
コンパクトかつ軽量な筐体
高いヘッドルームと低ノイズを実現
DW 20T/DW 20Rを簡単に説明すると、ライン信号をステレオで送受信できるという、ありそうでなかったワイアレス・システムです!
外形寸法は118(W)×63(H)×112(D)mm(アンテナ含まず)、重量は600gとなっております。皆さんがよく知るKLARK TEKNIKのDI、DN100より一回り小さく、軽さはおよそ半分と言えばコンパクトで軽量であることが伝わるかもしれません。外観といえば、ワイアレス機器にもかかわらず、入出力端子(XLR/フォーン)とペアリング・ボタン、ステレオ/モノの切り替えスイッチ、レベル・ノブと実にシンプル! シルバーのアルミ押出し成形ケースに保護ゴムコーナーが付いていて見るからに頑丈そうです。ちなみに、このゴムを外して付属のウォール・マウント・ブラケットに付け替えることにより、ラックにマウントもできます。DW 20T/DW 20RともにACアダプターを使用しての運用が基本となります。
スペックは、デジタル2.4GHz ISMバンド動作により、もちろん世界中でライセンス無しで使用が可能。高いヘッドルームを持ちながら低ノイズという優れた音質を実現しています。入力や出力端子もXLRとは別にTRSフォーンも用意されていますので、さまざまな用途の現場でも変換無しで賄えるでしょう。ちなみに気になる電波の到達距離ですが、公式では30m(環境による)となっています。
直感的で簡易な操作が可能
低レイテンシーで脚色の無い音
DW 20T/DW 20Rを生かせるチェックがないものかと思っていた矢先、とあるボーカル・オーディションでエレピの弾き語りがあることを思い出しました。今回は転換に時間が取れないので、エレピのラインをDW 20T/DW 20Rでワイアレス化してみようと思い実践。バンド演奏とDW 20T/DW 20Rを使用したエレピとボーカルという、いたって簡単なセッティングです。
DW 20T/DW 20RをACアダプターに挿すと、すぐに電源が入りスタンバイ・モードになり、PAIRスイッチが点灯します。まずDW 20Tのスイッチを4秒長押しし、点滅したら30秒以内にDW 20Rのスイッチも4秒長押し。こちらも点滅し、点灯に変わります。これだけでペアリング完了です。本当にシンプル! そして回線チェック時に気付いたのですが、ノイズが皆無で、ケーブルでパッチするよりもDW 20T/DW 20Rを使った方が良いのでは?と思うくらいです。
エレピを弾いてもらったところ入力が大きく、コンソールで許容できるギリギリだったので、DW 20T/DW 20Rに搭載されているレベル・ノブをフルの0dB設定から2目盛りくらい下げて、ちょうど良いゲインで再設定。このレベル・ノブが付いているというのもなかなかの好印象! 実際音質も全く色付けが無く、“そのままのダイナミクスで、そのままの音質を出力する”という姿勢を徹底している感じが受け取れます。
デジタル機器に付いて回るレイテンシーもさほど気になることもないので、演奏でのタイムラグは問題視する点ではないでしょう。もちろんオペレートもストレス無く行えました。電源ケーブル1本で済んでしまうのですから、むしろ転換の短縮や転換後に行うチェックの時間や労力を考えた方がストレスになるのではないでしょうか? ここまでくると電池駆動もできたらPAエンジニア的にはパーフェクトだったのになあと欲が出てきてしまいます。

少し前にSNSで、離れたスピーカーにワイアレスで信号を伝送するにはどうするか、というテーマでさまざまなモデル名を出し合うスレッドがあったのですが、今ならば間違い無く自信を持ってDW 20T/DW 20Rをお薦めするでしょう。それくらいの品質のものを、さすがの老舗が出した名機です。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2019年7月号より)