Q. シンプルな音に風合いを出す方法を教えて! 〜WAVES Retro Fiで解決!

 世界中のエンジニア/クリエイターが愛用するWAVESのプラグインは、具体的にどのような場面で力を発揮するのか? ミックスやサウンド・メイクで悩みがちなポイントにプロが答える形で、WAVESプラグインを用いたソリューションを紹介!

A. アナログ再現系のツールを取り入れてみては?

 使用するWAVESプラグイン:Retro Fi 

WAVES Retro Fi

Retro Fi|24,200円

 私は普段、プラグインをじゃんじゃん使う方ではなく、決まったリバーブとEQ、ハードウェア・サンプラーなどで音の質感作りを行っているのですが、今回試したローファイ・エフェクトRetro Fiがあれば、音に風合いや個性を手軽かつ素早く出せるのだと実感しました。

 

 まず面白いと思ったのがSTYLER。音の質感を往年の録音物っぽくするスイッチで、1950年代風をはじめ4種類の年代のプリセットが用意されています。どれも高域をマイルドにして音を前に出してくれるため、“ファットになる”といった言い方もできそう。また年代が古いほどに高域が削れ、ひずみが増す印象です。アシッド・ジャズのように1970年代を参照した1990年代の音楽をプリセットの70sに通せば“70年代感”が増幅されるため、当時のジャズ・ファンクと並べてDJプレイできるようになるかもしれません。この手法はリエディットやサンプリングにも使えると思います。

 

 NOISE部のプリセットも面白く、例えばVinylカテゴリーのものを選ぶとレコードのチリ・ノイズを加えられます。しかも特定パターンのループでなく、ランダムにノイズを生成するようです。SPACE部のエコーやリバーブもデジタル臭くなく、ノブの数が極めて少ないので“誰でも使える”という感じが親しみやすい。そのほかSQUASHというコンプレッサーやリング・モジュレーターなども備えていますが、どれも見たそばから使えるシンプルな設計なので、“曲を完成させる”というゴールに向けて歩みを進めやすいツールだと思います。

 

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TOMC(トムシー)
【Profile】ビート&アンビエント・プロデューサー/キュレーター。カナダのInner Ocean Recordsや日本のLocal Visionsなどから作品をリリース。近年はローファイ・ヒップホップにも接近した制作活動を行なう。『ニューエイジ・ミュージック・ディスクガイド』(DU BOOKS)などへの寄稿も好評。

【特集】WAVESプラグイン実戦メソッド

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