Yosh(Survive Said The Prophet)& Daiki(AWSM.)のプライベート・スタジオ|Private Studio 2023

Yosh(Survive Said The Prophet)& Daiki(AWSM.)のプライベート・スタジオ|Private Studio 2023

ロック・バンドSurvive Said The Prophetのボーカリストであり、同バンドの作詞作曲を手掛けるYosh。そしてマルチインストゥルメント・プレイヤー/ビート・メイカーのDaikiがタッグを組んだ音楽プロダクション・プロジェクト=The Hideout Studios。そんな彼らのスタジオは2人の機材を持ち寄って造られただけでなく、互いの知識や経験を共有することで誕生したサウンド・スターシップだ。

アーティストの制作をあらゆる面からサポート

 「映画『スター・ウォーズ』に登場するミレニアム・ファルコンのコックピットみたいでしょ?(笑)」と話すのはYosh。スタジオの構想を練っていたのは、2020年の初めごろだったと振り返る。

 「以前からDaikiとは“こんなことをしたい”“こんな場所があるといいよね”と話しあっていたんですよ。具体的には、ドラムやベース、ギターなどマルチプレイヤーのDaikiと、ボーカリスト兼コンポーザーの自分が組めば、あらゆるアーティストの音楽をいろいろな角度からディレクション&プロデュースでき、人脈といった面でもサポートができるチームになれるということ。そして、それを具現化するためのスタジオが必要だということです」

 続けてDaikiがこう話す。

 「レコーディングからデモ制作、アレンジ、ミックスまで全部自分たちカバーできるし、機材ノウハウもある。だから2人の制作機材を持ち寄って、スタジオを造ろうという話になったんです。現役でステージに立つ2人がプロダクション・チーム兼スタジオをやることで、現場のニーズに特化した動きができるのが強みだと考えました」

 Yoshは「曲作りにおいては、自分はボーカルから作りはじめますが、Daikiは楽器周りから作るんです。作曲プロセスが全く違う2人がいることで、幅も広がります」と説明する。

 実際にスタジオを造るにあたっては、どんなところに気を付けたのだろうか。Yoshはこう振り返る。

 「ギター・アンプを爆音で鳴らしたかったので、まずは床や壁がコンクリートで造られていることと、地下室があることを基準に物件を探しました」

 そうして地上1階+地下1階の物件を見つけた2人。両部屋の使い分けについて、Daikiはこう説明する。

 「1階はコントロール・ルーム兼リラックス・ルームになっています。そして、地下室は部屋全体がレコーディング・ブースになっていて、バンドでセッションすることも可能なんです。1階と地下室の間にはケーブルをダイレクトに配線しているので、録音のセッティングも簡単に行えます。なお1階にあるコンピューターの画面は、地下室にあるコンピューターの画面とミラーリングさせているので、地下室からでもコントロール・ルームのコンピューターを操作できるんです」

1階にあるThe Hideout Studiosのコントロール・ルーム。広さは10畳ほどで、メイン・マシンはAPPLE MacBook Pro、DAWはAPPLE Logicを使っている。モニター・スピーカーはYAMAHA HS8をセット。将来的にはDolby Atmos対応のモニター・システムを考えているという。写真手前に見えるキーボードは、NATIVE INSTRUMENTS Komplete Kontrol S88

1階にあるThe Hideout Studiosのコントロール・ルーム。広さは10畳ほどで、メイン・マシンはAPPLE MacBook Pro、DAWはAPPLE Logicを使っている。モニター・スピーカーはYAMAHA HS8をセット。将来的にはDolby Atmos対応のモニター・システムを考えているという。写真手前に見えるキーボードは、NATIVE INSTRUMENTS Komplete Kontrol S88

メイン・デスクに備わるラックの左側には、FETコンプレッサーのSERPENT AUDIO Splice MKIIを装備。同右側には、オーディオ・インターフェースのAPOGEE Symphony I/O MKIIやRME Fireface 800などが格納されている

メイン・デスクに備わるラックの左側には、FETコンプレッサーのSERPENT AUDIO Splice MKIIを装備。同右側には、オーディオ・インターフェースのAPOGEE Symphony I/O MKIIやRME Fireface 800などが格納されている

メイン・デスク右手側のラック。API 500互換モジュールでは、SHADOW HILLS Mono Gama×2、AVEDIS AUDIO ELECTRONICS MA5×2、CLASSIC AUDIO PRODUCTS OF IL VP28 DBL×2といったマイクプリ、チューブ・コンプのRETRO INSTRUMENTS Doublewideなどをそろえている。これらの下段には、コンプのBLACK LION AUDIO BlueyやDBX 160SL、AUDIO SCAPE G Stereo VCA Series Buss Compressorを格納している 

