温かみがありつつクリアな出音と
美しく抜けが良い高品質なエフェクト
Notepad-12FXは、13インチのAPPLE MacBook ProやB4サイズと同じくらいでコンパクトです。インプットは、モノラル4chと、ステレオ・チャンネルが4系統あり、ch11/12はAUXリターンを兼ねています。軽量であるにもかかわらず、金属製の筐体はとても良い質感。各ノブもガタつきが無く、回す感触も適度な重みがあり高級感があります。横から見ると底面に空間ができるようになっており、机に直に置いているとこもりがちな熱を逃すように設計されていますね。
ch1から4は、上位機種譲りの高品位なマイク・プリアンプを採用。ファンタム電源は、ミキサーの電源が入ると常にオンになります。実際にマイクを接続してチェックしてみたところ、ゲインをかなり上げてもノイズはほとんど無く、温かみのあるサウンドでした。EQは、HF(12kHz)、MF(2.5kHz)、LF(80Hz)のそれぞれ周波数固定ですが、効きが良く自然な変化で扱いやすいです。ヘッドフォン・アウトの方も同じく、音量をかなり大きくしてもノイズはほとんど無くクリアなサウンドでした。ch1と3にはHi-Zインプット・ボタンを搭載しており、ギターやベースを直接入力することもできますね。
続いてエフェクト・セクションですが、3つのスイッチにそれぞれREVERB、CHORUS、DELAYのオン/オフが割り当てられています。隣のパラメーター・ノブで、REVERBは長さ、CHORUSなら深さ、DELAYならフィードバック量を調節できます。ディレイ・タイムは専用のTAP TEMPOスイッチで調節が可能です。余談ですが、本機には電源スイッチとインジケーターがありません。最初は電源が入ったか分からなかったのですが、DELAYスイッチを押すとTAP TEMPOのインジケーターが点滅して、無事電源の確認もできました。
筐体にはエフェクトの3つ同時押しでKARAOKEと印字されており、実際に聴くとカラオケ・エコー的なエフェクトがかかりました。それぞれ2つ押しも試してみましたが、ちゃんとREVERB+CHORUS、CHORUS+DELAY、REVERB+DELAYがかかり、実質7種類のエフェクトが使えます。ボーカル録りや簡単なPAシステムで、パッとイメージに近いエフェクトがすぐ使える方が良いでしょう。個人的には、CHORUS+DELAYの組み合わせが、それぞれを単体で使うより広がりが出て“かかった感触”がして好みでした。スタジオ品質のLEXICON PRO製エフェクト・プロセッサーを搭載しているので、REVERBの美しさと抜けの良さはさすがです。
USBオーディオI/O機能も搭載
4イン/4アウトでライブにも便利
Notepad-12FXは、USBオーディオ・インターフェース機能も搭載しています。専用ドライバー無しでもMac/Windowsにつなぐだけで、最高24ビット/48kHzでの入出力が可能です。Androidスマートフォンでも作動しました。そのままでも4イン/4アウトのオーディオ・インターフェースとして使用できますが、専用のドライバーであるSOUNDCRAFT USB Audio Control Panelをコンピューターにインストールすると、コンピューターへのインプットのch3+4をミキサーのch3、4、5/6、7/8から選択できたり、ダッキング機能のオン/オフやパラメーターの調整ができます。
このダッキング機能は、ch1から4に入力があると、自動でコンピューターから本機への入力レベルを下げることができる機能です。例えば、音楽とナレーションが含まれる動画を作るような場合に、ナレーターが話している間、音楽の音量を自動的に下げることができます。
USB出力3/4はPHONES LEVELノブの上にあるスイッチ切り替えでヘッドフォン・アウトからしか聴くことができません。しかし、AUXアウト(モノラル)をもう一つのヘッドフォン・アウト(ステレオ)に切り替えることができます。なので、DAWのマスター・アウトをUSB出力3/4に、クリックをUSB出力1/2に割り当てることによって、ライブでNotepadのマスター・アウトからシーケンスを出し、クリックとミキサーのインプットに受けたPAからのモニター送りを混ぜて、AUXアウトからヘッドフォン・アウトでモニターできます。つまり、Notepad-12FX一台で、イアモニ用ミキサーとオーディオ・インターフェースを兼ねることができるのです。省スペースでライブ用同期システムが組めるので非常にお勧めです。
レコーディング、ライブ、ポッドキャストなど、オールラウンドに使えて、なおかつ十分なサウンド・クオリティが低価格に抑えられており、幅広い用途で活躍する製品と感じました。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2019年10月号より)