ミュート・ボタンをフロント・パネルに採用
24ビット/192kHzの録音に対応
フロント・パネルには、上からヘッドフォン出力用のボリューム調整ノブと、ミュート・ボタンを搭載。ミュート・ボタンを押すと、ボタン上にある“MUTE”の文字が赤く点灯し、マイク入力が無効になります。よく配信中にマイク位置を微調整したいときがありますが、ノイズが入ってしまわないように、フロント・パネルにミュート・ボタンが付いているのは便利ですね。
リア・パネルには上から、後述する4つの収音モードを切り替えるダイアル・スイッチと、入力ゲインを調節するためのボリューム・ノブを搭載。ダイアル・スイッチを回すと、フロント・パネルにある各収音モードのランプが青点灯するため、現在何のモードなのかが視覚的に分かるようになっています。いずれにしても、Lyraはシンプルな操作性で扱いやすい仕様になっていると言えるでしょう。
Lyraの底部には、コンピューターと接続するためのUSB Type-C端子と、ヘッドフォン出力用のステレオ・ミニ端子が備えられています。USB経由でコンピューターとつなげてみたところ、コンピューター内に立ち上げたDAWがすぐにLyraをオーディオI/Oとして認識しました。細かい設定や専用ドライバーのインストールが不要なのはありがたいですね。ADコンバーターとマイクが一体となっているため、わずらわしい配線などは必要無くデスク周りもスッキリ。ちなみにLyraは、最高24ビット/192kHzの高音質録音に対応しているのも大きなポイントです。
フラットで癖の無いサウンド
遠くの音もクリアな音質でキャプチャー
実際に試してみたところ、Lyraのサウンドはギラついた高域成分もなくフラットで癖の無い印象。同ブランドの上位機種と比べてみると、中高域のふくよかさや音抜けの良さは若干劣りますが、マイキングを工夫したりEQ処理を施せば十分と言えるクオリティだと思います。
最大の特徴は4-Capsule Adaptive Array機能。内蔵する4つの小型コンデンサー・マイクを組み合わせることにより、FRONT/FRONT&BACK/TIGHT STEREO/WIDE STEREOの4つの収音モードが選択可能です。まさにLyra一つで多様なシチュエーションに対応できると言えます。
FRONTモードは単一指向性のような印象で、まさに耳元で話したり歌ったりしているようなリアルなサウンドが収音できます。個人での配信やレコーディングに最適です。そこからTIGHT STEREOモードに切り替えると、FRONTモードよりもさらに奥行きが出て、臨場感のあるサウンドがキャプチャーできるでしょう。
FRONT&BACKモードは無指向性に近いイメージで、幅広い収音力が特徴です。ハーモニーが見せどころのボーカル・デュオや、アコギとボーカルの2人組などが、Lyraを中心に向かい合って演奏したりするようなシチュエーションにぴったりなのではないでしょうか。
WIDE STEREOモードは、Lyraを囲んでさまざまな楽器でセッションする場合や、周囲の環境音と一緒にボーカルを録音したいときなどに有効でしょう。
全体的な印象ですが、Lyraはマイクの前に立ち、ポップ・フィルター越しにソロで歌うような“一般的なボーカル・レコーディング用”というより、マイクから少し距離を置いたところからウィスパー・ボイスで歌ったり、Lyraを囲って複数人で一度にコーラスしたり、フィールド・レコーディングをしたりといったときなどに、その実力を十分に発揮してくれると思います。もしマイクの位置が離れていても、Lyraは声や楽器の細かなニュアンスをクリアな音質でキャプチャーできるため、まさに“配信用”としてふさわしいマイクだと言えるでしょう。
なお、ヘッドフォン出力からは常時ゼロ・レイテンシーでモニタリングが可能なため、わざわざDAW側でマイク用のチャンネルを作らなくても、マイクを通した自分の声を聴きながら作業が行えるので便利です。またLyraは声を繊細にキャッチするため、ヘッドフォンをした状態でも鼻歌が楽曲とよくなじんで聴こえ、曲作りがはかどりました! ちなみに、ヘッドフォン出力は非常にクリアな音質です。
2万円弱でこのクオリティなら、配信用コンデンサー・マイクの入門機としてはとてもお薦め。Lyra本体のフォルムも箱型で持ちやすく、頑丈に作られています。コンデンサー・マイクが持つ繊細で扱いにくいイメージを、きっと払拭してくれることでしょう。もちろん一般的なマイク・スタンドにも装着できるので、いろいろなレコーディング現場でも活躍できると思います。配信用途だけではなく、自分に合った使い方をいろいろと試してみるのもいいでしょう!
取り扱い:サウンドハウス
※ヒビノプロオーディオセールスDiv.でもLyra-Y3として取り扱いあり。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2020年2月号より)