
各社のワイアレス・システムに対応可能
耐湿性と耐汗性に優れたキャップを採用
TwinPlexにはTL45/TL46/TL47/TL48という、感度と特性が違う4種類のラベリア型が用意されているほか、ヘッドセット型のTH53もラインナップされている。今回は無指向性/低感度のTL47を試してみた。


ラベリア型は、マイクを持つことが困難で、かつ目立たせたくない場合に使い、いろいろな場所へ仕込むことが多い。TwinPlexの外観を見ると、カプセル部は5.6(φ)×13.5(H)mmで一般的なラベリア型とさほど大きさは変わらない。スピーチ特性を持つTL48のみ5.3(φ)×19(H)mmと少し細長い形状になっている。ケーブル部は新開発の二重構造シールドと各芯線に独自のらせん構造を内包することで、あらゆる方向の曲げ伸ばしに極めて高い耐久性を実現しているという。メーカー・テストでは長期間の屈曲試験、伸張試験、せん断試験をクリアしたとのことだ。ケーブルの直径はTL45が1.1mm、そのほかのモデルは1.6mmという細さになっている。
出力コネクター部はTL45がLEMOのみ、TL46がLEMO/TQG、TL47とTL48がLEMO/TQG/MicroDOT/XLR/先バラ、TL53がLEMO/TQG/MicroDOT/先バラから選択可能で、他社のワイアレス・システムにも使用できる。色はTL45/TL46/TL47が白/ベージュ/茶/黒、TL48が白/ベージュ/黒、TH53がベージュ/茶/黒から選べるので、ステルス性が必要な現場では十分に対応可能だ。
新開発のカプセルには2枚のダイアフラムで収音するデュアル・ダイアフラム構造を採用。最小限のカプセル・サイズに通常設計の2倍の収音面積を搭載することで細かなニュアンスまで収音し、軸外安定性と圧倒的な低ノイズ・フロアを実現したとのこと。また、交換可能な耐汗性カプセル・キャップは超疎水性コーティングを施しているため、汗や湿気を確実にシャット・アウトできるという、演劇やミュージカルなどの舞台で衣装やカツラに仕込むなど、汗で性能が発揮しづらい場合に安心できそうだ。
ナチュラルな高域とふくよかな低域
装着に便利なアクセサリーも充実
TL47をとある野外フェスの中で行われる演舞の演目で、激しい動きをする男性の演者2名に使ってみた。本編中に「敦盛」を舞いながら歌うシーンや、刀剣を振り回しながらかけ声を出す場面がある。衣装は戦国武将のような格好で、本人の希望によりピン・マイクを仕込むこととなった。TL47は、マイクの装着に便利なアクセサリー・キットがセットになったモデルもある。

今回はそのキットの中のデュアル・タイ・クリップとフォーム・ウィンドスクリーンを選択し、胸元の襟部分に装着した。当然ワイアレスで使うので、弊社所有のボディ・パックと受信機を使用する。
肝心の音色だが、高域はナチュラルで、低域はふくよかな印象。低感度なので、ほかのピン・マイクに比べてゲインを10dBほど上げて使ったが、演舞の中で足踏みや大きなかけ声を出す場面があったので、そういった大きな音をひずませること無く収音できたのはかなり良かった。モデルの選択も正解だったようだ。胸元に着けるため、EQで500Hz辺りをカットし、衣ずれや動きによるマイク・カプセルとの接触時のために160Hz以下をローカットしたが、大きな足踏みの低音も迫力あるサウンドで拾える。懸念していたPAスピーカーの回り込みや、モニターからのかぶりも、無指向なので当然拾ってしまうのだが問題にならない音量で、表/中音共に出すことができた。
フェス前日の仕込み日まで大雨で、本番では雨が上がったが朝晩は霧も多く、客席内は田んぼのような泥になっており、マイクに取っては大敵の湿気がかなり多い環境となっていたが、本機はトラブル無く本番を終えることができた。
アクセサリー・キットも充実していて、いろんな仕込み方法を考えなければならないロケ現場や放送用途などにも対応できるだろう。SHUREが安定のニーズを持つ音楽市場だけでなく、演劇などのショウ、放送業界にもマーケット拡大を目指すシリーズになりそうだ。
ツアーなどでホワイト・スペース帯を含めた新周波数帯域を運用する際、使用チャンネルが限られることで同じワイアレス・システムが全公演を通して使えないという場合もあるだろう。TwinPlexはワイアレス・システムを選ばずにマイクが使えるという、ユニバーサル対応と言える仕様になっており、マイク本体の性能を売りにしている姿勢に好感が持てた。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2019年11月号より)