メイン・デスク右手側のラック。API 500互換モジュールでは、SHADOW HILLS Mono Gama×2、AVEDIS AUDIO ELECTRONICS MA5×2、CLASSIC AUDIO PRODUCTS OF IL VP28 DBL×2といったマイクプリ、チューブ・コンプのRETRO INSTRUMENTS Doublewideなどをそろえている。これらの下段には、コンプのBLACK LION AUDIO BlueyやDBX 160SL、AUDIO SCAPE G Stereo VCA Series Buss Compressorを格納している 

写真上から、DIのCREATION AUDIO LABS MW1 Studio Tool、チューナーのKORG Pitchblack Pro、アンプ・プロファイラーのKEMPER Profiler Rack、DI/プリアンプのTECH21 NYC SansAmp

写真上から、DIのCREATION AUDIO LABS MW1 Studio Tool、チューナーのKORG Pitchblack Pro、アンプ・プロファイラーのKEMPER Profiler Rack、DI/プリアンプのTECH21 NYC SansAmp

上から、ギター・アンプのPEAVEY 5150とROCCAFORTE Hi-Gain 100

上から、ギター・アンプのPEAVEY 5150とROCCAFORTE Hi-Gain 100

吸音パネルは置き場所が一番大事

 コントロール・ルームと地下室を見渡すと、吸音材や遮音カーテンなどが確認できる。YoshはDIYで行ったスタジオの防音対策について、こう教えてくれた。

 「まずは外音を遮音するのがポイント。ツー・バイ・フォーの木材を購入し、壁には吸音材を敷き詰めました。あと、自由に移動できる吸音パネルも自作です。今回スタジオをDIYしてみて感じたのは、吸音パネルは枚数ではなく、置き場所が一番大事だということ。まずは安価な吸音材を購入してスタジオのいろいろなところに貼り、効果的なポイントを見極めます。次に、高性能な吸音材をそのポイントに配置していくんです。そんなプロセスでこのスタジオの鳴りを整えていきましたね。もし予算が10万円あるのなら、まずは聴く環境を整えることをお勧めします」

 Daikiは、スタジオ機材にもこだわりがあると述べる。

 「オールドスクールな機材から最近の機材まで置いていて、プラグインも常に更新しているので、割といろいろな時代感のサウンドに対応できるスタジオだと思います。例えばギター・アンプにしても、実機とアンプ・シミュレーション・プラグインを比較して選ぶことが可能なんです。若いミュージシャンは、ぜひこのスタジオで体感してみてほしいですね」

 Yoshは「年に1回はアメリカに行くので、現地で聞いた最先端の機材をここには仕入れているんです。例えばBLACK LION AUDIO Blueyは、日本に入る前から個人輸入して使っていましたし、今ナッシュビル周辺のスタジオで定番と言われるマイクプリ、CLASSIC AUDIO PRODUCTS OF IL VP28 DBLも既に導入しています」と話す。

地下にあるブースのデスク周り。ディスプレイには1階コントロール・ルームの画面がミラーリングされており、モニター・スピーカーもコントロール・ルームと同じYAMAHA HS8を使用する

地下にあるブースのデスク周り。ディスプレイには1階コントロール・ルームの画面がミラーリングされており、モニター・スピーカーもコントロール・ルームと同じYAMAHA HS8を使用する

MIDIキーボードのNATIVE INSTRUMENTS Komplete Kontrol A49。写真左下にあるのはミキサーのKORG Zero4で、同右下にはターンテーブルのRELOOP RP-8000、同奥にはベース・アンプ・ヘッドのEDEN WT-600 Road Runnerを備える

MIDIキーボードのNATIVE INSTRUMENTS Komplete Kontrol A49。写真左下にあるのはミキサーのKORG Zero4で、同右下にはターンテーブルのRELOOP RP-8000、同奥にはベース・アンプ・ヘッドのEDEN WT-600 Road Runnerを備える

壁一面にDIYの吸音パネルを配置。ドラムやギターなど、あらゆる楽器のレコーディングが行える。ギター・アンプのボリュームをフルで鳴らすことも可能だそう

壁一面にDIYの吸音パネルを配置。ドラムやギターなど、あらゆる楽器のレコーディングが行える。ギター・アンプのボリュームをフルで鳴らすことも可能だそう

スタンドにはコンデンサー・マイクのSHURE KSM44Aがスタンバイ

スタンドにはコンデンサー・マイクのSHURE KSM44Aがスタンバイ

マイク・コレクションの一部。左からCHANDLER LIMITED Redd Microphone、SHURE SM7B、SM57×2、SHURE Beta52。Redd MicrophoneはYoshお気に入りのマイクだそう。「中域が特徴的で、高域はうるさくない。そして真空管らしい分厚いサウンドがします」とYosh

