
モジュレーションをPM/FMから選択
パンニングもオシレーター内で調整可能
Flow Motion FM Synthは、FMシンセシスの考え方を発展させた音作りを基本にしています。これはオシレーターをオシレーターでモジュレートすることによって新たに生まれる倍音を音作りに応用した方式です。Flow Motion FM Synthにはそれを減算させるフィルターと組み合わせることで、より音楽的な音作りができるようになっています。基本は4オシレーターにフィルターと4つのモジュレーターを自由自在に組み合わせるマトリクス構造になっており、それに16ステップのノート・シーケンサーとアルペジエーター、さらに16ステップのスナップ・ショット・シーケンサーを搭載しています。
Flow Motion FM Synthは大きく分けて、4つのオシレーターの設定とコントロールを行うFLOW画面(メイン画面)、そのオシレーターを加工するパラメーターが集まったMOTION画面の2ページ構成です。FLOW画面ですが、ご覧の通りオシレーターは丸いグラフィックで表示されており、“OSC●”と書かれている白い部分をクリックすることでオン/オフできるようになっています。FMシンセシスですのでほかのオシレーターの音を使ってモジュレーションをかけ合うことになるわけですが、その変調をデフォルトの位相変調(PM)か周波数変調(FM)にするかを選択可能です。PMはオリジナルのピッチを損なわずに倍音が変化しますが、FMではリング・モジュレーターのような変化になります。
内蔵の波形は、サイン/三角/ノコギリ/矩形/ホワイト・ノイズの5種類。鍵盤のアイコンが光っているときはMIDIノートに準じたピッチが出力されますが、消えているときはピッチがHz表示に変わり任意の周波数に固定されます。RATIOはほかのオシレーターに対するオクターブの係数で、1/4〜36の間で設定可能。モジュレーション時の倍音にかかわる数値だと思ってください。お互いのオシレーターは線でつながっており、その先にあるつまみを回すことでモジュレーション量が調整できます。
また線の途中にある小さな丸をクリックするとその量の変化にモジュレーション・ソースを割り当てることが可能です。さらにアウトプットは常にステレオになっていて、オシレーターのパンニングもオシレーター内で決められるようになっています。
目まぐるしく音色が変わる
SNAPSHOT SEQUENCERを搭載
MOTION画面に移ります。フィルターはローパス/ハイパス/バンドパス/ノッチの4タイプでカーブも−12dB/octと−24dB/octが選べます。フィルター自体のキレがアナログな感じで非常に好印象。フィルターには専用のADSRタイプのエンベロープがあり、さらに4バンドのグラフィックEQが付いていて、これが音作りの幅を広げてくれます。

モジュレーション系は基本4ソースで、各ソースごとにADSRタイプのエンベロープかLFOのどちらかが選択できます。LFOにした場合はモジュレーションの立ち上がりを遅くする機能があるのでディレイ・ビブラートなども簡単に作ることができます。
再びFLOW画面に戻りますが、NOTE SEQUENCERはDAWのホスト側から送られてくるノートを無視するものではなく、演奏情報はあくまでMIDIで、このシーケンサーはそのノートに対して半音単位でノートの上げ下げを行うものです。シーケンスのテンポをホストと同期させない場合は当然ランダムにピッチを変更することになり、かなり予測不可能なフレーズが発生します。
Flow Motion FM Synthの最大の売りでもあるのがウィンドウ下部に見えるSNAPSHOT SEQUENCERでしょう。これはフレーズを作るためのシーケンサーではなく、ステップごとに音色を切り替えるためのシーケンサーです。音色のパラメーターを丸ごとスナップショットとして記憶させ、それを最大16種類まで保持できます。サイコロのマークを選ぶとランダムにスナップショットが選ばれ、シーケンスが走り始めると目まぐるしく音色が切り替わっていきます。全く新しい感覚を呼び起こし、未知のグルーブを生み出してくれます。
Flow Motion FM Synthの音はデジタルとアナログのハイブリッド的なニュアンスがあり、アナログ好きの筆者にもとても魅力的に感じました。プリセットだけでも1,000近く入っていますのでそれだけでも十分に楽しめると思います。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2019年3月号より)