AVID Pro Tools × 三浦康嗣(□□□)〜フィールドレコーディング素材を使ったトラック・メイク

AVID Pro Tools × 三浦康嗣(□□□)〜フィールドレコーディング素材を使ったトラック・メイク

サンレコYouTubeチャンネルの番組『サンレコ クリエイティブ・ウィーク 2023 Spring』では、「DAWでの曲作り、プロはどうしてる?」をテーマに、クリエイターの皆さんがどのように愛用DAWで曲作りしているのかをじっくり解説。AVID Pro Toolsを愛用するのは、1998年の結成以来、サンプリングから合唱まで多様な手法を駆使しながら、唯一無二のポップスを生み出し続ける□□□(クチロロ)の主宰、三浦康嗣。数多くの引き出しから今回ご披露いただいたのは、フィールドレコーディング素材によるトラック・メイクだ。しかも、本セミナー用にオリジナル楽曲を制作していただいた。何気ない日常の音が、音楽へとメタモルフォーゼする、その瞬間にぜひご注目いただきたい。

三浦康嗣(□□□)「Pro Toolsでフィールドレコーディング素材を使ったトラックメイク」

三浦康嗣
□□□主宰、スカイツリー合唱団長。□□□のほぼすべての楽曲の作詞・作曲・編曲・演奏・歌唱・トラック・メイクを手掛け、東山奈央、中島愛、イヤホンズ、ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-などへの楽曲提供でも活躍。現在、立体音響スタジオの設立に向けて奔走中。


 2006年からのAVID Pro Toolsユーザーである三浦は、その魅力を「音を手づかみしている感じがするところ」と語る。

 「僕はPro Toolsを使いはじめたころから、打ち込みっぽいこともオーディオの切り貼りでやっていたんです。オーディオを素手でこねくり回している感じがして好きなんですよね」

 今回も一部のコード楽器でMIDI打ち込みが使われているが、多くはオーディオ編集で構築されたトラックだ。素材は10年前の六本木、そして最近の神戸&伊豆大島での録音だそう。それらにどのような編集が加えられたのだろうか。

 「冒頭はくしゃみ。これは六本木の素材で、3月か4月くらいだったと思うんですけど、僕、すごい花粉症で。くしゃみなんて心地良いものではありませんが、聴いているうちに短く切るとスネアみたいだなと思ったんです」

 この“短く切るとスネアっぽくなる”というアイディアは、素のくしゃみがスネアへと変化していく展開にそのまま生かされている。その後もテーブルに何かを置く音がキックに、温泉のお湯の音がサブキックへと変化し、MIDI打ち込みの和音ですら素材のピッチにインスパイアされて構築。その発想力には舌を巻くばかりだ。その上、素材の多くは特殊な加工が施されるわけではなく、短く切ってEQする程度のシンプルな編集が中心となっている。これについて三浦は「今回の曲は、ある意味で完成度が低いというか、既存の“こういうのが正解だよね”というラインにあえて満たない感じを狙いました」と語る。

 「足りないというのは必ずしもネガティブなことではなく、外食の最適解とは違う家庭の優しい味、ちょっとうまみが少なかったりするのもいいよね、みたいな感じです」

 “オーディオを素手でつかむ感覚”と三浦が評するPro ToolsならではのUIを活用して素材を次々とカットアップし、おいしい部分をできるだけ素のままの状態で生かす三浦の手法は、フィールド・レコーディングによる曲作りの妙味を実感させてくれる。見ているだけで創作意欲をかき立てられるので、ぜひ皆さんも本動画を参考にトライしていただければ幸いだ。

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