST/VST3プラグインとして動作。オフィシャルWebサイトには、“PSP AUDIOWAREの伝説的なディレイ・プラグインPSP 84とPSP 85を土台に、可変サンプル・レートのディレイ・ラインが提供する無限の可能性を追求した最新作”という記載があり、期待が高まります。実際、かなり細かい音作りができる仕様となっているようですので、各セクションを一つ一つ解説していきたいと思います。

ステレオだけではなくM/S処理も可能

 まずはセミモジュラー式のレイアウトになっている、PSP 285の画面を見てみましょう。同最下段にはセクション名が記載されており、左からDELAY LEFT、CONTROL、DELAY RIGHT、LFO & ENV、FILTERS、DYNAMICS、MIXER、REVERBと並んでいます(メイン画像)。どこに何があるのかが一目瞭然です。また、“アクティブになっていないノブはグレーに表示される”という仕様も、視認性の高さに一役買っていると言えるでしょう。

 PSP 285のメイン・セクションは、画面中央にあるLFO & ENVセクションの最上段に位置しています(画面①)。“PSP 285”というロゴの左側にはM/S処理を可能にするM/Sボタンを、右側にはこのプラグイン自体をバイパスするBYPASSボタンを装備。ステレオだけでなくM/S処理も行えるのはポイントが高いです。

画面① 画面中央の上部に位置するPSP 285のメインとなるセクション。同セクションの左側にはM/S処理を可能にするM/Sボタンを、右側にはプラグイン自体をバイパスするためのBYPASSボタンを備えている

画面① 画面中央の上部に位置するPSP 285のメインとなるセクション。同セクションの左側にはM/S処理を可能にするM/Sボタンを、右側にはプラグイン自体をバイパスするためのBYPASSボタンを備えている

 この真下にあるLFO & ENVセクションについては後述するとして、次はPSP 285の画面左側です。こちらにはDELAY LEFTセクション、CONTROLセクション、DELAY RIGHTセクションがあります(画面②)。上部中央にはL>>Rボタン、Linkボタン、L<<Rボタンを備えており、LinkボタンをオンにすることでDELAY LEFTセクションとDELAY RIGHTセクションがリンク。片方を調整すると、もう片方も同じようにパラメーターが調整されます。

画面② PSP 285の画面左側には、DELAY LEFTセクション、CONTROLセクション、DELAY RIGHTセクションをレイアウト。ピンポン・ディレイを可能にするPINGボタン/PONGボタン、プリディレイとメイン・ディレイを設定するディスプレイと上下の矢印ボタン、FEEDBACKノブ、PANノブ、GAINノブ、位相反転ボタンなどを搭載する

画面② PSP 285の画面左側には、DELAY LEFTセクション、CONTROLセクション、DELAY RIGHTセクションをレイアウト。ピンポン・ディレイを可能にするPINGボタン/PONGボタン、プリディレイとメイン・ディレイを設定するディスプレイと上下の矢印ボタン、FEEDBACKノブ、PANノブ、GAINノブ、位相反転ボタンなどを搭載する

 両セクションの上部には、ミュート用のMUTE INボタン、ピンポン・ディレイを演出するためのPINGボタン、またはPONGボタンを採用。そして、プリディレイ・タイムを調整するPRE TIMEとメイン・ディレイ・タイム用のMAIN TIMEをそれぞれ搭載しているので、個別に微調整して理想のディレイ・タイムを作成できるでしょう。上下の矢印ボタンを押すことで、1ms単位の連続的な増減が可能です。

 DELAY LEFTセクションとDELAY RIGHTセクションには、フィードバック信号をパンニングするFB-PANノブのほか、FEEDBACKやPAN、GAINといったノブが並びます。ディレイ信号の位相を反転させるINVボタンがあるので、コーラスやフランジャー効果を演出する際に便利でしょう。

 DELAY LEFTセクションとDELAY RIGHTセクションの間にあるCONTROLセクションについてですが、ここではMANUALノブでディレイのサンプリング・レートを変更できます(画面③)。つまり、ピッチを変えることができるのです。なお下部にあるDLY MODノブでは、ディレイに施すモジュレーションのデプス(深さ)を設定できます。

