音声、映像、照明など多様なデータ形式を統一化するヤマハの技術「GPAP」

GPAP image

 YAMAHAは、音声だけでなく、映像や、照明の制御信号などさまざまなデータをオーディオデータ(WAVデータ)に統一して記録/再生する世界初のシステムGPAP(ジーパップ:General Purpose Audio Protocol)を開発した。

WAVデータに映像や照明制御などのデータを記録しDAWでも編集可能

GPAP概念図

GPAP概念図

 YAMAHAでは、2020年に映像/音響に加え照明や舞台演出などライブの体験すべてを記録してステージ上で忠実に再現する高臨場感ライブビューイングシステム「Distance Viewing」を開発。実証実験を繰り返す中で、記録フォーマットの異なる多様なデータの同期/再生の複雑な処理の難しさを解決するためにGPAPを生み出した。併せて会場への設営が簡単な後述のパネル型スクリーンも開発した。

GPAPへのデータ記録のルーティング

GPAPへのデータ記録のルーティング

 GPAPでは、音声だけでなく照明や舞台装置の制御信号などさまざまなデジタルデータをすべてWAV形式に統一して保存/再生。複雑な同期処理を行うことなく容易にシンクロ再生することが可能にする。PAミキサーや照明コントローラーなどの機材はGPAP専用インターフェースにケーブル接続するだけで、各フォーマットをWAVに変換し、オーディオデータとして収録可能。また、マルチトラックレコーダーやコンピューターなど、WAVファイルが再生できるデバイスをGPAPの再生装置として利用することができる。さらに、記録したデータはSteinberg CubaseなどのDAWソフトで編集可能。音声と照明やレーザーなどのデータを同一画面で扱うことができるようになる。

KORG Live Extremeでリモート配信も実現

 また、KORGのハイレゾ対応高音質インターネット動画配信システムLive Extremeと組み合わせることで、GPAPで記録したコンテンツの配信が可能に。これにより、「Distance Viewing」のリアルタイム配信も実現する。

新開発スクリーン
スクリーン組み立て
新開発のスクリーンと組み立ての様子

 GPAPとともに、Distance Viewingの実証実験を重ねる中から、素早く展開して短時間で設営できるスクリーンも誕生。折り畳み式のフレームに、パネル型のスクリーンを取り付ける方式を採用しており、設営や撤収を短時間で簡単に行える上、省スペースで収納でき運搬が容易。スクリーンの高さは最大約5m、横幅は自在に拡張可能だ。

WONKのスペシャルライブをDistance Viewingで

Distant Viewing WONK1
Distant Viewing WONK2

 2月2日、ヤマハ銀座スタジオで行われるWONKのスペシャルライブをGPAPを駆使したDisitance Viewingで別会場に届ける「Yamaha Presents WONK Live× Distance Viewing」が開催された。

 ヤマハ銀座スタジオでは、4Kの固定カメラで映像を収録。Live ExtremeでDistance Viewing会場に中継し、上述の新開発スクリーンに等身大で投影する。演奏は24ビット/48kHzで各パートごとの音声を同じくLive Extremeで送信。Distance Viewing会場に併せてミックスした音声は、メインスピーカーに加えてフロアモニターからも出力され、ライブの臨場感を加える役割を果たす。

 Disntance Viewing会場には、Live Extremeを通じてGPAPで照明制御データも送られており、会場に設置された12台の照明機器が、リアル会場のヤマハ銀座スタジオでの演出と同期して稼働していた。

 このプロジェクトに携わるヤマハの柘植秀幸氏によれば、映像のようなオーディオよりもサイズの大きいデータであっても、その分トラック数/チャンネル数を増やせば対応できるとのこと。音楽ライブ以外でも、イマーシブオーディオ技術AFC Imageと組み合わせて演劇で演者の立てる物音や息遣いを伝えるといったことも想定できるそうだ。

 今回はステージをそのまま伝えることを目的として固定カメラでの中継だったが、GPAPを発表したことで、さまざまなアイディアを関係各所と共有し、Distance Viewingを活用した新しい演出が生まれることも期待したいと柘植氏は語った。

 

プレスリリース

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