ライブ/配信/エキシビション・スペースLUSH HUBがRock oN SHIBUYA地下に8月12日オープン

ライブ/配信/エキシビション・スペースLUSH HUBがRock oN SHIBUYA地下に8月12日オープン

 メディア・インテグレーションは、ライブ/配信/エキシビション・スペース、LUSH HUB(ラッシュハブ)を8月12日にオープンする。音楽/映像のクリエイターを34年にわたりサポートしてきた同社のノウハウを結集し、テクノロジーや芸術、メディアの融合地点として、世界に向けて発信する拠点となるスペースだ。ロケーションは、同社が運営するRock oN Company SHIBUYAの地下ということもあり、アクセスに便利な好立地に位置する。写真とともにレポートしていこう。

用途に合わせた3つのエリアから構成

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LUSH HUB入口から見たホール内の様子。左側が“EXHIBITIONエリア”、中央が“STAGEエリア”で、奥にある階段を上がったところに“多目的ルーム”がある

 去る6月29日、プレオープン中のLUSH HUBにて取材を敢行。まず、どういった経緯で今回LUSH HUBをオープンすることになったのかを、メディア・インテグレーション代表取締役の前田達哉氏に伺った。

 

 「場所自体はRock oN Company SHIBUYAができた当初からあったので把握していて、昨年この場所を居抜きで借りることができました。ライブ配信などのイベントが増えた昨今ですが、何か企画を考えても場所を借りてとなると足が遅くなりますし、コストも大きくなって企画自体ができないということにもつながります。そういった事情からどうしても脱却する必要があると、ここ数年思っていました。今までと価値観がすごく変わってきた時代だからこそ、クリエイティブな活動を応援したいという気持ちがあります。我々だけでなく、ほかのメディアの方とも一緒にやっていきたいですね」

 

 LUSH HUBは主に3つのエリアから構成されている。ライブ演奏やストリーミングを行うことができる“STAGEエリア”。外部企業や団体がイベントや展示に使用できる“EXHIBITIONエリア”。そして体験型学習やワークショップで使う“多目的ルーム”。ライブのキャパシティとしては、スタンディングで150人、着席で70人ほどを想定し、まずはアコースティック編成のライブを行えるような準備をしているとのこと。ではルーム・アコースティックはどのようにコントロールしているのだろうか。

 

 「デッドにするのが基本ですが、ただライブ空間やレストランを完全にデッドにしてしまうと面白みが無くなってしまうので、吸音をどこまで増やすのかを検討しているところです。今回特に力を入れて考えたのがEXHIBITIONエリアにあるオブジェ。ショウ・ケース用の棚ですが、拡散効果のある形になっています。天井にある雲の形をしたオブジェにもフェルトが張ってあって、定在波を抑えています」

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EXHIBITIONエリアに置かれているショウ・ケース

 続いてメディア・インテグレーションの渋谷隆了氏が、LUSH HUBが目指すビジョンについて語ってくれた。

 

 「テクノロジーと芸術が文化として融合するプラットフォームとなることを目指します。ライブ、ストリーミング、レコーディングに限らず展示、AR、体験型学習、カンファレンス、劇場やレストランなど、さまざまなことを行っていける場所にしていきたいですね。企業の方には新製品の発表などにおいて、実際にお客様の反応を見る場として使っていただけるように考えています」

 

すべてがネットワーク接続された最先端の映像/音響機材

 では、ここからLUSH HUBの使用機材について話を聞いていこう。STAGEエリアには、ライブ・ストリーミング用に多数の機材がセッテイングされていた。まずは映像のシステムについてRock oNの前田洋介氏に解説してもらった。

 

 「NEWTEK TriCaster Mini 4Kをシステムの中心にしており、すべての映像機器がNDI(ネットワーク・デバイス・インターフェース)でネットワーク接続されています。カメラ類はすべて、各所に配置されたPoEハブでネットワーク化され、ビデオ・スイッチャーへ信号を送っています。NDIを使うメリットは、カメラまでがイーサーネット・ケーブル1本で済むところですね。PoEを通じての電源供給とカメラのコントロール信号の送信を同時に行いながら、カメラからは信号が送られてくるというシンプルなセットアップをできるのが、NDIの非常に優れた点だと思います」

