「ZÄHL EQ1/IM1」製品レビュー:ドイツ製コンソールの音と機能を継承したAPI 500互換モジュール

ZÄHLEQ1/IM1
ドイツのメーカーZÄHLが、同社のアナログ・コンソールAM1のEQ/マスター・セクション部分を抽出し、API 500互換モジュール化したEQ1とIM1をリリース。両者ともステレオ仕様で、マスターに挿すことができるクオリティです。早速レビューしていきましょう。

各EQセクションが独立回路のEQ1
全体の輪郭を崩さない音楽的な効き

まずEQ1はステレオ仕様なので、L/Rのチャンネルには同じ処理がされます。EQ1のフロント・パネルには、上からHI、HI MID、LO MID、LO、LO CUT、EQゲイン、I/Oステージといったセクションを配置。それらのうちHI、HI MID、LO MID、LO、LO CUTセクションにはオン/オフ・ボタンと周波数帯域の設定ノブが、またLO CUTを除く上記のセクションには±15dBで調整可能なゲイン・ノブがそれぞれ搭載されています。なおフロント・パネルの下段右端にあるEQゲイン・セクションでは、各EQセクションのゲイン・レンジを5/15dBで切り替えることができるスイッチを装備。さらにHI、LOセクションにはベル/シェルフ・EQのタイプ切り替えスイッチ、HI MID、LO MIDセクションにはQ値の設定ノブがあります。またHI MIDセクションにはコントロール周波数帯域を3倍に切り替えるスイッチ、LO MIDセクションにはコントロール周波数帯域を5分の1に切り替えるスイッチを備えています。各バンドの回路はそれぞれ独立しており、未使用のEQバンドをバイパスすることができるためノイズ対策にも有利だと言えるでしょう。

最下段にあるI/Oステージ・セクションには、ゲイン・ノブとそのゲイン・レンジを5/15dBで切り替えるスイッチを搭載。さらにマスター・ゲインの入出力切り替えスイッチ、バイパス・スイッチが配置されています。マスター・ゲインの入出力を選択できるのは自由度が高いですね。

さて肝心なEQ1の音質ですが、これが想像以上にいい!どの周波数帯域を持ち上げても位相が崩れることなくブーストされる感じです。耳障りな3kHz付近を極端にブーストしても音が固くなってしまうようなことがありません。EQ1は非常に音楽的で、サウンド全体のバランスを崩さないEQだと言ってもよいでしょう。NEVE 1073に搭載されているEQ部分のように、高域を持ち上げるとサラサラ感がありますが、それよりも若干音抜けが良い感じです。

EQ1をドラムのキックにも使用してみましたが、ブーミーになり過ぎず“程良く引き締まった太さ”を作れる印象。全体的に輪郭を損なわないEQなので、シンセサイザーやボーカルなどにもマッチするでしょう。試しに思いっきりブーストして使ってみましたが、それでもなかなかひずみにくく、ひずんだ場合でもバリバリとした音にならなかったのは“素晴らしい”の一言。ローカットも的確なポイントで効いているため、スイッチ一つで非常に明るいサウンドになります。

付属パネル使用でインサート可能なIM1
L/RとM/Sをそれぞれモニタリング

続いてIM1は、L/RやM/Sの処理機能を装備したAPI 500互換モジュール。ステレオ・インサート端子も搭載しているため、同梱の専用ブレイクアウト・パネルを取り付けて使用することができます。このブレイクアウト・パネルを電源ラックに取り付けることで、ラック前面からインサート端子を出せるという便利な仕様。つまりこの場合、少なくとも3つ分の空きスロットが必要になってくることは注意しておかなければなりませんね。

▲IM1に付属する専用ブレイクアウト・パネル。上からセンド用のL/MID、R/SIDE、リターン用のL/MID、R/SIDE(いずれもXLR)を備えている。このパネルをIM1に接続することで、ラック前面からインサート端子を使用することができるようになる。この場合、合計3スロット分のスペースが必要だ ▲IM1に付属する専用ブレイクアウト・パネル。上からセンド用のL/MID、R/SIDE、リターン用のL/MID、R/SIDE(いずれもXLR)を備えている。このパネルをIM1に接続することで、ラック前面からインサート端子を使用することができるようになる。この場合、合計3スロット分のスペースが必要だ

IM1のフロント・パネルには、上からインプット・ステージ、インサート、ステレオ・ベース、アウトプット・ステージといった4つのセクションがあります。まず入力されたソースはIM1の最上段にあるインプット・ステージ・セクションで、L/Rのバランスと±10dBの範囲で入力レベルを調整可能です。

そのすぐ下にあるインサート・セクションの上部には、センド方向とリターン方向それぞれにおいてL/RとM/Sをモニタリングできる4つのスイッチと、センド・レベルを最高20dBまでブーストできるSEND BOOSTノブを搭載。下部には全インサート機能をバイパスするオン/オフ・スイッチ、信号をL/RかM/Sに選択できるMID/SIDEスイッチ、パラレル・コンプやEQ処理を行う際のドライ/ウェット量を調整するRETURN RATIOノブ、インピーダンスを3段階で切替可能なZスイッチを装備しています。

M/S信号のモニタリングでは、左右のスピーカーからMIDとSIDEの信号が分離して聴こえますので、あくまでチェック用と言えるでしょう。また、SEND BOOSTノブで信号をブーストするに従ってより密度の濃い音になるので、積極的な音作りに使えそうだと思いました。

ステレオ・ベース・セクションでは、STEREOノブでステレオ感を調整できます。CONSTANT MIDスイッチをオンにしてSTEREOノブを時計回りにひねると、ステレオ感が自然に強調されていく印象です。オフにして時計回りにひねってみたところ、センターの芯部分が引っ込んだような音になりました。ちなみにステレオ・ベース・セクションのオン/オフ・スイッチも搭載しているので、EQ1と同じく未使用の場合はオフにしてノイズを最小限にとどめることができるでしょう。

最下段にあるアウトプット・ステージには、L/Rのバランス調整をするL/R BALANCEノブ、出力レベルを±10dBで調整するOUTPUT GAINノブ、IM1自体をバイパスするBYPASSスイッチを備え、ここでもさらに調整することができます。

EQ1とIM1は、マスター処理に使えるAPI 500互換モジュールを探している方にとてもお薦めの製品です。またドラムのバスなどにインサートしてみても面白いでしょう。両者ともクオリティが高く、オールマイティな製品であることは間違いありません。ぜひご自身の耳でチェックしてみてください!

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サウンド&レコーディング・マガジン 2018年10月号より)

ZÄHL
EQ1/IM1
オープン・プライス(市場予想価格:各265,000円前後)
●EQ1 ▪入力インピーダンス:30kΩ以上 ●IM1 ▪入力インピーダンス:20kΩ以上 ●共通項目 ▪最大入力レベル:+26dBu以上 ▪最大出力レベル:+26dBu以上 ▪出力インピーダンス:50Ω ▪DC電流:250mA以下(スロットごとに最大125mA) ▪外形寸法:76.2(W)×133.4(H)×169(D)mm ▪重量:約1.2kg