「PELUSO P-414」製品レビュー:AKG C414EBの特徴を踏襲して設計されたコンデンサー・マイク

PELUSOP-414
 近年、さまざまなメーカーからコスト・パフォーマンスに優れた“新しいマイク”が数多くリリースされている。そんな中で“ビンテージ・マイクのクローン”に徹底的にこだわり、その製品化に取り組んでいるのがPELUSO。今回発売されたニュー・カマーは、かのAKG C414EBを踏襲して設計されたというP-414だ。一体どのような仕上がりになっているのであろうか?

癖が無くしっかりと存在感のある音像
基本性能が高い“使えるマイク”

 元になったC414EBは、マイクの女王C12の直系として1976年に発売され、リリースから40年を越えた今でもスタジオ定番の万能マイクの座に君臨するコンデンサー・マイクだ。ラージ・ダイアフラム・マイクとしてはかなり小型で非常に取り回しが良く、C12から受け継いだCK12カプセルは“シルキー”と評される伸びやかな高域と、無指向から双指向まで対応する機能性の高さを有する。その辺りの特徴をどのように再現しているかがP-414に対する最大のチェック・ポイントになるであろう。

 まずは外観をチェック。一見するとC414EBと見まがうほどそっくりなたたずまいなのだが、XLR接続端子部を兼ねたジョイント部分がやや長いことに気が付く。手にするとC414EBよりズッシリと重く、全体的に半回りほど大きいため、筐体の剛性度は高い。PELUSOのフォーマットに従い、シルバーというよりは極薄シャンパン・ゴールドをまとったボディ。そしてそのボディにはC414EBと同様、表に4段階の指向性切替スイッチ、裏には0/–10/–20dBのPADスイッチと0/75/150Hzのローカット・スイッチを装備する。

▲マイクのリア側。左側はPAD切り替えスイッチ(0/–10/–20dB)、右側はローカット・スイッチ(0/75/150Hz)だ ▲マイクのリア側。左側はPAD切り替えスイッチ(0/–10/–20dB)、右側はローカット・スイッチ(0/75/150Hz)だ

 これまでのPELUSO製品同様、メーカー・ロゴや各種スイッチのパラメーターのアイコンが刻印されているが、P-414は各刻印に墨入れがしてあり表示が見やすかった。マイク本体を収納するキャリング・ケースには、布製インナー・バッグとショック・マウントが同梱されている。

▲キャリング・ケースのほか、ショック・マウントと布製インナー・バッグが付属する ▲キャリング・ケースのほか、ショック・マウントと布製インナー・バッグが付属する

 では、実際の音色チェックに移ろう。まずアコースティック・ギターに立ててみる。一聴して気付くのが、その基本性能の高さ。標準的ゲイン・レベル、良好なS/N、癖が無くしっかりと存在感のある音像……と、プロの現場における“使えるマイク”としての条件を軽々とクリアしていることはすぐに理解できた。いつも通りストロークやアルペジオ、メロディ・フレーズなどさまざまな奏法を試してみたのだが、音の芯をしっかりとらえ、弱い音から強い音まで対応していくその挙動には安心感を覚える。

むやみに強調することのない
ナチュラルで伸びやかな高域

 アコースティック・ギターの収録において、手を焼くのが低域のダブつきだろう。アルペジオにおける音の太さとしてはおいしい部分だが、ストローク時には邪魔になるということは往々にしてある。P-414の場合は200Hz以下の低域の表現が秀逸で、物足り無さもブーミーさも感じない絶妙な整頓がされており、どんな奏法でも問題を感じなかった。中域、特に1〜2kHz辺りの存在感は十分に感じられたが、NEUMANN系のマイクほどの押しの強さを持たないのはAKGマイクの傾向を受け継いでいる。パッと聴きの派手さを求めるためか、高域に味付けを施しているマイクも多い中、どこにも耳障りなピークを感じさせないのはPELUSO製品全般に見受けられる特徴。むやみに高域を強調することなく、低域の整理、中域の収まり具合から、相対的にナチュラルで伸びやかな高域を得ているそのチューニングに、同社の“真面目さ”が垣間見られた。

 続いて男性ボーカルを試してみる。アコースティック・ギターのときと同様、明りょう度の高いしっかりした音像が得られた。近接効果もほど良くコントロールされているので、7〜10cm程度のオンマイクであっても、低域が破たんすることはない。中高域のピーキーさもそれほど強調されないので、女性ボーカルとも相性が良いだろう。アコースティック・ギターと男女ボーカルのほかにも、ドラムのオーバー・ヘッド、各種パーカッション、ピアノ、ストリングス、木管楽器、エレキギター、ルーム・マイクなど、オリジナル同様“万能”に使えるマイクであることは間違いない。

 現在、AKGにおけるC12直系のラインナップはC12 VR、C414XLS、C414XLII、C314、C214となっている。どれも今の音楽制作シーンに対応すべくさまざまな仕様変更がなされており、レガシーなC414EBをそのまま受け継いで再現しているモデルは存在しない。筆者はこれまでに22 47、P-49、P-84、P-87という4つのPELUSO製品を紹介してきた。今回5本目となるP-414をチェックし、あらためてPELUSOというメーカーのビンテージ・マイクに対するリスペクトと、その思いを真面目に自社製品へ反映させる理念に感銘を受けた。

サウンド&レコーディング・マガジン 2019年10月号より)

PELUSO
P-414
120,000円
▪形式:コンデンサー ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪指向性:ハイパー・カーディオイド/カーディオイド/オムニ/フィギュア8 ▪感度:12mV/Pa ▪インピーダンス:200Ω ▪最大音圧:162dB(–20dB PAD使用時) ▪等価ノイズ・レベル:12dB(A) ▪付属品:キャリング・ケース、インナー・バッグ、ショック・マウント ▪外形寸法:51(W)×188(H)×38(D)mm ▪重量:490g