 

 使用機材についてもメディア・インテグレーションならではの、最先端の製品が用意されているという。

 

 「ビデオ・スイッチャーはTriCaster Mini用コントロール・サーフェスです。コンパクトですが非常にパワフルなもので、8系統の入力が4台分あります。放送局のように、あらかじめ準備しておいた映像を切り替えて使うことができます。カメラにはBLACKMAGIC DESIGN URSA Mini Pro 12Kという、その名の通り12Kの映像が撮れるモンスター・マシンを導入し、ほかのカメラもBLACKMAGIC DESIGN製でそろえました。Pocket Cinema Camera 6K ProとPocket Cinema Camera 6K、それにPocket Cinema Camera 4Kを2台と、最低でも4K以上の映像を収録できるようにしています。三脚にはLIBEC、MANFROTTOの製品を採用しました」

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STAGEエリア。カメラはBLACKMAGIC DESIGN URSA Mini Pro 12Kのほか、BLACKMAGIC DESIGN製でそろえられ、最低でも4K以上の映像を収録できるようになっている。イベントが無いときは、こちらでも製品展示が行われる

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映像コントロール・システムのNEWTEK TriCaster Mini 4K。会場内すべての映像機器がTriCaster Mini 4Kを中心にネットワーク接続されている。STAGEエリア後方にはミラー・ルームがあり、機材をそちらに移動して映像調整を行うことも可能だ

 会場の照明については灯体数を最小限にした上で、フルRGB対応の灯体を導入しているとのこと。照明卓にはDMX対応のAVOLITES Quartzを採用し、フル・リモートの多彩な演出が可能だ。続いて音響機器について前田洋介氏はこう語る。

 

 「音響機器はWAVES LIVE SoundGridを中心にすべてネットワーク接続されています。メインのコンソールはWAVES LIVE EMotion LV1 Live Mixer、ステージ・ボックスもEmotion LV1 Live Mixerです。できるだけ最先端のものを用意したい、という思いで選びました。これらもイーサーネット・ケーブル1本で接続が済むので、お客様の足元に配線がたくさんはうようなことがなくて済みます。メイン・スピーカーはADAMSON S7PとPC5で、非常にナチュラルなサウンドです。パワー・アンプはLAB.GRUPPEN D120:4Lを2台とD40:4L が1台で、かなり余裕を持たせた出力のものを導入しました。マイクもEARTHWORKS QTC50などの高性能のものをそろえ、かなりクオリティの高い配信をできるのではないかと思っています」

 

 広いスペースの奥には吸音材を張ってレコーディングが可能な部屋もあり、準備段階ではあるがさまざまな計画をしているようだ。LUSH HUBが現在進行形で進化しているのを感じ取ることができた。

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ラック・ケース上に置いてあるのがステージのFOHコンソール、WAVES LIVE EMotionLV1 Live Mixer。中段にホスト・コンピューターのAxis OneとSoundGridサーバーのSoundGrid Extreme Server-Cを2台用意している

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STAGEエリア、ステージ。スクリーンにはグリーンバックも用意されており、床面と合わせたグリーンバック撮影も可能だ

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メイン・スピーカーのADAMSON S7P(写真右)と、PC5(写真左)

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サブウーファーのADAMSON S118。なお、パワー・アンプはメイン・スピーカー用も合わせてLAB.GRUPPEN D120:4Lを2台とD40:4Lを1台採用している

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STAGEエリア隣の展示スペース。BLACKMAGIC DESIGN DaVinci Resolveシリーズや、Fairlight Advanced Consoleが展示されている

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STAGEエリアの奥にある一室。吸音材を張っておりレコーディングにも対応するが、部屋の用途としてはこれからさらに変わっていく可能性もあるとのことだ

最新機器の体験/試聴ができるEXHIBITIONエリア

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EXHIBITIONエリア。各机によってPost Productionエリア、Digital Mixingエリアなど種類が分かれており、アウトボードのAMS RMX16や1073、33609、モニター・スピーカーのFOCAL PROFESSIONAL Alpha Evo、オーディオ・インターフェースのAPOGEE Duet 3が展示されている。こちらに展示されている機材は、マイクや用意した音源を使って体験することができる

