
ホーン・ロード型リボン・ツィーターと
アルミ合金コーンのウーファーを搭載
A200のスピーカー構成は2ウェイで、ユニットはいずれも自社で製造されています。高域にはホーン・ロード型のアルミ・リボン・ツィーターを備え、強力なネオジム・マグネットとそれに見合ったトランスを組み合わせることで、感度の高さやレスポンスの速さ、再生周波数帯域の広さを確保。繊細かつダイナミックな表現力を特徴としています。低域はアルミ合金コーンの5.5インチ径ウーファーを採用。こちらにもネオジム・マグネットを使用し、それでボイス・コイル全体を覆うように設計。一般的なスピーカーよりもはるかに大きな磁場を使うことで、高調波/相互変調ひずみを抑えています。
これらのユニットは、個別のクラスDパワー・アンプでバイアンプ駆動されます。また電源部についても、各アンプへ個別に電源供給するクローズド・ループ構成を採っており、ひずみを抑えたクリアな音質が特徴。エンクロージャーは25mm厚のMDF(中密度繊維板)を使用しており、内部にはエンクロージャーを強化するためのブレーシングや不要な共振を抑える36mm厚の吸音材が使われています。
さて、通常このようなアクティブ・スピーカーは左右の各エンクロージャーに音声入力や音量のコントロールなどを持ちますが、本機ではRchのリア・パネルに両チャンネルの入力とコントロールが集約されています。電源端子もRch側にしかなく、Lch側と付属の専用ケーブルでつなぐことによりコントロールも電源もリンクする仕様です。
次に音声入力を見ていきましょう。XLRのメイン・インL/RとRCAピンのAUXインL/Rのほか、オプティカルとコアキシャルのデジタル・イン、それからBluetoothに対応しています。2つのデジタル・インは共に最高24ビット/192kHzに対応。BluetoothはBluetooth 4.0に対応しており、高音質で低遅延のaptXコーデックもサポートしています。
コントロールについては、ボリューム/インプット、ベース(低域EQ)、トレブル(高域EQ)の3つのノブを装備。ボリューム/インプットは音量調整に加え、プッシュで入力の切り替えや長押しによるBluetooth接続の解除が行えます。再度Bluetooth接続する場合は、Bluetoothモードに設定しデバイスを選択するだけです。ベースはシェルビング型のEQで、周波数ポイントは90Hz、ゲイン幅は±6dB。トレブルもシェルビング型となっており、8kHzから上を±3dBの範囲で調整できます。劇的に音を変えるものではなく補正のためのEQです。

音楽全体の立体感がよく分かり
リバーブやコンプの効果が見えやすい
まずは筆者の環境で、普段GENELEC 1031Aを乗せているスタンドにA200を置き、XLRのメイン・インにモニター・コントローラーのアウトを接続。自らレコーディングからミックス、マスタリングまでを手掛けたCDを聴いてみます。リボン・ツィーターの繊細な高域が非常に心地良く、生ドラムのハイハットやライドのカップの音も嫌な硬さや作為的で耳に痛い感じが全くありません。かと言って高域が物足りないわけではなく、自然に伸びているといった感じです。ツィーターとウーファーのつながりも非常にスムーズで、帯域ごとのバラつきも気にならず、バランスの良い音と言えるでしょう。バイアンプ駆動なので、L/Rの分離もクッキリとしています。
一番印象的なのは、音楽全体の立体感が非常に見えやすいこと。リバーブの奥行きや広がりがとても分かりやすく、リバーブの種類の違いも明確になるため、よりソースに合った選択が行えるでしょう。この立体感が何より気持ち良く、定位などの“置き場所”も容易に決めることができそうです。
そこで実際に、A200を使ってイチからミックスをしてみると、コンプのかかり具合が非常に分かりやすいことにも気付きました。特に“かかり始めるタイミング”と“深さ”が判断しやすく、アタック・タイムをスムーズに設定できます。ただし、リアにバスレフ・ポートがあるため低域はどうしても作られた音に聴こえ、ソース本来の音なのかどうかを判断するのが難しいかもしれません。特にROLAND TR-909系のキックは輪郭が見えにくく、EQするにはある程度の“読み”が必要になるでしょう。とは言えにじんでいるわけではないので、ベース・ラインなどはしっかりと聴こえます。低域が気になる場合は、ベース・ノブでカットすればある程度緩和することができます。
A200には、別売りで専用のスタンドST-200(オープン・プライス:市場予想価格18,000円前後)が用意されています。それをリビングのテレビの両脇に設置し、A200を乗せて筆者がミックスを手掛けたライブ・ビデオ(Blu-ray)を見てみました。やはりサウンドの奥行きが非常に心地良く、会場の雰囲気を立体的に表現してくれます。そして小さい音でも、それなりに大きな音で鳴らしてもミックス・バランスの印象が変わりません。こうしたところからも、A200がスタジオ・モニターとして“使える”ことが証明されていると感じます。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2018年3月号より)