「VIENNA SYMPHONIC LIBRARY Big Bang Orchestra: Black Eye」製品レビュー:70人編成のオーケストラによる総奏を収めたFX特化型ソフト音源

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 今回レビューするのは、VIENNA SYMPHONIC LIBRARYから発売されたBig Bang Orchestra: Black Eyeです。これは既に同社から公開されている大迫力の無償ライブラリー、Big Bang Orchestraの拡張音源となっており、ヒットやクラスターといったさまざまなオーケストラFXを追加してくれます。

総奏に特化した音源なので
打ち込みやミックスも行いやすい

 まずは肝心の音を聴くべく、適当なパッチを順にロードしてみます。すると、映画の『サイコ』や『ジョーズ』といったホラー・パニック系作品に合いそうなオーケストラ・サウンドが鍵盤を鳴らすだけでいとも簡単に表現できます。こういったサウンドには不協和音が多分に散りばめられており、また現代的な特殊奏法も多いため、一から作るとなると通常の音源ではかなり難易度が高いです。しかし、このBig Bang Orchestra: Black Eyeではそのような苦労はありません。

 同社の音源と言えば、音はこの上なくリアルですが、その分打ち込みやミックスの難易度も高いという印象でした。しかしこの製品は音のリアルさを残しつつ、総奏に特化することで打ち込みやミックスも行いやすくなっており、まさに良いとこ取りと言えるでしょう。手軽にVIENNA SYMPHONIC LIBRARYのリアルな音を鳴らしたい人にはうってつけで、初心者にもお薦めです。

 また、今まで同社のほかの音源を使用していた人には必要ないかと言えばそんなことはありません。製品の特性として、特殊な奏法の音源が収録されていることと、倍音も収められているので打ち込みでは表現しづらい唯一無二の音が出せる点が挙げられます。ここぞというピンポイントなタイミングで効果を発揮するのではないでしょうか。  

多機能なサンプル・プレーヤーを付属
多様な奏法を透明感あるサウンドで収録

 それでは音源をさらに詳しく聴いていきましょう。起動すると画面上部左紫色のカテゴリーに、Hits、Phrases and FX、Clustersという3つの音源セクションがあります。まずHitsには、文字通りオーケストラ・ヒット音源を収録。中にはさまざまな種類のサウンドがあり、音の最後にピッチが変化するもの、装飾音、コードが鳴る珍しいヒットもあります。個人的にはこのコードのヒットがお気に入りなのですが、それもそのはず。今回70人編成のオーケストラによる総奏で収録されているのです。各パートが別に収録されたライブラリーと比べると、オーケストラの空気感が段違いです。

 次にPhrases and FXですが、こちらにはランやリップなどの基本的な奏法から、エフェクティブに特化した奏法まで幅広く収録されています。これがまさにパニック映画の効果音そのものなのです。一音聴くだけで“ああ、これこれ!”となること請け合いです。中でも“Octave trills”というパッチの音が作り出す透明感のあるオーケストラ・テクスチャー・サウンドは、何物にも代えがたい独特の雰囲気を持っています。

 最後にClustersですが、こちらにはショートやロング、マルカートといった長さ別のクラスター・サウンドと“Special clusters”という鳴らすだけで雰囲気たっぷりのクラスターFXサウンドが収録されています。このような音はどれも打ち込みでそれっぽく鳴らすのが困難なため、とても重宝しますね。

 音以外の部分で特筆すべき点は、付属のサンプル・プレーヤーVienna Synchron Playerです。このVienna Synchron Playerは同社のVienna Ensemble Proをさらに使いやすくした印象で、視認性にも優れています。PERFORM、CONTROL、EDIT、MIXというタブを選択でき、PERFORMではボリューム、エクスプレッション、アタックやリリースなどのパラメーター変更が可能。フィルターなども調整できるので、より生音らしいサウンドを得ることもできるでしょう。CONTROLではPERFORMで設定したアタックなどの効果を細かく調整できます。EDITではエンベロープをグラフィカルに調整可能です。どのタブでも最小限のアクションでアーティキュレーションやさまざまなパラメーターを自在に操作できるところが優れています。  

 

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PERFORMセクションではボリューム、エクスプレッション、アタックやリリースなどのパラメーター変更が可能。ほかにもフィルターやヒューマナイズ・チューニングなどを調整することができる

 

 またMIXでは、各パートのミックスが可能。EQやリバーブといったエフェクトの調整もできますが、サチュレーターやロータリーといった一般的な音源のミキサーには搭載されていないエフェクトも使用できるのが魅力です。このサチュレーターの出来はとても良く、かけると良い感じにひずみがかったエフェクティブな音になります。非常に多機能なので、制作のスピード・アップに一役買ってくれますね。こういった専用のサンプル・プレーヤーを擁する音源は近年珍しくなくなってきましたが、Vienna Synchron Playerのような多種多様なこだわりのあるプレーヤーは今まで見たことがありません。

 オーケストラの総奏収録による限りなくリアルな音と、打ち込みやミックスの手軽さを兼ね備えたBig Bang Orchestra: Black Eyeは、オーケストラFXサウンド・ライブラリーの新たなスタンダードになりそうです。

 

問合せ:SONICWIRE

 

サウンド&レコーディング・マガジン 2020年4月号より)

 

VIENNA SYMPHONIC LIBRARY Big Bang Orchestra: Black Eye

13,800円

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REQUIREMENTS ▪Mac:OS X 10.10以降、AAX/AU/VST対応のDAW ▪Windows:Windows 8/10、AAX/VST対応のDAW ▪共通:INTEL I5/I7/Xeon以上CPU、8GB以上のRAM。64ビットホスト・アプリケーション環境のみに対応。22GB以上のディスク空き容量。SSD(M.2、SATA 6 or USB3/3.1 UASP対応)の使用を推奨。VIENNAキー(別売り)