 EXHIBITIONエリアでは製品の展示を期間限定で行っており、現在はAMS NEVEの製品が展示されている。メディア・インテグレーションAMS NEVE担当の高沢雅人氏から話を聞いた。

 

 「AMS NEVE Neve Genesys Black Consoleと8424という2台のコンソールを展示しています。恐らくこの2台を同時に見ることができて聴き比べができるという環境は、イギリスにある本社のショウ・ルーム以外ではないかと思います。もう一つのデスクにはアウトボードを展示しています。AMS RMX16や1073シリーズ、33609など、これらをその場でマイクを挿して、実際に試していただけるスペースとなっています。本物のNEVEサウンドをぜひ体感していただきたいと思います」

 

 2台のコンソールはステージのFOHミキサーまでイーサーネット・ケーブルでつながっており、メイン・スピーカーから出力することも可能だ。さらにメディア・インテグレーションの並木大輔氏に、そのほかの展示品について伺った。

 

 「展示品を置いている机は、弊社で取り扱っているイタリアの家具メーカーZAOR製のもので統一しています。自宅などの小さなスタジオを意識した展示も行っていまして、APOGEE Symphony I/OがSoundGridサーバーとイーサーネット・ケーブルで接続されています。スピーカーはFOCAL PROFESSIONAL Alpha Evoで、こちらは8月に発売を予定しているモデルです。同じく8月発売予定のAPOGEE Duet 3もこちらに展示しています」

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EXHIBITIONエリア奥のAMS NEVEコーナー。スタジオ・コンソールのNeve Genesys Black Console(写真右)とサミング・ミキサーの8424(写真左)が並べられている。2台ともSTAGEエリアのFOHミキサーとネットワーク接続されており、ここからメイン・スピーカーに音を出力することもできる

 取材当日はstudio forestaの森田良紀氏を講師に迎えたライブ・ストリーミングによるイベントが行われていた。LUSH HUBのシステムを使って、ネットワーク接続されたカメラを複数台使ったスイッチングや、森田氏が実際にライブ・ストリーミングで使用した例を参照にEMotion LV1Live Mixerの解説などが行われた。なお、イベントの模様はYouTubeでアーカイブ視聴することができる。

 

 

 イベントを終えた森田氏に、LUSH HUBの印象について話を聞くことができた。

 

 「かなり先進的な空間になっていると思います。機材の選択にも中途半端ものは入れないという意思を感じますね。EMotion LV1 Live Mixerは簡単にソフトウェアをアップデートでき常に最新のものが使えるというのは、ほかのコンソールにはないメリットです。ライブ・ストリーミングでもDAWと同じようにプラグインを使用でき、普段レコーディングを行っているエンジニアは対応しやすいのではないでしょうか。天井が高く、地下特有の圧迫感もないので、人を入れたイベントが早くできるようになればいいですね。これだけ高度にネットワーク化されたスペースもないでしょうし、どんどんライブ配信イベントなども行ってほしいと思います」

 

 最新鋭の機材が一同に会するLUSH HUB。そこは、クリエイターに、オーディエンスに、未来を体感してもらいたいという思いがあふれている空間だった。創造の発信源として、LUSH HUBがその役割を担っていくのは間違い無いだろう。

 

 なお、オープン当日となる8月12日には、オンライン・イベント“#WHATISLUSHHUB”を開催。7名のゲストを迎えた3部構成のスペシャル番組が配信される。リアルタイム視聴者にはゲストのサイン入りTシャツの抽選プレゼントも予定されているので、ぜひチェックしていただきたい。

“#WHATISLUSHHUB”

●配信日時
8月12日(木)18時〜

●出演
○第一部:LUSH HUB REPORT
古坂大魔王

○第二部:LUSH HUB TALK
本間昭光
江島啓一(サカナクション)
土岐彩香

○第三部:LUSH HUB LIVE
DÉ DÉ MOUSE
SO-SO
Carpainter 

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