
ステレオ2系統のメイン入出力を装備
クリアで低ノイズなサウンドのHM-800
1Uラック・サイズのHM-800はHM Seriesの中でも最も出力数が多い8chヘッドホン・アンプ。フロント・パネルに見えるのは2系統のメイン・ボリューム・ノブと1〜8のチャンネル・セクションだ。各チャンネル・セクションには、それぞれ独立したヘッドホン出力(ステレオ・フォーン)とレベル・コントロール・ノブが付いており、その左側には7セグメントのLEDメーターがある。LEDメーターは出力レベルに連動して反応し、その動きは滑らかでとても見やすい。
各チャンネル・セクションの上部にはステレオ/モノラルの切り替えスイッチと、メイン入力1と2の切り替えスイッチが付いており、これらのスイッチも赤やオレンジに点灯するようになっている。こちらも視認性が高く、フロント・パネル全体を見れば各チャンネルがどのような状態になっているかが一目で把握できる。
リア・パネルにはメイン入出力(TRSフォーンL/R)が2系統ずつあるほか、ch1〜8にそれぞれ対応したAUXイン(TRSフォーン)とヘッドホン出力(ステレオ・フォーン)が備わっている。フロント&リア・パネル合わせて、トータル16までのヘッドホン出力が可能だ。

なお、メイン入力1&2に流れる信号はすべてのチャンネルで聴くことができ、AUXインに流れる信号はそれぞれ対応するチャンネルのみで聴くことができる。これはバンドのレコーディングやライブ/リハーサルでのモニタリングにおいて、各パートそれぞれが異なるバランスの音源を聴く必要があるときに重宝する機能だろう。
さて肝心の音質の方だが、かなりクリアでノイズも少ない印象。力強い中低域を感じるが、原音を損なうような色付けは無い。ヘッドルームも大きくインピーダンスの高いヘッドホンでも適切な音量感で鳴らすことができそうだ。
操作性自体も非常にシンプルで分かりやすいため、バンド・メンバー全員で集まりミックスを確認する際など、それぞれのヘッドホンをHM-800へ接続して簡単にモニタリングすることができる。また、あらかじめ複数のヘッドホンやイヤホンなどをつないでおき、一つの音源を異なったモニタリング環境で聴き比べたりするときなどにも活用できるだろう。
ステレオ/モノ切り替えスイッチや
高域と低域のEQを搭載したHM-400
次にHM-400だが、こちらは1Uラック・サイズの4chヘッドホン・アンプ。フロント・パネルにはステレオ・メイン入力(ステレオ・フォーン)が1つとメイン・レベルのコントロール・ノブ、1〜4のチャンネル・セクションを搭載している。HM-800の単なる下位モデルというわけではなさそうだ。
各チャンネル・セクションにはヘッドホン出力(ステレオ・フォーン)やAUXイン(TRSフォーン)、ステレオ/モノの切り替えスイッチ(“2ch”と表記)、L/Rが独立したミュート・スイッチが備えられている。さらにAUXインとメイン入力のミックス・バランスを調整できるバランス・ノブ、チャンネルのレベル・コントロール・ノブ、低域/高域のEQノブをそれぞれ設置。AUXインがフロント・パネルに付いているため、入力ソースの差し替えが容易に行えるだろう。低域/高域のEQノブも各チャンネルに装備しているので好みの音質に調整することも可能である。
リア・パネルではメイン入出力(XLR&TRSフォーンL/R)や、ch1〜4それぞれに2つのヘッドホン出力(ステレオ・フォーン)を採用。各チャンネルは最大3つのスタジオ・ヘッドホン出力ができ、トータルとしては最大12個までのステレオ・ヘッドホン出力が可能だ。

HM-400は厳密なモニタリングとしてだけではなく、キュー・システムが無いレコーディングやライブなどの現場においても大いに活用できる可能性を持っている。HM-800と比べてチャンネル数は少ないが、より柔軟な使い方ができる高機能なヘッドホン・アンプという印象だ。
今回はレビューできなかったが、最後にHM Series3製品の中で最もコンパクトなHM-4についても触れておこう。こちらは1系統のメイン入力と4つのヘッドホン出力(いずれもステレオ・フォーン)を持つ小型ヘッドホン・アンプ。本体に付いているボリューム・ノブで各チャンネルのレベル・コントロールができ、ACアダプターをつないで使用する。気軽に持ち運べるサイズのため、移動先で複数人と作業する際などに役立つだろう。


ここまでHM Seriesを紹介してきたが、HM-800とHM-400を使ってみて一貫して言えることは、本体の作りがとても頑丈だという点だ。製品の謳い文句でもある“戦車級に頑丈な”設計をしっかり感じることができた。また、価格帯が良心的なので、宅録をしているクリエイターやミュージシャンたちでも求めやすくてうれしい。もちろん音質も高品質なので本格的なレコーディング環境に導入しても十分であろう。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2018年9月号より)