画面③ DELAY LEFTセクションとDELAY RIGHTセクションの間にあるCONTROLセクション。ディレイのサンプリング・レートを変更するMANUALノブのほか、モジュレーションのデプスを調整するDLY MODノブを搭載している

画面③ DELAY LEFTセクションとDELAY RIGHTセクションの間にあるCONTROLセクション。ディレイのサンプリング・レートを変更するMANUALノブのほか、モジュレーションのデプスを調整するDLY MODノブを搭載している

6種類のLFO波形/18種類のリバーブを内蔵

 PSP 285は、テンポ・シンク可能なLFOとエンベロープ・フォロワーを備えるモジュレーションを搭載しています。この機能をつかさどるのが、画面中央にあるLFO & ENVセクションです(画面④)。LFO波形は6種類から選べ、上下の矢印ボタンでLFOレートを音価やms単位で設定可能。OFFSETノブでLFO周期の基準点を変更したり、SPREADノブでL/Rのチャンネル間の位相をずらしたりすることもできます。またMOD SOURCEノブでは、LFOとエンベロープ・フォロワー信号という2つのモジュレーション・ソースのミックス比率を自由に調整可能です。

画面④ PSP285の画面中央に位置するLFO & ENVセクション。LFO波形は6種類から選べ、LFOレートやオフセット、LFOとエンベロープ・フォロワー信号のミックス比率などを調整できる

画面④ PSP285の画面中央に位置するLFO & ENVセクション。LFO波形は6種類から選べ、LFOレートやオフセット、LFOとエンベロープ・フォロワー信号のミックス比率などを調整できる

 次はPSP 285の画面右側になります。FILTERSセクションでは、下部にあるTYPEメニューより17種類のフィルター・タイプをセレクト可能(画面⑤)。カット・オフ用のFREQノブやレゾナンスを設定するRESOノブも搭載しています。

画面⑤ 2基のフィルターを備えるFILTERSセクション。フィルター・タイプはローパス、ハイパス、バンド・パスなど計17種類から1つを選択できる。またサチュレーションも搭載し、同セクションの下部にあるDRIVEノブでそのエフェクト量を調整可能だ

画面⑤ 2基のフィルターを備えるFILTERSセクション。フィルター・タイプはローパス、ハイパス、バンド・パスなど計17種類から1つを選択できる。またサチュレーションも搭載し、同セクションの下部にあるDRIVEノブでそのエフェクト量を調整可能だ

 さらにはFILTERSセクションの中央部にあるDRIVEノブで、サチュレーションを施す量を設定可能。DRV TYPEメニューでは、サチュレーションをインサートするルーティング・ポイントを8カ所から選べ、それぞれにハードとソフトといったサチュレーション・モードが用意されています。この辺りも、かなり細かい調整ができる仕様です。

 DYNAMICSセクションにはゲートが備わっており、エコーの数やレベルを制御できます(画面⑥)。RTEメニューでは入力信号を切り替えられ、外部からのサイド・チェイン信号も入力できるようになっています。続くDUCKERノブはスレッショルドとして機能。入力信号が任意のスレッショルド値に達すると、ウェット信号が自動的に減衰し、入力信号を明瞭に聴かせられるという仕組みになっていて、これは新鮮で素晴らしい機能だと感心しました。

画面⑥ ゲートを装備するDYNAMICSセクション。外部からのサイド・チェイン信号を入力することもできる。また入力信号が任意のスレッショルド値に達すると、ウェット信号が自動的に減衰するDUCKER機能も搭載している

画面⑥ ゲートを装備するDYNAMICSセクション。外部からのサイド・チェイン信号を入力することもできる。また入力信号が任意のスレッショルド値に達すると、ウェット信号が自動的に減衰するDUCKER機能も搭載している

 そしてMIXERセクション(画面⑦)。上からMETER、INPUTノブ、MIXノブ、OUTPUTノブと並びます。ここにはブリック・ウォール・リミッターが搭載されており、LIMノブでその出力レベルを設定できる点も高評価でしょう。

