リボン・ドライバーを搭載したPAスピーカー、ALCONS AUDIO東京試聴会

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 去る3月11日、東京・北区の北とぴあにて、イースペックが昨年より取り扱いを開始したALCONS AUDIOの試聴会が開催された。昨年7月に同社が拠点を置く大阪での試聴会は開催されていたものの、コロナ禍にあって東京での試聴会は幾度となく延期。このたび、業界関係者のみを集めて開催に至った。

 

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試聴会は検温やアルコール消毒などの対策を施して開催された

 

 ALCONS AUDIOはオランダで2002年に創業されたスピーカー・メーカー。その最大の特徴は、高域再生にリボン・ドライバーを採用している点にある。近年、スタジオ・モニターでも採用例が増えているリボン・ドライバーだが、PA用スピーカーで一般的なコンプレッション・ドライバー+ホーンの組み合わせと比して、1/10という低ひずみ率を得ているという。このリボン・ドライバーが担う全帯域の音圧レベルで均一なバランスを保つことが可能で、フラットな特性によってハウリング・マージンの拡大にも寄与しているそうだ。

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カタログ表紙に掲載されているプロ・リボン・ドライバー


 また、ALCONS AUDIOのRBNプロ・リボン・ドライバーは、点音源ではなく線上の音源となるため、特許取得済み技術によって均一な円筒波パターンを得ることができるとのこと。ラインアレイに最適な指向特性が得られるという。

 

 今回の試聴会では、ポイント・ソース・スピーカーのVシリーズ、水平方向のアレイを構成できるRシリーズ、主力となるラインアレイのLシリーズなどが登場。どのシステムも一貫したサウンドを奏でていた。惜しむらくは、CDをソースとした試聴であったこと。プロ・リボン・ドライバーの持つ高域再現性故に、その音源自体が持つひずみ具合の方が目立って聴こえた。逆に言えば、それだけ再現性が高いということ。もちろん参加者はプロのPAエンジニアばかりなので、その点は理解していることだろう。コンプレッションの少ないピアノ楽曲などでは、伸びやかなプロ・リボン・ドライバーのサウンドが堪能できた。ライブ・ソースでの試聴もぜひしてみたいところだ。 

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試聴会での製品解説。試聴になると、会場内を歩き回りカバレージ・エリアを確認する参加者も多かった

 また、スピーカー本体だけでなく、DSP内蔵のパワー・アンプALC Sentinel SeriesやMac/Windows対応のDSPコントロール・ソフトALControl、音響シミュレート・ソフトEASE Focusに準拠したセットアップ&シミュレーション環境Alcons Ribbon Calculatorなども用意。特にパワー・アンプのALC Sentinel Seriesは、長いスピーカー・ケーブルを引き回したときのダンピング・ファクター損失の影響を動的に補正するSIS(Signal Integrity Sensing)という機能を内蔵し、ひずみの更なる低減にもつながっているという。

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DSP内蔵パワー・アンプ、Sentinel 10。中央の眼が映っている部分はタッチ・ディスプレイで、専用ソフトALControlを使用せずとも、本体のみですべてのパラメーターにアクセスできる

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ALC Sentinel Seriesのディスプレイに映る眼のグラフィックは、まばたきをする。これはスクリーンセイバーとしての役割をしているそう(画面表示オフにもできる)

 

 ALCONS AUDIOの日本での本格展開はこれからだが、世界に目を向けると欧米を中心に多くのホールや劇場、クラブ、ツアー(例としてアラン・パーソンズ・プロジェクト、a-ha、アリソン・クラウスなど)で導入されているとのこと。さらに日本で未展開だが、シネマ用スピーカーも同社は手掛けており、映画館はもちろんDolby Atmos対応のダビング・ステージや個人宅(!)の大型ホーム・シアターにも導入事例があるそうだ。

 

 イースペックでは今後もALCONS AUDIOの試聴機会を企画しているとのこと。リボン・ドライバーのサウンドを、ぜひ体験してもらいたい。

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