
サンプリング周波数は250Hz〜30kHz
滑らかな質感のフィルター
まず、画面上部分から見ていきましょう。最上段左端にあるDRIVEノブでは入力ゲインの調整が可能です。このとき信号が一定のレベルを超えクリッピングすると、左下にある丸いBYPASSボタンが赤く点灯して知らせてくれます。もちろんBYPASSボタンでは、すべてのエフェクトをバイパスさせることが可能。DRIVEノブの隣にあるNAKEDノブは、エフェクトのかかっていないドライ信号のミックス量をコントロールでき、DRESSEDノブはエフェクト処理されたウェット信号のミックス量を調整することができます。
DRIVEノブとNAKEDノブの中間に位置するCLOCKノブは、サンプリング周波数を250Hz〜30kHzの範囲で可変させ、ビット・クラッシャー特有のざらついたローファイ・サウンドを与えることが可能。サンプリング周波数の変化に合わせて音のニュアンスもかなり変わるのですが、幅広いサンプリング周波数で調整できるのもうれしいところですね。
画面右端にある丸いFILTERボタンを押すとフィルターの種類を選択でき、左隣にあるFREQノブでカットオフ周波数を設定、FREQノブの右上にあるQノブでレゾナンスを調整します。フィルターの種類は3タイプあり、FILTERボタンが緑色のときはローパス・フィルター、赤色のときはハイパス・フィルター、黄色のときはバンドパス・フィルターが使用可能です。ほかの製品のフィルターと比べると、Oto Biscuitに搭載されているフィルターは耳に痛い帯域をケアするような、滑らかな質感が印象的でした。
画面上部分の中央に位置する丸いBRAINボタンは、エフェクト・セクション(画面下部分)のオン/オフを切り替えるボタン。そのBRAINボタンの下段に並ぶ8つの四角いボタンは、Oto Biscuitを通過するオーディオ・ストリームの8つのビットをミュート/反転させることができます。ボタンが白色に点灯しているときはビットがオン、赤色のときは反転、消灯しているときはミュートされているという設定です。
一番右端にはMSB(最上位ビット)ボタンがあり、サウンドをより大きく変化させることが可能。CLOCKノブを回して付与できるビット・クラッシュとはまた一味違った効果を与えることができます。“人の叫び声”のような効果も演出でき、いろいろ試してみると面白いでしょう。
4種類のエフェクトも内蔵
ライブでも実用可能な操作性
エフェクト・セクションの最下段には、それぞれウェーブシェイパー/ディレイ/ピッチ・シフター/ステップ・フィルターを内蔵した4つのエフェクト・ボタンがあります。その右側には、ディレイ/ステップ・フィルターのテンポをDAWのテンポと同期させるDAW TEMPOボタンや、タップ・テンポが可能なTEMPO TAPボタンが配置されています。
エフェクト・セクションの右側には、各エフェクトの細かい設定を行う4つのノブを装備。ウェーブシェイパーでは8種類のモードを選択でき、ピッチ・シフターでは−2〜+1オクターブ間での設定が可能です。ステップ・フィルターは最大8ステップのシーケンサーを内蔵し、ステップごとにフィルターの種類/カットオフ周波数/Q値を設定できます。リズミカルかつクリエイティブに変化させることができ、どのエフェクトもビット・クラッシャーと相性抜群だと言えるでしょう。

ここまでOto Biscuitを駆け足で見てきましたが、このプラグインを最大限に生かせそうなサウンドは、やはりブレイクビーツをはじめとしたビートでしょうか。Oto Biscuitは、アナログ感のある音を一瞬にしてデジタル感のあるサウンドに変化させることができるので、エイフェックス・ツインなどを連想させるテクノやIDM、エレクトロニカなどのビート・メイキングをするにはもってこいのプラグインだと思います。
もしくは、1980年代のゲーム・サウンドのようなチップチューン風の音楽製作などにも活用できるでしょう。思い切ってマスターに挿して楽曲全体にローファイ感を加えてみても良いと思います。また、アナログ・サウンドが中心のセッションで“この音だけは強調したい!”というときに、そのトラックにだけ薄くかけるというテクニックなど、アイディア次第ではたくさんの使い方が考えられますね。
最後にOto Biscuitを触っている際に気が付いたことなのですが、Shiftキーを押しながらNAKEDノブを回すとDRESSEDノブがそれと反対方向へ回転したり、Shiftキーを押しながらCLOCKノブを回すとフィルターのFREQノブも同じ方向に回ったり、8つの四角いボタンを一度にまとめてコントロールできたりと、ライブ・パフォーマンスをする際にかなり便利な操作性となっています。触っているだけでとても楽しくなりました! 20日間フル機能を利用できるデモ版もあるで、ぜひ一度ダウンロードしてみてはいかがでしょうか。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2018年9月号より)