マイク・コレクションの一部。左からCHANDLER LIMITED Redd Microphone、SHURE SM7B、SM57×2、SHURE Beta52。Redd MicrophoneはYoshお気に入りのマイクだそう。「中域が特徴的で、高域はうるさくない。そして真空管らしい分厚いサウンドがします」とYosh

 最後に、今後このスタジオをどう使っていきたいのかという問いに対して、Yoshはこう答えてくれた。

 「Survive Said The Prophetの作品作りにはもちろん、作曲家としても、このThe Hideout Studiosを拠点にグローバルな活動をしていきたいと思います。日本には日本にしかない音楽の良さがあると思うので、日本と世界をつなぐ橋渡し的な役割もできればいいなと考えていますね」

 Yoshの言葉に共感するDaikiは、こう付け足す。

 「上下のジェネレーションもリンクさせていきたいんです。自分はハードウェアが主だったアナログ時代と、プラグイン中心のデジタル時代をどちらも経験している世代なので、両時代の人たちをリンクさせることでもっと面白い音楽が生まれるんじゃないかなと思います。このスタジオは、そういったきっかけになる場所としてもさらに使っていきたいですね!」

Equipment

 DAW System 
Computer:APPLE MacBook Pro
DAW:ABLETON Live、APPLE Logic Pro
Audio I/O:APOGEE Symphony I/O MKII、RME Fireface 800
Controller:NATIVE INSTRUMENTS Komplete Kontrol A49、Komplete Kontrol S88

 Recording & Monitoring 
Mixer:KORG Zero4
Monitor Speaker:YAMAHA HS8
Headphone:SHURE SRH1540、SONY MDR-CD900ST、他
Microphone:CHANDLER LIMITED Redd Microphone、SHURE Beta52、KSM44A、SM57、SM7B、他

 Outboard & Effects 
Mic Preamp:AVEDIS AUDIO ELECTRONICS MA5、CLASSIC AUDIO PRODUCTS OF IL VP28 DBL、MANLEY Mono Preamp、SHADOW HILLS Mono Gama、他
Compressor:AUDIO SCAPE G Stereo VCA Series Buss Compressor、BLACK LION AUDIO Bluey、DBX 160SL、RETRO INSTRUMENTS Doublewide、SERPENT AUDIO Splice MKII
EQ:API 560
DI:CREATION AUDIO LABS MW1 Studio Tool、TECH21 NYC SansAmp
Amp Simulator:KEMPER Profiler Rack
Others:KORG Pitchblack Pro

 Instruments 
Guitar:FENDER Jaguar、Stratocaster、Telecaster Made In Japan Modern Telecaster HH、GIBSON SG、他
Guitar Amp:PEAVEY 5150、ROCCAFORTE Hi-Gain 100
Bass Amp:EDEN WT-600 Road Runner
DJ Tool:RELOOP RP-8000

 

Yosh(Survive Said The Prophet)

Yosh(Survive Said The Prophet)
ロック・バンドSurvive Said The Prophetのボーカリスト/メイン・コンポーザーとして活動中。ネイティブな英語を操るバイリンガル・ボーカリストとして、圧倒的な歌唱力とカリスマ性を武器に躍動。2019年からは新たな音楽プロダクション・チーム、The Hideout Studiosを始動する。

Daiki(AWSM.)

Daiki(AWSM.)
作編曲から楽器演奏までマルチでジャンルレスな才能を発揮する新鋭プロデューサー。ロック/ヒップホップ/ポップス/クラシックなど幅広い音楽ジャンルに対応する。また自身が立ち上げたバンドAWSM.のビート・メイカーとして、業界の有望アーティストたちからコラボ・オファーが殺到中。

 Recent Work 

『Hateful Failures』
Survive Said The Prophet
(ソニー)

次に欲しい機材は…?

 アナログ・コンソールのSOLID STATE LOGIC Originが欲しいですね。やっぱりスタジオにコンソールがあるのは夢の一つかなと。チャンネルEQやSSLバス・コンプも魅力です。サミング・ミキサーとしても使えるので、DAWを中心としたハイブリッドな制作にもぴったりだと思います。最近16chモデルも出ましたが、16chあればドラムはもちろん、バンド・セッションもそのまま録れちゃいますし……ぜひ、触ってみたいですね! (Yosh&Daiki)

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