24ステップ・ボリューム・コントロール・ノブ
MUTE/DIM/MONOスイッチ搭載
UI24RのインプットはXLR/TRSフォーン・コンボ端子が10ch、XLRが10ch、RCAピンが2ch、USBでのステレオで計24ch。アウトプットはメインL/Rと、AUX/マトリクスを自由に切り替えられる8系統の合計10chとなっている。
手持ちの端末を接続して、まずは説明書を見ずに操作を始めてみた。各チャンネルのEDITをタッチすると、EQをはじめコンプ/ゲート/エフェクトの操作は、すべてツマミではなくフェーダーになっている。タッチ・パネルでの操作が考えられていて、ツマミやタッチでのドラッグに比べて圧倒的に使いやすい。またAUXのプリ/ポスト切り替えも個別に可能。ch1と2はHi-Z対応で、DIGITECHのギター・アンプ・シミュレーターも搭載されている。そのほかに20の入力があるので、ベース、ギター、ドラム、キーボード、コーラス、ボーカルくらいの規模のバンドPAはできてしまう。
AUXやマスターにパラメトリックEQは装備されていないが、その代わりにDBXのAFS2というハウリング・サプレッサーが搭載されている。調整している周波数とゲインが表示されていて、ロスなくカットできたので、チョイスしてみるのもいい。またグラフィックEQがすべてのアウトに標準で搭載されているので、外部機器に頼ることもなさそうだ。
また画面右側にはタップ・テンポと、MUTE GROUP、MUTE ALL、MUTE FXなどがまとまっている。後からこうした機能をアサインするものは多いが、最初からあるのはありがたい。また、“MORE ME”という、自分の音量と、それ以外のレベルをフェーダー2つで調整する機能があり、キュー・ボックスのような使い方も簡単な設定でできる。
一方で本体にあるノブはヘッドフォンとマスターのレベルだけであるが、それだけは欲しいものでもある。このような現場のニーズを反映した機能には感心させられる。
タブレットとのWi-Fi接続は内蔵ルーターで行う。Wi-Fiは途切れることへの不安が大きいものだが、本体にアンテナを2本つけているところ、2.4GHz帯に加えて5.2GHz帯に対応していることなどから、そういった現場の声も反映していることが伺える。客席数500のホールの隅々で問題が無いのは当然かと思うが、一度扉を出てホワイエでもしばらくは通信可能。その後切断されたが、ホール内に入った瞬間に操作可能に戻った。一度切れると接続までの時間はそこそこかかるものかと思っていたが、これは驚きである。2階席のサウンド・コントロールなどがスムーズにできてありがたい。また見通しのそれほど良くない場所でも試したが、30m近くは通信できた。見通しのいいところでは、100m近くが可能という情報もあるので心強い。Wi-Fiだけでなくコンピューターを有線でつないでおくこともできるので、もはや万全である。
またIPアドレスなどの設定が必要無いのもユーザーにはありがたい。手持ちのAPPLE iPad×2台、iPhone×2台とUSB接続のコンピューター×1台、そのすべてで使えるようになるまでに面倒な手続きは一切無く、数分でできてしまった。同時に10台までの端末をつなげられるし、すべてで独立した操作ができるので、複数端末でインプットとアウトプット、グラフィックEQなどを同時に表示しておくことも可能。アナログ卓のようにすべてを一覧しながらの操作が行える。タッチ・パネルではあるが、フェーダーの同時操作も十分に可能なことも実証できた。
ナチュラルで透明感のあるサウンド
色付け無くオールマイティに使える
ホールのステージに設置して、ソースとマイクでチェックしてみた。ほかのコンソールと比べた印象は、アグレッシブというよりは、品の良さが感じられる音。EQに関しても同様の印象だった。滑らかな音色に感じたのはSTUDER製ヘッド・アンプによるところかもしれない。EQ時のロスもそれほど多くなく、トータルのグラフィックEQの効き具合も滑らかに感じた。
次にバンドのマルチトラック音源を使ってミックスを試みた。ゲートやコンプなどアクセスが煩雑だと、ついつい省略してしまうことが多いが、思ったようにいけるし、RTAも的確に表示してくれるのでEQを決めるのもスピーディにできた。頭で考えたことからのアクセスのスピードはエンジニアにとって最も大事なことだと思うが、その要求を満たしてくれる。
また、USBストレージに、ステレオ・アウトも含めた24trを16/24ビット/48kHzのWAV/FLACでマルチ録音することも可能。逆にSoundCheckというモードにすると、マルチのWAVをそのままチャンネルに立ち上げることも簡単だ。
ヘッドフォン・モニターさえ工夫すれば、本体をステージに置くか、客席にするかを選択できるというのは画期的で、ついにこのような時代になったかという感がある。ステージにUI24Rを置き、タブレット操作によってPAができてしまえば、場所は全く取らないし、イーサーネット・ケーブルすら引く必要が無い。なじみのミュージシャンであれば、手持ちの端末でモニターを操作してもらってもいい。ある意味で、ミュージシャンとエンジニアの垣根を無くす画期的な製品かもしれない。大勢でコントロールできるということは、トラブルの元になる懸念もあるので、ルールはしっかりと決めておいた方が良さそうだが、これだけの機能が詰まってこの大きさなのは驚くばかりだ。中小規模のスペースで多く活躍できるであろう製品である。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2018年4月号より)