ワンランク上のコンデンサー・マイクで歌録りのパフォーマンス&録り音を向上させたい方向けに、10~20万円台の現行モデル15機種をエンジニア&ボーカリストがレビュー!ここでは、TIERRA AUDIO New Twentiesを紹介。1920年代のカーボン・マイクをほうふつさせるFET仕様のマイクです。
ステンレス・シールドをまとう1920年代インスパイア機
1920年代のカーボン・マイクをほうふつさせるFET仕様の機種。カスタム・メイドのLUNDAHL製ライン・トランスが搭載され、温かみのある音を特徴としている。ステンレス製シャーシや防振用のマイクロ・スプリング、付属のアンチ・ポップ・システムなども出色。
価格:オープン・プライス(市場予想価格:154,000円前後)
●発売年:2022年 ●ダイアフラム径:不明 ●指向性:単一 ●アンプ回路:FET ●ハイパス・フィルター:非搭載 ●PAD:非搭載 ●出力インピーダンス:200Ω ●外形寸法:180(W)×200(H)×70(D)mm(箱含む) ●重量:1.12kg(箱含む)
【Engineer】聴いたことがない感じの個性的な音 〜中村公輔
かなり個性的な出で立ちをしていて、サウンドも想像していた通り、聴いたことがない感じです。スペイン製のマイクというのは珍しいですし、LUNDAHLのトランスを使ったマイクというのも初めて見るかもしれません。
さて、その音はコンデンサー・マイクというよりも、リボン・マイクに近いような柔らかい質感です。とは言え、コンデンサー・マイクらしい“音の粒子感”はあるので、ちょっと聴いたことがない音に思えますね。マイクごとの細かい音色の差を聴き分けられない人でも、確実に違いが分かるであろう明確な個性を持っています。張り出して聴こえる帯域がローミッド辺りと低く、入力した声が太く甘い方向にトランスフォームしていく感じ。例えば、ジャズ・ボーカルをレトロで大人っぽい音にしたいときに合いそうです。
【Male Vocalist】ハマる音楽にはしっかりハマりそう 〜高畠俊太郎
中域が強く出る感じで、現代のワイド・レンジなマイクとは異なる特性です。音楽ジャンルを選ぶと思いますが、ロックンロールやロカビリーのようにハマるものにはしっかりハマるでしょう。だから自分の楽曲でも、“普段とは違うように聴こえるけど、この感じも分かるなあ”と思い、ノリ良く歌えました。また、声を張ったときに良い具合のコンプ感があり、歌いやすかったです。
【Female Vocalist】性能を引き出す“マイクに寄せた表現” 〜シバノソウ
歌っているときは、ザラザラした質感で少し戸惑いましたが、プレイバックを聴いてみると奇麗に録れていました。音の重心は低めな印象で、コンプ感もあるので、男性ラップなどに合いそうだと感じます。個性が強いマイクですし、自分が持っているニュアンスを出そうとするのではなく、マイクが持っているニュアンスに合わせていくことで、性能を最大限に生かせると思いますね。
製品情報
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レビュワー紹介
Engineer|中村公輔
特集のイントロでも健筆を振るってくれたエンジニアの中村公輔氏。今回は、普段からエンジニアリングで携わっているボーカリスト2名を招いて、モニター音やプレイバックを聴き、各マイクを評価した
Vocalist|高畠俊太郎
LOOP LINE PASSENGERで活動中のボーカリスト/ギタリスト/ソングライター。今回は、同バンドのミドルテンポ・ロック・チューン「life」を歌い、各マイクを試した
Vocalist|シバノソウ
アーティスト/シンガー・ソングライター。2020年にリリースしたアルバム『あこがれ』からエモーショナルなポップ曲「あこがれの先」を選び、製品チェックに臨んでくれた