
フレキシブルな16chミックス・アウト
EQやコンプはさまざまなタイプを用意
まず簡単に構成を整理していこう。インプットはマイク対応の24ch+内部8ch。ミックス・バスは28chで、メインのステレオのほかサブグループ×4、ソロL/R、4系統へのエフェクト・センド、Aux/マトリクス/サブグループ用のFlexMixes×16ch。AVB(55イン/55アウト)やUSB(38イン/38アウト)での入出力にも対応する。
早速マイクとCDプレーヤーをつなぎ音を出してみた。チャンネルのコントロールはセンターにあるSelected Channelからだけでなく、その右のタッチ・パネルからもアクセスできるので、サウンド・チェックで操作に手こずることはなさそうだ。フェーダーもすべて表に出ているし、Auxのフリップも特に迷うことはない。Aux操作画面との違いは、Selectボタンのカラーで分かるので、慣れてしまえば戸惑うこともないだろう。
Auxのプリフェーダー/ポストフェーダー切り替えがアウトプット一括である点には注意が必要だが、通常のPAで使うことに特別支障はない。また、すべてのミックス・アウトがAux/サブグループ/マトリクスから選択できるので、モニター卓やPAのハウス卓、録音卓など、さまざまな用途での使用が容易だ。
また、本機のシーン・セーフ機能は細かくカスタマイズできるので、フェーダー設定のみシーンとして保存するといったことができるのは重宝する。
今回はマルチトラック・レコーダーからの24ch入力で、バンドの音を作ってみた。Fat Channelを駆使し、バスドラにはPassive EQとFET Compを使うことでファットかつクリアな音色が作れた。またボーカルには、Vintage EQとTube Compを組み合わせると、抜けが良く太い音色に。ピンポイントでカットするには通常のEQで十分だが、積極的な音作りにはこのような選択肢がありがたい。同価格帯の他社デジタル・コンソールとの音色の違いを比べてみたが、全体的にアグレッシブで前に出てくるという印象を受けた。
ミックス・アウトの音色は多少中域が強い傾向はあるものの、高域の伸びた幅広いレンジで、迫力あるサウンドが出てきた。グラフィックEQへのアクセスも、マスター・フェーダーのすぐ上にGEQボタンがあるので瞬時にコントロールが行える。
SDカードに録音したマルチトラックを
Studio Oneでそのまま展開可能に
デジタル・コンソールには欠かせない遠隔操作をチェック。APPLE iPadにアプリをインストールしてリモートを試みた。StudioLive 24とルーターをイーサーネット・ケーブルでつなぎ、Wi-Fi設定をしたら接続は簡単だ。とても情報量の多い画面なのでタッチ・ペンは必要かもしれないが、レベル・メーターも含め一覧できるメリットは大きい。画面上のツマミをタッチすると横フェーダーが現れる工夫も、操作がしやすく好感が持てた。またコンピューターとは有線でも接続可能。昨今のWi-Fi事情は厳しくて、リハーサルでは問題なくても本番になるとつながらないことがよく起こる。そんなとき、有線でつながったコンピューターからコントロールできることは、バックアップとしてとても助かる。
SDカードへのマルチ録音も試みたが、内蔵機能なので操作はいたって簡単。2トラック録音のような手軽さでマルチ録音/再生が行える。接続の変更も不要なのでリハーサルの再現などには便利だ。また付属するDAWソフトのStudio One 3 Artistも試してみた。コンソールがそのままUSBまたはAVB接続オーディオ・インターフェースになるので、ケーブル一本でStudioLive 24に入力された音をすべて取り込むことができる。フィジカル・コントローラーとしての使用も近日可能になるそうだ(Studio One 3ネイティブのほかHUI/MCUプロトコルにも対応)。SDカードへの録音の場合も、Studio One 3のソングが同時に保存され、StudioLive Series IIIで決めたトラック・アサインやEQ/コンプ、バランスなどが簡単にコンピューター上で再現できるようになるという。
昨今コンパクトなデジタル・ミキサーも多数登場し、録音機能も含めたものが多く登場しているが、オーディオ・インターフェースとPAオペレートが併用できるというメリットは大きい。ライブPAでの使用、そしてそのままマルチレコーディング、さらにStudio Oneでの編集からマスタリングまでをまとめて行えるメリットは大きい。こういう多面性を持った製品は同社の特徴とも言えよう。音楽制作の完結に必要十分なものを安価でそろえようとしたときの選択肢としてはベストかもしれない。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2018年1月号より)