「THREE-BODY TECH Heavier 7 Strings」製品レビュー:サウンドのリアリティを突き詰めたヘビー・メタル特化のギター音源

THREE-BODY TECHHeavier 7 Strings
昨今、低音弦を足した7弦ギターのような多弦ギターは需要増加の傾向にあると言えますが、通常のギターのプレイヤーにとっては似て非なる楽器であり、演奏に慣れるためには少々時間が必要です。他方、楽曲制作の現場では迅速にリアリティある“ヘビー・サウンド”を提示しなければならないコンポーザー/エンジニアの方も多いことでしょう。ここでレビューするTHREE-BODY TECH Heavier 7 Stringsは“多弦ギターの奏者ではないが、リアルさを伴ったヘビーなギター・サウンドで楽曲を構築したい”という方々のニーズに応える、素晴らしいギター音源です。

独自のプレーヤーとエンジンを採用
実際の弦の挙動まで細かくシミュレート

Heavier 7 Stringsは、Mac/Windowsに対応した7弦ギターの音源です。ヘビー・メタルに特化しており、音源方式はサンプル・プレイバック(24ビット/48kHzサンプル)を採用。スタンドアローンのほかAAX Native/AU/VSTプラグインとして動作します(APPLE Logicについては、Logic Pro X以上のみプラグイン動作に対応します)。最大16個のラウンドロビン・サンプルを独自開発のサンプル・プレーヤーとエンジンで扱い、トーンとボリューム・エンベロープをランダムに変化させることで、自然さとリアリティを演出しています。

操作に関しては、トーン・コントロール・ノブとピックアップ・セレクターが画面右にあり、実機さながらのコントロールが可能。ギター音源として画期的なのは、弦のテンションを変えられる機能です。これによりFENDER Telecasterを思わせるアタッキーなトーンから、FLOYD ROSEのトレモロ・ユニットを備えるギターのような緩めのテンション感まで、用途に合わせて演出できます。また、ギター演奏ならではのハンマリング・オン/プリング・オフ、レガートやビブラート、ハーモニクスといったアーティキュレーションをMIDIキーボード上のキー・スイッチで扱うことも可能です。

内蔵のエフェクトについては、19種類のギター用エフェクトや、古今東西の代表的なアンプ・ヘッドを模した16種類のシミュレーターがスタンバイ。さらに、キャビネットの音をマイクで収めたときに得られる空気感を66種類のIR(インパルス・レスポンス)として収録し、一度に最大4種類のIRをミックスして音作りすることができます。また160種類以上のMIDIパターンも備え、まさに曲作りの即戦力です。

音色をチェックしてみると、とりわけ低音弦の響き方が秀逸で、音の立ち上がりと減衰の仕方、振動する弦がかすかにフレットに当たる感じなど、リアルさにあふれています。プレーン弦(高音側の弦)と巻き弦(低音側の弦)の差なども音色に反映されており、単にピッチを上げ下げしただけの音源とは一線を画す仕上がりです。

多くのメタル・ギタリストはソロをプレイする際、ピッキング・ノイズを抑えて実音を強調するためにフロント・ピックアップを選択する傾向にあります。Heavier 7 Stringsのピックアップ・セレクターをフロントにしてみると、実際にフロント・ピックアップで演奏したときの感じがリアルに再現されます。より現実味を表現したい方にお勧めしたい操作です。トーン・ノブは、いわゆるローパス・フィルターとなっています。筆者は実際のギター演奏で深いひずみをかける際、ノイズを抑えるためにわずかにトーン・ノブを絞るのですが、このソフトでは同様の効果を得られるので気に入っています。

IRは4種類の有名マイクで収録
ひずみだけでなくクリーン・トーンも秀逸

さて、実際のギター録りではキャビネットの音をマイクで収めることになりますので、この手のギター音源においてキャビネットとマイクのシミュレーション機能は必要不可欠です。同じアンプ・ヘッドでも、キャビネットの種類やマイクの位置を変えるとガラリとキャラクターが変わります。Heavier 7 Stringsは、詳細に設定できるマイク・シミュレーターなどを備えていませんが、有名なマイク4種類をさまざまなポジション(キャビネットから近い/遠い/キャビネットの横/それらのミックス)に立てて収録したIRで音作りできます。先述の通り同時に最大4つのIRをブレンドすることができるので、ベスト・チョイスにたどり着くにはそれなりの根気が必要でしょうが、必ず好みのトーンが見つかると思います。

▲内蔵のギター用エフェクト、アンプ・シミュレーター、キャビネット・シミュレーター。キャビネット・シミュレーターは大きく4つのセクションに分かれており、それぞれに異なるIRをロードをできる。またボリュームやパン、ディレイ(発音タイミング)、位相反転なども個別にコントロール可能だ ▲内蔵のギター用エフェクト、アンプ・シミュレーター、キャビネット・シミュレーター。キャビネット・シミュレーターは大きく4つのセクションに分かれており、それぞれに異なるIRをロードをできる。またボリュームやパン、ディレイ(発音タイミング)、位相反転なども個別にコントロール可能だ

アンプについては、単体でも深いひずみをかけられるものの、前段にひずみ系エフェクトを設置することで、より過激なトーンの演出も可能。1980年代より人気のあるIBANEZ Tube Screamer系のディストーションが備わっているところは非常にポイントが高いです。

ヘビーさが最大の売りのHeavier 7 Stringsですが、 クリーン・トーンも魅力的。ピックアップ・セレクターを“MIX”にして、アンプをクリーン・セッティングにすれば実に美しいクリーン・トーンが堪能できます。また先ほど書いた通り、弦のテンションをコントロールできるので、数値を100%に設定すれば張りのあるトーンが得られます。エレキギターならではのクリーン・トーンが欲しいときこそ、Heavier 7 Stringsの出番と言えるかもしれません。

音の素性の良さに加え、エフェクト類が多数搭載されているHeavier 7 Strings。コスト・パフォーマンスは極めて高いと言えるでしょう。手に入れたその日から、リアルでヘビーなギター・サウンドを楽しめること間違いなしのソフトです。

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サウンド&レコーディング・マガジン 2018年5月号より)

THREE-BODY TECH
Heavier 7 Strings
27,340円(価格は為替相場によって変動)
【REQUIREMENTS】 ▪Mac:OS X 10.9〜10.13(64ビット版のみ対応)、INTEL Core 2 Duo E7500より上位でSSE4以上対応のCPU ▪Windows:Windows 7/8/10(いずれも32/64ビットに対応)、Core 2 Duo E7500もしくはAMD Phenom(X4、X3)より上位でSSE4以上対応のCPU▪共通項目:4GB以上のRAM、10GBのハード・ドライブ空き容量