ARTURIA Korg MS-20 V|2020年代生まれのソフト・シンセ12モデルを徹底レビュー

さまざまなメーカーから日々新しい製品が誕生しているソフト・シンセ。しかし数の多さから、まだ十分にその魅力を知られていない製品もしばしば。そこで本企画では、2020年代以降にリリースされたソフト・シンセ12モデルを、シンセに造詣が深い、毛蟹(LIVE LAB.)、Naive Super、林田涼太、深澤秀行の4名が紹介。ここでは、ARTURIA Korg MS-20 VをNaive Superがレビューします。

往年の名シンセを機能拡張して再現

ARTURIA Korg MS-20 V|価格:199ドル

ARTURIA Korg MS-20 V|価格:199ドル

Requirements
●Mac:macOS 10.13以降
●Windows:Windows 10以降(64ビット)
●共通項目:4GB以上のRAM、3GB以上のディスク空き容量
●対応フォーマット:AAX/AU/VST/VST3/NKS/スタンドアローン(NKSは64ビットのみ)

概要

 KORGが1978年に発表したセミモジュラー・アナログ・シンセ、MS-20をエミュレーションしたソフト・シンセです。ARTURIAのソフト・シンセ・バンドルの最新バージョン、V Collection 9から新たにラインナップされ、バンドルだけでなく単体での購入も可能です。

収録された音色のバリエーション

 リード、ベース、シーケンス・サウンドなど、200種類以上のプリセットを収録。現代の音楽シーンに合うようなサウンドが多く、新たなMS-20の使い方を提示してくれているようです。MS-20はモノフォニック・シンセなのですが、MS-20 Vはポリフォニック・シンセとしても活用でき、パッドなどの音色も用意されています。

キャラクター

 特筆すべきは、強烈に自己発振するハイパス/ローパス・フィルター。本誌でもアーティストのスタジオにMS-20やシリーズ機のMS-10があるのをよく見ますが、それだけ重宝されているシンセなのです。MS-20でしか作れないと言っても過言ではない、実験的なサウンドが再現されています。

操作性

 実機に触れたことのある方ならほぼ同じ感覚で操作できると思います。初めての方には各セクションの名称など、若干慣れる必要があるかもしれませんが、各セクションの操作自体は至ってシンプルです。それほどシンセの深い知識を持っていなくとも、フィルターやモジュレーション・ノブを回したりして音の変化を楽しむという、アナログ・シンセの醍醐味を体験できます。パネル右側のパッチ・パネルでは、パッチングしたいインプット/アウトプットを選択すると、接続することで音色変化を得られる端子が黄色く表示されます。初めてシンセのパッチングをする方にも親切な設計で、ARTURIAのほかのモジュラー・シンセ系のプラグインにも共通した設計となっています。

▼接続可能なパッチを色付きで表示

接続可能なパッチを色付きで表示

パッチ・パネルでは、パッチング・ポイントを選択すると、次につなげられるポイントが黄色く表示される。初めてパッチ式のシンセを使う方にも親切な設計だ

オシレーター

 2VCO仕様で、OSCILLATOR 1は三角波、ノコギリ波、パルス幅を調節可能なパルス波、ホワイト・ノイズを備え、OSCILLATOR 2はノコギリ波、矩形波、パルス波、リング・モジュレーターを搭載しています。

フィルター/エンベロープ/その他、モジュレーション

 2VCF/2VCA/2EG/1LFOという構成。レゾナンス(パネルではPEAKと表記)付きのフィルターでは、MS-20の開発時期による回路設計の違いを前期型(=MK1)と後期型で(MK2)で切り替えて再現できます。前期型はCPU負荷が高くなりますが、より過激なサウンド作りが可能。また。エフェクトも、ディレイやリバーブ、コーラス、ディストーションなど16種類を搭載。最大4つのエフェクトを直列または並列でかけることができます。

独自の機能/特徴

 KORGのシーケンサー、SQ-10をモデルにした3チャンネル/12ステップのシーケンサーを内蔵。とても扱いやすく、これだけを独立して使用したい方もいるのではないのでしょうか。また、ポリフォニック・シンセとして使用する際に、ピッチの安定性やフィルターなど、ボイス間のバラつきを調整できるディスパージョン・コントロールをパネル右下、KORGロゴ(メーカー公認の証!)部分に搭載。アナログ・ライクな音作りが可能です。前述した2種類のフィルターも含めて、ARTURIAの強いこだわりを感じますね。

▼SQ-10を踏襲するシーケンサーを内蔵

SQ-10を踏襲するシーケンサーを内蔵

メイン画面右上にあるSequencerを選択すると、KORG往年のSQ-10を踏襲するシーケンサーが出現。3チャンネル/12ステップで、ポルタメント機能なども有している

総評

 パッチング可能なセミモジュラー・シンセということで、モジュラー・シンセに関心を持つ方にとっては入門機としても大いに活躍するでしょう。もちろんシンセに詳しく、狙って音作りができる方にもお薦めです。MS-20 Vのように、当時は不可能だった“作った音色を無数に保存していつでも呼び出せる”というのは、今の時代だからできるシンセとの向き合い方ですね。

 

Naive Super
ニューウェーブ/インディ・ロック/シティポップ/チルアウトなどを軸に、エキゾチックな雰囲気も漂わせるシンセ・ポップ・アーティスト。2020年の4月より、デジタルにて連続リリースを続ける。

製品情報

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