マイクの老舗メーカーであるAKGから、スピーチ/アナウンス用のリーズナブルな2.4GHz帯ワイアレス・マイク・システムが発売された。DMS100 Seriesとその上位機種であるDMS300 Seriesがあるが、今回はDMS100 Seriesをレビュー。ハンドヘルド・マイクが付属するDMS100 Set ハンドヘルドマイクというモデルを試したが、そのほかにもDMS100 Setイヤーフックマイク、DMS100 Set ラベリアマイクが近日発売予定だ。
状況に応じて送受信周波数を自動切り替え
同一空間で最大4台まで使用可能
箱を開けて製品を取り出したときに、まず驚いたのはその軽さだ。受信機は368gと、スマートフォン2個分くらいの重量である。248gのハンドヘルド・マイク型送信機と合わせてもノート・パソコンより軽く、持ち運びも容易だ。信号の送受信には非圧縮の24ビット/48kHzデジタル伝送方式を採用している。また、音声情報は強固なAES256ビットで暗号化して送信されるということで、セキュリティ面も心強い。
通常、電波のトラブルがあってはならないプロの現場では、申請が必要な周波数(700MHz帯)を使用する。だが、教育機関やちょっとしたイベント・スペースでは、手軽に使える2.4GHz帯のシステムのメリットは大きい。2.4GHz帯を使うに際して最も懸念されるのは電波障害だが、DMS100 Seriesは、電波状況に応じて信号の送受信周波数を自動で切り替えるDFS機能を搭載し、ワイアレス運用での多くの不安が解消されている。また、受信機内部にある2本のアンテナが受信した信号のうち、受信状態の良い方を採用するダイバーシティー方式を採用する。本機は同一空間で最大4台使用可能なので、トーク・セッションなどでも活躍できるだろう。しかも、周波数設定が必要無いというのはとてもありがたい。
受信機側は、電源スイッチやペアリング・ボタンを兼ねた音量ノブ、背面の–30dBと0dBの出力切り替えスイッチのみを装備。音量ノブを長押ししてペアリング・モードにし、送信機のフタを開けたところにあるペアリング・ボタンを押すと送信機と受信機が同期される。コンピューターにワイアレス・マウスをつなぐことと大して変わらないので簡単だ。
受信機のフロント・パネルには駆動状態や電池残量、クリップ状態、通信状態、ペアリング状態が表示される。通信状態はWi-Fiの電波表示と同じで、とても分かりやすい。ペアリング状態のインジケーターが点灯していれば正常で、点滅は切断状態、素早い点滅は待機状態となっている。
送信機側も電源/ミュート・ボタンとペアリング・ボタンしか付いていない。専門知識などなくても誰でも扱える仕様だ。電源は2秒の長押し、ミュートは1秒の長押しで、インジケーターの色を確認しながらのオン/オフが必要になる。使用者がスイッチを探したりして電源を切ってしまう恐れもあるので、場合によってはテープなどで隠してしまうのもよいだろう。
カラッとした明るい音のマイク
超指向性でハウリングが起きにくい
実際にイベント会場のアナウンスでマイクを使用してみた。別のワイアレス・マイクとの比較を試みたところ、操作感はそん色無い。あらゆる場合を試したわけではないが、Wi-Fiの飛び交う中でもトラブルは一度も無かった。推奨は30m以内と表記されているものの、内蔵アンテナのみで外部アンテナ接続端子は無いので、近くで使うのがよいだろう。また、マイクは超指向性となっているため、スピーカーが話者の背面に来る場面でもハウリングに苦労するようなことも無かった。
マイクの音質に関しては、カラッとした明るい音だと感じた。ワイアレス・マイク特有のコンプ感が無かったのは、デジタル伝送による効果もあるのだろう。送信機は単三電池×2本で約12時間駆動するので、ほぼ一日中使えることになる。今回は充電池で使用したが、特に問題無く使えることが確認できた。電池交換は簡単にでき、かつカバーは確実にロックされるところに好感が持てる。
試しにペアリングしたまま受信機の電源を切ったり、マイクをオンにしたまま電池を交換したりしてみたが、ノイズはほぼ出なかった。もし煩雑な使用をしてしまっても耐え得ることができる性能となっている。
近年、簡易なPAシステムを手軽に使用できる製品が数多く出てきているが、同じように需要が多いのがワイアレス・マイクだ。イベントなどを手軽に行うには、専門知識の必要無しに使えることが必須条件とも言えよう。シンプルな操作性のDMS100 Seriesは、そういったシーンにおいて重宝される魅力的なワイアレス・システムになっている。
製品ページ:https://proaudiosales.hibino.co.jp/akg/4577.html
AKG DMS100 Series
DMS100 Set ハンドヘルドマイク:オープン・プライス
(市場予想価格:26,000円前後)
●システム性能 ▪電波形式:F1D▪伝送方式:GFSK(ガウスフィルター・シフトキーイング)▪搬送波周波数:2.4GHz帯▪到達距離:約30m▪周波数特性:70Hz~20kHz(+1/-3dB)▪ダイナミック・レンジ(1kHz):116dB▪AD/DA:24ビット/48kHz ●受信機▪出力端子:XLR端子またはフォーン端子▪最大出力:+15dBu(XLR)、+9dBu(フォーン)▪外形寸法:200(W)×44(H)×141(D)mm(突起部を除く)▪重量:368g ●ハンドヘルド型送信機▪形式:ダイナミック型▪指向特性:スーパー・カーディオイド▪アンテナ形式:内蔵式アンテナ▪電源:単三形アルカリ乾電池×2本▪電池寿命:約12時間(使用環境により異なる)▪外形寸法:51(φ)×250(H)mm▪重量:248g