
Hi-Z入力も可能な2イン/2アウト
入力部はダイレクト・モニタリングに対応
USBオーディオI/OのOnyxシリーズは、最高24ビット/192kHz対応、USB 2.0接続、USBバス・パワー電源駆動という仕様です。前シリーズのデスクトップ・モデルOnyx・Blackjackが最高24ビット/48kHzでUSB 1.1接続だったので、満を持してのリニューアルと言えるでしょう。
新しいOnyxシリーズはOnyx Producer 2・2とOnyx Artist 1・2という2種類があります。両機とも2イン/2アウトの入出力仕様ですが、Onyx Producer 2・2はOnyxマイクプリを2基、Onyx Artist 1・2は1基備えています。普段のマイク録音はボーカルだけ、というユーザーはOnyx Artist 1・2で十分と言えるでしょう。また、Onyx Producer 2・2のみMIDIの入出力を備えているので、MIDI端子が必要な方はこちらを選択するとよいと思います。


さらに、両機にはTRACKTION T7というDAWと同社のDAW Essentials Collectionというプラグイン・エフェクト集がバンドルされていて、購入後すぐに音楽制作が行えるという非常にお得な製品構成となっています。

低域がもっちりと太く立体感のある
やや落ち着いたブリティッシュ系サウンド
さて、音質検証に移りましょう。実は過去に何台ものコンパクト・ミキサーを並べて比較するというサンレコの特集を担当し、そのときにMACKIE.のOnyxマイク・プリアンプの音がとても良くて気に入った経験があります。Onyx Producer 2・2にその音質が受け継がれているのか、同価格帯の他社製オーディオI/Oと比較してみました。
まずは再生音の検証です。CD音源や自分の作品のWAVファイルを同じDAWを使って再生したところ、Onyx Producer 2・2はやや落ち着いたブリティッシュ・サウンドの印象を受けました。まさにOnyxサウンドと言えるものです。他社製のオーディオI/Oに比べて明らかに低域がもっちりと太く、だからと言って抜けが悪いということはありません。中低域の音の立ち上がりをしっかり表現できているので、立体感が素晴らしいです。同じ音源を聴いていても他社製の音質はちょっとつぶれて柔らかく、音の立ち上がりにぼんやりとした“ボケ感”がありました。
続いて、スタジオ定番のコンデンサー・マイクを使用して録音の検証を行いました。まずは48kHzで録音。ファイルを書き出し、DAWに並べて同条件で比較したところ、Onyx Producer 2・2はやはり立体感のある太い音です。再生のときと同じく、他社製のオーディオI/Oは若干つぶれて感じてしまうほど。Onyxマイク・プリアンプ恐るべしです。
今度はOnyx Producer 2・2のサンプリング・レートを変えて録音してみると、96kHzではより音が立体感を増して大きな音像に聴こえました。48kHzで十分だと思った音も、96kHzでは上と下の帯域にまだこんなに“伸びしろ”があったのかと気付かされます。暗めな印象を感じた高音域もグンと伸びて、ボーカルの息遣いが鮮明になりました。192kHzではさらに中低域の立体感を増して音像がスピーカーからせり出てきて驚きです。これを聴いてしまうと、96kHzの音が若干凹レンズを通して見ているような印象にさえ思えます。
Onyx Producer 2・2はこれまで私が所有してきた同価格帯のオーディオI/Oの中で頭一つも二つも抜きん出ている印象でした。音質重視の方にも間違い無くお勧めできる1台と言えるでしょう。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2018年3月号より)