さまざまなメーカーから日々新しい製品が誕生しているソフト・シンセ。しかし数の多さから、まだ十分にその魅力を知られていない製品もしばしば。そこで本企画では、2020年代以降にリリースされたソフト・シンセ12モデルを、シンセに造詣が深い、毛蟹(LIVE LAB.)、Naive Super、林田涼太、深澤秀行の4名が紹介。ここでは、IK MULTIMEDIA Syntronik 2 Max V2をNaive Superがレビューします。
34種類のシンセを音源として内蔵
Requirements
●Mac:macOS 10.10以降
●Windows:Windows 7以降
●共通項目:64ビット、4GBのRAM(8GB以上を推奨)
●対応フォーマット:AAX/AU/VST3/スタンドアローン
製品ラインナップ
●Syntronik 2 Max V2 Upgrade:23,240円(有償のIK MULTIMEDIA製品登録ユーザー対象)
●Syntronik 2:20,140円(22種類のシンセ、4,000種類以上のプリセット、80GBのサウンド・ライブラリーを収録)
●Syntronik 2 CS:無償(100種類のプリセット、2.4GBのサウンド・ライブラリーを収録)
概要
アナログ/デジタルだけでなくストリングス・マシンなど、膨大なビンテージ・シンセのサウンドを、最新のサンプリング技術と、モデリングによるサウンド・エンジンでコレクションしたバーチャル・インストゥルメントです。
収録された音色のバリエーション
今回レビューするMax V2版では、Syntronik 2になって新たに追加された12種類を含む34種類のシンセ、5,000種類以上のプリセットを収録しています。オシレーターとフィルター、エフェクトの組み合わせで、実機単体ではできなかった多彩な音作りも可能になっています。
キャラクター
収録されている各音源モデルのサウンドから共通して感じたのは、立ち上がりが速く、抜けの良さもあり、非常に太く存在感のある音であることです。エミュレーション系のシンセ音源とはまた違った方向性で、独自のDRIFTという技術を用いて、同じサンプル音源でも発音されるたびにフェイズ、ピッチなどが揺れるアナログ回路のふるまいを再現しているそう。構造的にも2DCOアナログ・フィルターのハードウェア・シンセに似た質感でした。
操作性
膨大なプリセット数ですが、分かりやすいGUIでシンセ・モデルやカテゴリーからブラウジングしやすいです。シンセに詳しい方なら、ブラウザーに表示される各シンセ・モデルのデザインだけで大体の音を想像できると思います。パネル部分は選択したシンセ・モデルをイメージさせるGUIに切り替わりますが、各セクションの名称、動作、数値はすべて統一。選択したオシレーターとフィルターの組み合わせで、ある程度音色の方向性が決まるので扱いやすいと思います。全モデルをインストールすると容量が200GB以上となるので、使用環境に不安のある方は外付けストレージ・デバイスを準備するなどしましょう。
▼全モデルでパラメーターを統一
オシレーター
それぞれのシンセを特徴付けるオシレーター・シンク、FMモジュレーションなど、機種ごとに数十種類のバリエーションからオシレーターを選択できます。
フィルター/エンベロープ/その他、モジュレーション
フィルター・セクションは、ラダーやステイト・バリアブルなど、4種類の伝統的なアナログ・タイプに加え、フォルマント、フェイズといったデジタル・タイプも搭載。それぞれに特徴と違いがあり、自分の好みのフィルター・タイプを発見/再認識できるかも。5つの波形からなるLFO、ADSRのフィルター/アンプ・エンベロープなども用意されています。
独自の機能/特徴
IK MULTIMEDIAの定評あるプラグイン、T-RackS 5、MixBox、AmpliTube 5譲りのエフェクトを組み合わせ可能。これらの製品を普段から使用している方には、なじみもあり使いやすいですね。EQやコンプ、アンプ・シミュレーターもあるので、Syntronik 2内だけでかなり音を作り込めます。4パート/16ステップのアルペジエイター/シーケンサーを実装。スウィングやベロシティなどを細かく設定可能です。また、4パートのマルチティンバー音源としても機能。すべて同じ音色を選択して、各パートで微妙にデチューンしたりパンをずらしたりしてレイヤーすることで、ブラスやパッドがとても重厚な響きになり、ずっと弾いていたくなりました。抜けの良い音色なので、こうした使い方もアリだと思います。
▼チェイン可能な71種類のエフェクト
総評
古今東西のシンセ・ライブラリーといった趣で、筆者はこのうち数機種しか実際に触れたことはないのですが、丁寧にサンプリング/モデリングされていることもあり、各シンセのキャラクターを非常によく捉えている印象を受けました。また、かなりレアな機種もあり、“あのシンセはこういう音だったんだな”と、音とイメージが初めて一致したものも。無償版もあるので、まずは試してみてください。
Naive Super
ニューウェーブ/インディ・ロック/シティポップ/チルアウトなどを軸に、エキゾチックな雰囲気も漂わせるシンセ・ポップ・アーティスト。2020年の4月より、デジタルにて連続リリースを続ける。