親しみのある楽器でありながら千差万別。それがピアノの面白さであり、膨大な数のピアノ・ソフト音源が市販されている理由でもあるのでしょう。本企画では話題の14製品をピックアップして、作編曲家の牧戸太郎さんにレビューしていただきました。また、各製品の試聴音源では、牧戸さんにタイプの異なる3つのフレーズを制作していただいたので、好みに合うサウンドを探してみてください!
テンション・ノートの美しさときめ細やかなダイナミクスが持ち味
多彩なラインナップを誇るEZ Keysシリーズの中でグランド・ピアノに特化した製品。サンプリング元となっているのはSTEINWAY & SONS Model D。“EZ”と名付けられている通りのシンプルで分かりやすい操作性が大きな特徴となっている。またポップス、ロック、ゴスペル、カントリー、ジャズなどバリエーション豊かなMIDIデータによるバッキング・フレーズが同梱されていることも特色で、ソフト内のMIDIトラックで簡単に再生できる。
サウンドの印象
デフォルトで立ち上がる音色は、とてもブライトで張りがあります。激しいリズムの中でも埋もれないサウンドです。一方で深みも感じられ、しっとりした曲にも対応できる表現力を持っています。さらに、コードを弾いたときにテンション・ノートがシャープに美しく響いた点が印象的でした。これは本製品における最大の魅力でしょう。ジャジーな演奏にはとても向いていると思います。
最初に読み込まれるプリセットのデフォルト状態におけるリリース部分の余韻は短めで、これは細かいコード・バッキングや速いテンポの曲に合うと思います。またDETAILノブを上げていくと空間の響きが足されます。
演奏性
メーカーのWebサイトにはベロシティ・レイヤー数などが表記されていないのですが、演奏した感覚で言えばダイナミクスの変化はきめ細やかです。速いパッセージからスロー・テンポで抑揚を必要とするバラードまで対応できる演奏性を備えていると言えるでしょう。
ジャンル感
前述の通りジャズに適しているほか、生バンド系でも使えるでしょう。そのほか打ち込み系の楽曲で特に映えると思います。ダンス・ミュージック、例えばハウスのリズム・バッキングに合いそうです。
音作りの自由度
音作りのパラメーターはシンプルで、ベロシティの調節のほか、トーン、リバーブ、コンプレッサーなど基本的なものが備わっています。
音作りではないのですが、ユニークなのは押さえているコード名が画面に表示される点です。また“ソングブラウザ”には多彩なジャンルのMIDIデータが用意されていて、これらを“ソングトラック”にドラッグ&ドロップしてすぐに再生できます。この場合もMIDIデータにコード名が表示され、そのコード名をクリックするとコードを変更できます。つまりコード進行をカスタマイズできるのです。ユーザーによるMIDI録音も可能で、その場合もコード名が表示されます。これらは作曲やバッキングのアイディア作りに役立つでしょう。
まとめ
簡単に使えるので、ピアノやエンジニアリングに詳しくない人が作曲用途に使うと便利だと思います。もちろん、ジャズやハウスの演奏にも最適です。
製品情報 (5月16日までの購入&登録でEZ KEYS 2へ無償アップグレード)
- 価格:18,700円
- 音源方式:サンプリング
- 容量:約500MB(ダウンロード時)
- ベース・モデル:STEINWAY & SONS Model D
- 対応フォーマット:AAX/AU/RTAS/VST/スタンドアローン
REQUIREMENTS
●Mac:Mac OS X 10.6〜macOS 10.13(INTEL/ARM、64ビット) ●Windows:Windows 8〜11(32/64ビット)、INTEL Pentium IV/AMD Athlon 1.8GHz以上 ●2GB RAM以上、700MB以上のディスク空き容量、インターネット接続環境
牧戸太郎
東京音楽大学作曲指揮専攻映画放送音楽コース卒業。その後、作編曲家として活動を開始し、竹内まりや、Hey!Say!Jump、King & Princeなどの編曲を手掛けるほか、映画『兄に愛されすぎて困ってます』、WOWOW『向こうの果て』、テレビ東京『先生のおとりよせ』、日本テレビ『ぴーすおぶけーき』、Hulu『社畜OLちえ丸日記』など多数のドラマ、映画の劇伴でも活躍している。