一つのキーに複数サンプルをアサイン
ヨレの無いアンサンブル
まずスペック面ですが、24種におよぶ和太鼓と12種の掛け声やリム・ヒットなどをサンプリング。それらがうまくマッピングされ、10個のプリセットとしてまとまっています。太鼓だけではなく、和太鼓アンサンブルに付随するさまざまな金物や掛け声などが入っているのもありがたいです。それらもプリセットを選ぶと太鼓と一緒にアサインされます。ベロシティ・レイヤーは7段階、ラウンド・ロビン7種と申し分ありません。
鳴らしてみて分かったのですが、太鼓のアンサンブルをレコーディングする方式ではなく、一つのキーに太鼓のサンプルを複数アサインしてアンサンブルとして鳴らしています。アンサンブルをそのまま録音したサンプルはそのまま打ち込むとタイミングがヨレてしまったりすることがあるのですが、Taiko Creatorは1つの太鼓のサンプルごとにタイミングのズレを出しているため、そういったことはありませんし、リアルタイムでの打ち込みが非常にやりやすいです。弾いていてすぐにそれっぽさが出せるため、ずっと弾いていられます。
オリジナル・セットの作成が可能
便利なMIDIライブラリーも用意
早速仕事で使ってみたのですが、バトルもののBGMなどでリズム・パターンが素早く構築できました。ワンフィンガーでループが鳴るタイプよりも柔軟性があるため、とても使いやすいです。
サウンドは最初からしっかり作り込まれているため、何も音作りせず、そのままオーケストラ音源の中で使えます。さらに、制作するさまざまな楽曲に合わせてライブラリー内でサウンドを調整することも可能です。
マイクは、CLOSE/MID/FAR/ROOMの4種類があります。MIDでも距離感が結構近めな印象です。HEAVYOCITY Damageなどと組み合わせても相性が良さそうだなと思いました。DRIVEをいじればひずみで太鼓の量感も調節できますし、WIDTHでプリセット全体のステレオ・イメージを調節できます。
GROUPSタブでは自分のオリジナル・セットを作ることが可能です。ここでグループを組んだサウンドを1つのキーにアサイン。1つのグループに対して9つのインストゥルメントを割り当てることができ、それぞれパンやピッチを調整することも可能です。最大で9つのドラム・グループ、6つのパーカッション・グループ(リム・ヒットなど)、2つのAUXグループ(シンバル、掛け声など)をキーボード上に展開することができます。面白いのがCREATE GROUPボタン。これを押すことによってランダムで太鼓を選んでグループ・アサインしてくれます。
また、打楽器に詳しくない方が迷うのがリズム・パターンではないでしょうか。その楽器らしいフレーズやニュアンスというものは、なかなか一朝一夕ではできません。しかも太鼓のアンサンブルのように何人もの奏者が違うリズムをたたくパターンを打ち込もうとすると、なかなか難しいと思います。Taiko Creatorにはプリセットごとに多くのフレーズがMIDIで用意されています。同じタイプのフレーズの中にIntro/Core/Endと3パターンあるため、組み合わせて一曲持たせるのも簡単です。なかなか自分では思いつかないようなとても複雑なフレーズが入っており、聴いているだけでその上に乗るメロディやオーケストレーションが浮かんできます。和太鼓だけのMIDIのフレーズ・サンプルはいままであまり無かったのでとてもありがたいです。
これまで和太鼓の音源はいろいろなメーカーの音源をたくさん立ち上げて、その中で楽曲に合うものを別々に選んで、と手が止まることが多くありました。Taiko Creatorはそれ一つで太鼓から金物まで網羅している上、その中で音作りもできてしまうので、素早く楽曲イメージを構築するのに役立ってくれます。和太鼓のリズムを練るときには、とりあえず立ち上げることになりそうです。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2019年2月号より)