「ZOOM F8N」製品レビュー:現場が求める便利な機能を多数追加した8chフィールド・レコーダー

ZOOMF8N
低ノイズかつ高音質なプリアンプを8基を搭載し、最高24ビット/192kHzでのレコーディングに対応するZOO M F8の後継機、F8Nが登場。前モデルからどのような進化を遂げたのでしょうか。早速見ていきたいと思います。

1msのディレイでレベルを先読み
クリップを防ぐAdvancedリミッター

まずは基本装備から。インプットはXLR/フォーン・コンボ端子×8を装備。ステレオ・ミックスも含めて最大10tr分の録音が可能です。アウトプットにはヘッドフォン・アウトのフォーン端子×1にメイン・アウトL/RのTA-3端子×2、サブアウトはステレオ・ミニ端子×1を用意しており、ルーティングを個別に設定することができます。筆者の場合、テレビ番組の海外ロケでカメラに送るメイン・アウトとは別に、サブアウトから通訳の音声をワイアレスで送る、といったことが可能です。加えてBNC端子のタイム・コード入出力を装備しているので、録音した音声データを映像と同期させることができます。

記錄メディアはSD/SDHC/SDXGカードに対応。SDカード・スロット×2を用意し、バックアップ用として2枚同時に録音したり、1枚でch1~8を録りながらもう片方にMP3の2ミックスを保存することもできます。

フィールド・レコーダーで気になるところといえば電源。単三乾電池×8本、外部バッテリー、専用ACアダプターの3種類に対応しています。外部バッテリーの電圧が低下した場合は電池駆動に切り替わり、バッテリー交換後には再び外部バッテリーで駆動するので、外部バッテリーの交換中もレコーディングが中断することはありません。また、専用ACアダプターを使用することで、安定した電源供給が可能です。

ファームウェアのアップデートやコンピューターへのファイル転送などに使用するUSB 2.0端子も装備。USBでコンピューター(Mac/Windows)に接続することで最高24ビット/96kHzに対応する8イン/4アウトのオーディオI/Oとしても使用することができます。

さらに、Bluetooth接続でiOS用アプリのF8 Controlに接続することができます。F8 ControlはiPhoneやiPadでフロント・パネルと同等の操作とモニタリングが可能です。

次は気になる新機能を見ていきましょう。入力信号に1msのディレイをかけることでピーク・レベルの先読みをし、クリップを未然に防ぐAdvancedリミッター、入出力ライン・レベル+の4dBu対応、ヘッドフォン出力レベルのデジタル・ブースト、複数のマイクを使用しているときに音声が入力されていないインプット・ゲインを自動で減衰させるZOOMオート・ミックス、2枚のSDカードに同時録音しながらUSB出力でコンピューターにも録音ができるAudio Interface With Recなどが追加されました。

プリアンプはF8から同当のものを採用しており、50~100万円クラスのレコーダーに匹敵する品質です。セリフの録音でSN比を気にすることはほとんどなく、静かな環境では、インプット・ゲインを+60dBくらいまで上げても低ノイズかつ透明感のある音質で録音できます。等価入力ノイズが127dBuの超低ノイズ・フロアは、ポータブルのフィールド・レコーダー機としては最高水準と言えるでしょう。

▲左サイド・パネルは、左上より外部DC電源(HIROSE 4ピン)、USB 2.0、SDカード・スロット×2。下段にはマイク/ライン・インプット×4(XLR/TRSフォーン・コンボ)を装備する ▲左サイド・パネルは、左上より外部DC電源(HIROSE 4ピン)、USB 2.0、SDカード・スロット×2。下段にはマイク/ライン・インプット×4(XLR/TRSフォーン・コンボ)を装備する
▲右側のサイド・パネル。左上からサブアウト(ステレオ・ミニ)、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・フォーン)、メイン・アウトL/R(TA-3)。マイク/ライン・イン×4は、XLR/TRSフォーン・コンボを採用 ▲右側のサイド・パネル。左上からサブアウト(ステレオ・ミニ)、ヘッドフォン・アウト(ステレオ・フォーン)、メイン・アウトL/R(TA-3)。マイク/ライン・イン×4は、XLR/TRSフォーン・コンボを採用
▲リア・パネル。左上からACアダプターZOOM AD19専用のDCイン、タイム・コード入出力(BNC)、ZOOM製マイク・カプセル・イン(10ピン端子)。下部には単三電池×8本が入る ▲リア・パネル。左上からACアダプターZOOM AD19専用のDCイン、タイム・コード入出力(BNC)、ZOOM製マイク・カプセル・イン(10ピン端子)。下部には単三電池×8本が入る

M/Sの入力信号をステレオに変換して
メイン/サブ・アウトからの出力が可能に

ここからは使ってみて便利だと思った新機能について紹介していきます。まずはAdvancedリミッターについて。テレビ番組などの収録ではリハーサルの無いぶっつけ本番で、出演者が突然大きな声を発する場面にたびたび遭遇します。スタジオ収録ではアウトボードのリミッターやコンプレッサーを接続することができますが、野外では本体内蔵のリミッターが頼りです。実際にダイアログ(2人以上の対話)の収録で使用してみましたが、デフォルトで入っているプリセットを使用しても自然なかかり具合でレコーディングすることができました。コンプレッサー/リミッターの標準的な装備であるパラメーターはもちろん、ニー・タイプの変更など収録状況に合わせて細かく設定できる点もうれしいところです。ただし、サンプリング・レートを192kHzにしてレコーディングしてる際にはAdvancedリミッターを使用できません。

細かな点ですが、専用のミキサー型リモート・コントローラーF-Control FRC-8がUSBバス・パワーで使えるようになりました。私はF8N専用ケースに自作のフレームを付けてFRC-8をマウントし、移動しながらのミキシングを日常的に行っているのですが、FRC-8の電池切れを心配をしなくてよくなった点は非常に心強く感じています。

アウトプット関連も便利な機能が増えており、メイン/サブアウトからM/Sの入力信号をステレオに変換して出力できるようになりました。高音質なステレオやサラウンドなど、立体音響が求められるようになった昨今では貴重な機能と言えるでしょう。私の場合、収録現場によってはカメラにステレオ化した音声を送らなければならないこともあるので、ありがたい機能です。

収録現場からの要望を巧みに取り入れて、前モデルに増して使いやすい機能を多く搭載したF8N。コンパクトなボディでユーザー・フレンドリーな製品と言えるでしょう。

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サウンド&レコーディング・マガジン 2018年9月号より)

ZOOM
F8N
オープン・プライス(市場予想価格 :134,260円前後)
▪記録フォーマット:WAV、MP3 ▪ビット&レート:最高24ビット/192kHz ▪入力ゲイン:+10~+75dB(マイク)、−10~+55dB(ライン) ▪ノイズ:−127dBu以下 ▪周波数特性:10Hz~80kHz@サンプリング・レート192kHz ▪外形寸法:178.2(W)×54.3(H)×140.3(D)mm ▪重量:1.0kg(本体) ▪付属品:ACアダプター(AD-19)、STEINBERG Cubase LE&WaveLab LE(Mac/Windows対応)