UVI Kawai Vintage Legacy|2020年代生まれのソフト・シンセ12モデルを徹底レビュー

さまざまなメーカーから日々新しい製品が誕生しているソフト・シンセ。しかし数の多さから、まだ十分にその魅力を知られていない製品もしばしば。そこで本企画では、2020年代以降にリリースされたソフト・シンセ12モデルを、シンセに造詣が深い、毛蟹(LIVE LAB.)、Naive Super、林田涼太、深澤秀行の4名が紹介。ここでは、UVI Kawai Vintage LegacyをNaive Superがレビューします。

5種類の1980年代サウンドをパッケージ

UVI Kawai Vintage Legacy|価格:18,000円(149ドル)

UVI Kawai Vintage Legacy|価格:18,000円(149ドル)

Requirements
●Mac:macOS 10.14以降
●Windows:Windows 10以降
●共通項目:64ビット、4GB以上のRAM、iLokアカウント、29GB以上の空きディスク容量、UVI Falcon 2.8.5以降、またはUVI Workstation 3.1.11以降上で動作
●対応フォーマット:AAX/AU/VST/VST3/スタンドアローン

概要

 KAWAIが1980年代後半に発表したデジタル・シンセ、K1、K3、K4、K5の4機種と、リズム・マシンのR-100、ドラム・シンセXD-5のサウンドを、オリジナルのメーカーであるKAWAIの協力も得て収録、開発したソフト音源です。それぞれK1U、K3U、K4U、K5U、R100U(R-100とXD-5を内包)と、5つのインストゥルメントに分かれており、個別またはレイヤーしたマルチティンバー音源として用いることができます。

収録された音色のバリエーション

 1980年代後半から1990年代初頭辺りのポップ/ダンス・ミュージックで聴かれるサウンドを連想させるものや、ローファイ・ヒップホップなど、現代的なサウンドにもマッチする1,400のプリセット音色を収録しています。

キャラクター

 シンセ・パートの音源方式は各モデルで異なりますが、1980年代後半のいわゆるデジタル・シンセということで、特にベル系やパーカッション音色のきらびやかでアタックの強い音はレビュー前にイメージしていた通りの方向性でした。ただ、耳に痛い感じではなく、どのモデルもアナログ機材を通したような質感で、特にオリジナルのリリースが1989年と、ラインナップの中では一番遅いK4Uが一番滑らかな印象を受けました。この辺りは好みや楽曲の相性で好きなモデルを選んでいくと良いと思います。ドラム・パートでは、R100に用いられたサンプルは12ビット/32kHzのPCM形式で収録されたものですが、粗さのある”ザラついたデジタル”がうまく再現されています。当時は最先端でリアルな表現と評された音が、今となっては粗く聴こえるのですが、そうした粗さがほかの楽器とのミックスの中で存在感のある音としてより生きてくるでしょう。

操作性

 シンセ・パートは、音色と波形以外は同じレイアウトで、操作方法も統一されています。基本的には画面上の操作のみで音作りを完結できるので扱いやすいでしょう。ドラム・パートは、8つの音色を選択し入れ替えも可能。1音色ずつ細かなセッティングが可能です。

オシレーター

 モデルとなった各機種から収録したサンプルを使用しています。

フィルター/エンベロープ/その他、モジュレーション

 シンセ・パートには、音量を調節するアンプリチュードとフィルターそれぞれにADSRエンベロープを搭載。ビブラート、トレモロ、フィルターLFOからなる3種類のモジュレーションも備えています。各種エフェクトの設定も可能で、特に効果的なのがビット/サンプリング・レートを変えられるREDUX。自然に音をつぶしてくれるので、これだけを調節しても雰囲気のある音になりました。

独自の機能/特徴

 マルチティンバー音源として使用するとシンセ・パートとドラム・パートを同時に鳴らせるのはもちろん、単音やコードなど、押さえる鍵盤に合ったキーのフレーズやドラム・パターンなどのシーケンスを自動で演奏させることも可能(シーケンスのホールドにも対応)。プリセットは幅広く、アンビエントやローファイ・サウンドにもマッチし、今のクリエイターには自由に先入観なく、積極的に取り入れられるサウンドでしょう。また、音源の差し替えも可能なほか、メイン出力にEQ、コンプなどを設定できるバス・エフェクト、各音源のリバーブ、ディレイとしてセンド・エフェクトも用意されています。

▼各シンセで10種類のエフェクトを個別に調節

各シンセで10種類のエフェクトを個別に調節

メイン画面左のFXスイッチを押すと、エフェクト画面に切り替わる。シンセ・パートには10種類のエフェクトを搭載。マルチティンバー音源として使用する“マルチモード”選択時は、メイン出力にドライブ、EQ、コンプなどを設定できるバス・エフェクトなども調節可能

▼アルペジエイターは最大64ステップ

アルペジエイターは最大64ステップ

シンセ・パートのアルペジエイターは、最大64ステップまで可能なほか、プリセットも内蔵。上記エフェクトとともに、K1U、K3U、K4U、K5Uで設定項目は統一されている

総評

 ここ数年はFMやPCM、ウェーブテーブルなど、デジタル系も各メーカーで復刻や新開発が目立ってきています。その中でもKawai Vintage Legacyは比較的レアな部類に入るかと思いますが、一つのプラグインにパッケージしてくれたのはありがたい限りです。巡り巡った今のシーンでこそ、その魅力を存分に発揮できる音源なのではないでしょうか。

 

Naive Super
ニューウェーブ/インディ・ロック/シティポップ/チルアウトなどを軸に、エキゾチックな雰囲気も漂わせるシンセ・ポップ・アーティスト。2020年の4月より、デジタルにて連続リリースを続ける。

製品情報

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