UNIVERSAL AUDIO Polymax Synth|2020年代生まれのソフト・シンセ12モデルを徹底レビュー

さまざまなメーカーから日々新しい製品が誕生しているソフト・シンセ。しかし数の多さから、まだ十分にその魅力を知られていない製品もしばしば。そこで本企画では、2020年代以降にリリースされたソフト・シンセ12モデルを、シンセに造詣が深い、毛蟹(LIVE LAB.)、Naive Super、林田涼太、深澤秀行の4名が紹介。ここでは、UNIVERSAL AUDIO Polymax Synthを深澤秀行がレビューします。

クラシックさと現代的な性能を融合

クラシックさと現代的な性能を融合

UNIVERSAL AUDIO Polymax Synth|価格:30,500円(beatcloud価格)※専用ハードウェア不要のUAD Nativeプラグイン

Requirements
●Mac:macOS 10.15以降
●Windows:Windows 10/11
●共通項目:インターネット接続(ダウンロード、オーソライズ用)、iLokアカウント、UA Connectアプリケーション、1~10GBのSSD空き容量
●対応フォーマット:AAX/AU/VST

概要

 UNIVERSAL AUDIOが放つPolymax Synthは、ポリフォニックな減算シンセシスを採用! レトロでビンテージなテイストを演出する選び抜かれたエフェクトも搭載し、そのキャラクターを鮮明にします。このシンセのベーシックかつ普遍的なサウンドは、筆者が推測するに、ポリフォニック・シンセの金字塔であるROLAND JupiterシリーズやOBERHEIM OBシリーズなどにインスパイアされたものではないでしょうか。同時期に発売されたUNIVERSAL AUDIOのウェーブテーブル・シンセ、Opal Morphing Synthesizerとは対照的な、クラシックなシンセという印象です。

収録された音色のバリエーション

 プリセットは分かりやすくカテゴリーに分けられており、中でも“Best Of”という項目は、選んでいくと次々にレトロかつビンテージな音色が出てきます。ビンテージとは言え、ただの懐古趣味にとどまらない、現代的な解釈を経たニュー・オールドなセンスも感じることができます。

▼すぐに好みの音が見つかるプリセット

すぐに好みの音が見つかるプリセット

プリセットはGENRE、TYPE、DESCRIPTION、ALLのタブで分けられていて、さらにその中で細分化されている。“Best Of”には、レトロでビンテージな音色が多く含まれている

キャラクター

 明るくハリがあり、重心の低すぎない音で、トラックの中で埋もれないツヤがあります。同じフレーズをほかのシンセとレイヤーしても存在感があるのが印象的です。ビンテージなアナログ・サウンドに加えて、デジタル黎明(れいめい)期にあったDCO的なキャラクターも感じさせます。

操作性

 あらゆるパラメーターが隠れることなく一画面に合理的に配置されています。これはビンテージ・アナログ・シンセサイザーの操作性の良さに通ずるものがあり、分かりやすさと音色の素直さが両立されたデザインですね。

オシレーター

 2つのオシレーターとノイズはどちらも解像度が高く、メリハリがあってにじみの少ない音色です。OSCILLATOR 1にはFM(OSC2からの周波数でモジュレーション)ノブ、OSCILLATOR 2にはSYNC(INT固定のオシレーター・シンク)ノブがあり、さらには両方のピッチに同時に適用されるモジュレーションをLFOまたはエンベロープから選べるので、倍音のバリエーションは想像以上に多いです。

フィルター/エンベロープ/その他、モジュレーション

 フィルターはローパス、ハイパスのみならず、バンドパス・フィルターに加えて、ノッチ・フィルターもあるのが特徴的。オシレーター・シンクした倍音の多い激しいリードなどで、ノッチ+LFOモジュレーションが非常に効果的に使えますので、皆さんも試してみてください。エンベロープは、フィルター&モジュレーション用と、アンプ用に固定されたものの2つ。操作子がスライダーでインジケーターが光るので、視覚的に分かりやすいです。エフェクトのスプリング・リバーブは、ほかのメーカーの製品では再現できないような気持ちの良いキャラクター。モジュレーション・エフェクトもバランス良く調整されていて、使いやすいと感じました。

▼フィルターのモードを4種類用意

フィルターのモードを4種類用意

ローパス・フィルター、ハイパス・フィルターに加え、バンドパス・フィルターや、ノッチ・フィルターも用意されている。カットオフ周波数やレゾナンスの調整なども可能

独自の機能/特徴

 ボイス・パンニングを0/1/2から選択可能。0=モノ、1=50%ステレオ、2=100%ステレオというように、パンニングの広がり具合を変更できます。コーラスなどのエフェクトの広がり方よりも実態的なステレオ効果を生み出せるので、パッドなどのポリフォニックな演奏やシーケンス・アルペジエイター系の空間演出などで効果を発揮できるでしょう。

総評

 さすがUNIVERSAL AUDIO。考え抜かれた合理的なユーザー・インターフェースと、シンプルな中に厚さや深みを十分に感じられる抜けの良いクリアなサウンドは、ジャンルを選ばず使いやすく、初心者にも非常に入りやすいソフトの一つと言えそうです。プリセットもカテゴリー別で分かりやすく、フィルターを軽くいじるだけで、音色変化の幅広さを確認できます。Polymax Synthでシンセの基本を学んでみるのはいかがでしょうか?

 

深澤秀行
シンセサイザー・プログラマー/作編曲家。アニメ、ゲームのサウンドトラック、作品のリミックスまで幅広く手掛ける一方、「やのとあがつま」やモジュラー・シンセ・ユニット「電子海面」のメンバーとしても活動している。

製品情報

関連記事