VI LABS Ravenscroft 275|ピアノ音源14製品レビュー

親しみのある楽器でありながら千差万別。それがピアノの面白さであり、膨大な数のピアノ・ソフト音源が市販されている理由でもあるのでしょう。本企画では話題の14製品をピックアップして、作編曲家の牧戸太郎さんにレビューしていただきました。また、各製品の試聴音源では、牧戸さんにタイプの異なる3つのフレーズを制作していただいたので、好みに合うサウンドを探してみてください!

ジャズのコードが美しく響くピアノ・メーカー公認の気鋭

VI LABS Ravenscroft 275|27,060円(2023年3月時点)

VI LABS Ravenscroft 275|27,060円(2023年3月時点)

 RAVENSCROFT公認のピアノ音源で、同社のコンサート・グランド・ピアノ、Model 275をサンプリングしている。マイクは、演奏者、クローズ、サイド、ルームの4ポジションが設定されており、それぞれオン/オフと音量の調節が可能。リリース・ボリューム、ペダル・ノイズ、キー・ノイズなどの音量設定、シンパセティック・レゾナンスやステレオ感の調節なども行える。ペダルはウナ・コルダ、ハーフ・ペダル、ソステヌート、ミュート・ストライクの4種を装備。

エディット画面。中央にクローズ、プレイヤー、サイド、ルームの各マイクのオン/オンとボリュームがあるほか、ペダル・ノイズやキー・ノイズ、ハンマーが弦に振れる音を再現するSILENT STRIKEなども用意されている

エディット画面。中央にクローズ、プレイヤー、サイド、ルームの各マイクのオン/オンとボリュームがあるほか、ペダル・ノイズやキー・ノイズ、ハンマーが弦に振れる音を再現するSILENT STRIKEなども用意されている

サウンドの印象

 RAVENSCROFTはジャズ・ピアニストで作曲家のボブ・レーベンスクロフトと、ピアノ調律師で技術コンサルタントのミカエル・スプリーマン氏によって創業されたブランドです。そのためかジャズのコードが美しく響くのが大きな特徴です。特にブラッド・メルドーのようなコンテンポラリーなジャズのタッチ感があります。明るくシャープでよどみがない印象です。その歯切れの良さがコード・バッキングにとても適しています。中域の膨張感があまりないことがシャープさの秘密かもしれません。

 また、楽曲で使用したときに“あのピアノ音源の音だな”という、いわゆる“音バレ”もしづらいように思います。そういう意味では中庸をいく音なのですが、それでいてメインのピアノ音源として使える貴重な存在と言えるでしょう。

演奏性

 気軽に弾ける雰囲気があります。ベロシティ・カーブもデフォルトのままで自然ですし、どこかの音域がことさら飛び出して目立つということもなく、低域から高域までのつながりが良い製品になっています。

ジャンル感

 やはりジャズをお勧めしたいですね。ソウル系にも良いでしょうし、ハウスにも使えます。また特別なキャラクターを必要としなければ、劇伴でも十分に活躍してくれるでしょう。“良い状態のグランド・ピアノの音が欲しい”と思ったときの選択肢に入るピアノ音源というイメージです。

音作りの自由度

 チューニングの画面があり、平均律、純正律、ピタゴラス音律などの5種類を選べます。各音を細かく設定することも可能です。またサステイン・ペダルを踏んだときにほかの鍵盤を弾いて弦を共鳴させるPEDAL RESONANCEや、ごく弱く鍵盤を押した際のハンマーが弦に振れる音を再現するSILENT STRIKEといったパラメーターもあります。デフォルトではクローズ・マイク(CLOSE)の音だけがロードされますが、そのほかにPLAYER、SIDE、ROOMの計4つのマイク・ポジションが用意されています。

まとめ

 弾く機会があれば、まずはコードを鳴らしてみると、その特徴がよく分かると思います。王道でありながら、ほかのピアノ音源とかぶらないサウンドなので、多彩なシチュエーションで重宝するでしょう。

製品情報

  • 価格:27,060円(2023年3月時点)
  • 音源方式:サンプリング
  • 容量:5.72GB(約35GB相当、ダウンロード時:約4.88GB)
  • ベース・モデル:RAVENSCROFT 275
  • 対応フォーマット:AAX/AU/VST/VST3/スタンドアローン

REQUIREMENTS
●Mac:macOS 10.14〜13(64ビット) ●Windows:Windows 10〜11(64ビット) ●4GB RAM(8GB以上を強く推奨)、6GB以上の空きディスク容量(7,200回転のハード・ディスク/SSD推奨)、最新版のUVI WorkstationまたはFalcon、インターネット接続環境(登録とダウンロード)、iLokアカウント

 

牧戸太郎

牧戸太郎
東京音楽大学作曲指揮専攻映画放送音楽コース卒業。その後、作編曲家として活動を開始し、竹内まりや、Hey!Say!Jump、King & Princeなどの編曲を手掛けるほか、映画『兄に愛されすぎて困ってます』、WOWOW『向こうの果て』、テレビ東京『先生のおとりよせ』、日本テレビ『ぴーすおぶけーき』、Hulu『社畜OLちえ丸日記』など多数のドラマ、映画の劇伴でも活躍している。

【特集】ピアノ音源14製品レビュー