SPECTRASONICS Keyscape|ピアノ音源14製品レビュー

親しみのある楽器でありながら千差万別。それがピアノの面白さであり、膨大な数のピアノ・ソフト音源が市販されている理由でもあるのでしょう。本企画では話題の14製品をピックアップして、作編曲家の牧戸太郎さんにレビューしていただきました。また、各製品の試聴音源では、牧戸さんにタイプの異なる3つのフレーズを制作していただいたので、好みに合うサウンドを探してみてください!

太くてかっこいい音がするカスタマイズされたグランド・ピアノ

SPECTRASONICS Keyscape|52,000円

SPECTRASONICS Keyscape|52,000円

 YAMAHA C7、WURLITZER、RHODES、クラビコードなど、36もの鍵盤楽器を収録した音源。この中にはROLAND MKS-20のピアノ音色やMK-80/JD-800のRHODES音色なども含んでおり、そのプリセットは600を超える。最大32段階のベロシティ・スイッチやラウンドロビンを備え、ペダルやリリース時のノイズもモデリングで再現しているとのこと。同じSPECTRASONICSのシンセサイザー音源、Omnisphere 2とライブラリー統合も行える。

音色の微調整を行えるTWEAKタブ画面。FEELでアタックやリリースの雰囲気を調整できるほか、SUSTAINではペダル・アップとペダル・オフの両方のノイズが加わり、PEDALではペダル・ノイズとリリース・ノイズがFXへルーティングされる

音色の微調整を行えるTWEAKタブ画面。FEELでアタックやリリースの雰囲気を調整できるほか、SUSTAINではペダル・アップとペダル・オフの両方のノイズが加わり、PEDALではペダル・ノイズとリリース・ノイズがFXへルーティングされる

サウンドの印象

 アコースティックからシンセサイザーに収録されたデジタル・ピアノまで、多種多様な鍵盤楽器の音色が収録された製品ですが、ここではグランド・ピアノ音源の“LA Custom C7 Grand”を取り上げます。サンプリング元はYAMAHA C7ですが、ピアノ技師のジム・ウィルソン氏の手によりハンマーを特別なものに変更した個体だそうです。そのためなのかデフォルトのプリセットを聴いたところ、非常に太くてかっこいい音がしました。これは素晴らしい太さです。また演奏者が目の前で弾いているかのような音の近さにも耳を奪われました。生ドラムやエレキベースなどの演奏にも負けない存在感があります。例えば、バラードのイントロなどを弾けば、強い印象を残せるのではないでしょうか。あるいはピアノだけのイントロで始まって後からリズム隊が入ってくるような曲でも、負けることはないでしょう。

演奏性

 音が太いからといってダイナミクスがないわけではありません。弱く弾けば小さい音もしっかり出せます。

ジャンル感

 ポップス、ロック、ジャズに適していますが、シンガー・ソングライターの弾き語りにも良いのではないかと思いました。例えば、ノート・パソコンなどに本製品をインストールしてライブで使ってみても楽しいと思います。ステージでクールなサウンドを鳴らせるでしょう。この音の上にボーカルが乗ってもかっこいいと思います。

音作りの自由度

 音作りのパラメーターは必要十分なものがそろっているという印象です。タブで各種設定のページを切り替えていくのでが、MAINタブにはリバーブとリリース・ノイズ、ペダル・ノイズ、そしてベロシティ感度が用意されています。それからEQタブとコンプレッサーのCompタブがあり、ここにはテープ・シミュレーターも装備されています。TweakタブではアタックをNATURAL/GENTLE/TIGHTから選べたり、リリース・ノイズの設定などが可能。SETTINGタブではベロシティ・カーブも変更可能です。

まとめ

 きちんと目的を持って作り込まれた製品だなと感じました。音の太さはプリセットを変更しても同じですし、別の楽器、例えばRHODES音色などにも共通しています。その太さは格別なのでぜひチェックしてみてください。

製品情報

  • 価格:52,000円
  • 音源方式:サンプリング
  • 容量:約77GB
  • ベース・モデル:カスタムYAMAHA C7など
  • 対応フォーマット:AAX/AU/VST2.4/VST3/スタンドアローン

REQUIREMENTS
●Mac:macOS 10.13〜12(M1ネイティブ) ●Windows:Windows 7〜11 ●INTEL Core I7以上、8GB RAM以上、80GB以上のディスク空き容量、USB 2.0ポート、インターネット接続環境

 

牧戸太郎

牧戸太郎
東京音楽大学作曲指揮専攻映画放送音楽コース卒業。その後、作編曲家として活動を開始し、竹内まりや、Hey!Say!Jump、King & Princeなどの編曲を手掛けるほか、映画『兄に愛されすぎて困ってます』、WOWOW『向こうの果て』、テレビ東京『先生のおとりよせ』、日本テレビ『ぴーすおぶけーき』、Hulu『社畜OLちえ丸日記』など多数のドラマ、映画の劇伴でも活躍している。

【特集】ピアノ音源14製品レビュー