画面⑦ MIXERセクションには、INPUTノブやMIXノブ、OUTPUTノブを装備。またブリック・ウォール・リミッターを内蔵し、LIMノブでその出力レベルをコントロールできる

画面⑦ MIXERセクションには、INPUTノブやMIXノブ、OUTPUTノブを装備。またブリック・ウォール・リミッターを内蔵し、LIMノブでその出力レベルをコントロールできる

 最後は画面右端のREVERBセクション(画面⑧)。PSP 285にはリバーブも備わっており、このセクションのTYPEメニューからはアンビエンス/スプリング/プレート/リバースといった計18種類のリバーブ・アルゴリズムを選択できます。なお、これらのアルゴリズムにはステレオ処理モードのほか、ピンポン・ディレイ時を意図したデュアル・モノラル処理モードも選べるようになっています。

画面⑧ PSP 285の画面右端にあるREVERBセクション。アンビエンス/スプリング/プレート/リバースといった計18種類のリバーブを搭載する。DAMPノブでは、リバーブの高域成分を減衰させる度合いを調整可能

画面⑧ PSP 285の画面右端にあるREVERBセクション。アンビエンス/スプリング/プレート/リバースといった計18種類のリバーブを搭載する。DAMPノブでは、リバーブの高域成分を減衰させる度合いを調整可能

 このセクションではINSERTメニューにも注目。リバーブの挿入ポイントを設定でき、ディレイがかかるまえのドライ信号にかけるのか、全行程の最終段にかけるのか、またはドライとウェットのパラレル処理をしたあとの段にかけるのかを選択可能です。まさに“自由自在”といった感じですね!

 プリセットは約400種類を収録。いちから音作りするのに不慣れな方でもプリセットを活用すれば、そこから自分の好みに調整できますし、各パラメーターがどのように機能するのかを学ぶことができます。

 全体的な使用感ですが、まず驚いたのは音質がとてもナチュラルだということ。PSP 285は64ビット・フロート処理のオーディオ・エンジンを内蔵し、独自のプロセッシング・アルゴリズムを使用しているということで、その辺が理由なのかもしれません。

 L/Rで独立したディレイは、パーカッションなどのリズム楽器はもちろん、ピアノやギターに用いても効果的。リバーブを搭載しているので、スラップ・バック・ディレイの演出も容易に可能です。さらにシンセ・パッドやプラックといったオケに埋もれがちな音色のパートにPSP 285をインサートすることで、パンニングとはまた違った有機的な動きを演出することもできるでしょう。

 またローファイ系の楽曲で登場するピアノやギターに試したところ、非常にユニークでクリエイティブなサウンドが作れたので、想像以上の効果を感じました。当初はダンス・ミュージック全般に向いている感じがしていましたが、各セクションを組み合わせることで無限の音作りを楽しめるため、幅広い音楽ジャンルに対応できるでしょう。

 何かもう一つ、面白いインスピレーションやアイディアがほしいというとき、PSP 285は頼れるディレイ・プラグインになるでしょう。直感的な操作ができる点もお忘れなく。ビギナーからプロの方までお薦めします。

 

PSP AUDIOWARE PSP 285

beatcloud価格:19,660円 ※2023年2月時点

 Requirements 
■Mac:macOS 10.12〜13、AAX/AU/VST/VST3(いずれも64ビット)対応のホスト・アプリケーション、APPLE Siliconをサポート
■Windows:Windows 7〜11、AAX/VST/VST3(いずれも64ビット)対応のホスト・アプリケーション
■共通:iLok License Manager

 

DJ WATARAI

【Profile】DJ/トラック・メイカー/プロデューサー。これまでにMUROやNitro Microphone Underground、MISIA、DOUBLE、AIなどへ楽曲提供する。渋谷HARLEM『MONSTER』のレギュラーDJとしても活動。

オンライン・ストアbeatcloud

beatcloud.jp

diggin' beatcloud〜オンライン・ストアで注目のソフトをチェック