「ACCUSONUS Regroover Pro」製品レビュー:2ミックスのドラム・サウンドを分離して再構築できるプラグイン

ACCUSONUSRegroover Pro
ブレイクビーツをキックやスネアなどの単体ごとに切り分け、元の素材の質感を生かしつつ打ち込み直し新たなパターンを作ったり、異なったBPMに当てはめることは、ヒップホップ創世記からずーっと僕らがやり続けてきた行為No.1。後に神かと仰いだPROPELLERHEAD ReCycle!時代や、アーメン・ブレイクから生まれたDE-FORCE The Amen(Windowsのみ)を活用した時代もありましたが、今や各社DAWでも同様のスライス可能な編集機能が付属している時代です。そんな今デビューするブレイクビーツを操るソフトって一体? 早速チェックしてみます。

楽器ごとをレイヤーするだけでなく
成分や質感でも分離可能

Regroover Proはブレイクビーツなどを単にスライスするのでなく、取り込んだ素材からキック、スネア、ハイハットなどを個別のトラック(レイヤー)にセパレートしてくれるツール! スライスだと1拍目頭のキックをセパレートしたところで一緒に混ざっているハイハットもそのまま、ハイハット付きのキックの単品素材が出来上がるにすぎません。しかし本ソフトは同タイミングで鳴っているキックとハイハットやキックとスネアを別レイヤーにセパレートしてくれる魔法の宝箱なんです! Mac/Windowsに対応し、AAX Native/AU/VSTに準拠しています。

まずはDAW上のインストゥルメント・トラックにインサート。実際にさまざまなブレイクビーツを放り込んでみました。アナライズ時間もあっという間に、キック/スネア/ハイハットといった個別のレイヤーにセパレートされ、PREVIEWボタンで各レイヤーのソロ聴きもできます(SYNCボタンでDAW上のBPMでの再生可能)。面白かったのが、多くのブレイクビーツで、楽器ごとのレイヤーだけでなく、キックのアタック成分と量感の成分やハイハットの量感的な部分とノイズ的な部分とが別レイヤーに分離されたこと。周波数帯域を検知/区別しレイヤーを整合しているのかと想像しましたが、多様な要素を持つブレイクビーツで試していくとそれだけでは言い切れない、AIとでも呼びたくなるような音楽的なセパレートをしてくれます。ドラムとコンガなど、パーカッションが混ざったブレイクビーツも、ドラムを単品化するだけでなくコンガを分けてくれましたし、ノイズ混じりのブレイクビーツでもそのノイズだけを切り取ったレイヤーを作ってくれ、その出来栄えに驚かされました。さらにレイヤーをセレクトし、右上のANALYSISにある、トランジェントを強調できるACTIVITYスライダーを使えば、さらなる倍音部分を加えてくれます。これが本ソフトの新しさの一つ。

またユニークなのが、切り分けたレイヤーの再生ポイントやループ・ポイントを自由に変えられる点(レイヤー内の選択部分の削除も可)。これが想像以上の楽しさで、例えばキックはオリジナル通りの2小節間を再生しているのに、スネアは2拍目の裏拍から4拍目の裏拍を、ハイハットは2小節目の4拍の1拍間だけを同じテンポで異なったループ・ポイントで再生させることができる! これが不思議なパターンでありつつも、一体感あるサウンドになるんです。ループ具合を変化させながら、想像もできない自然でユニークなパターン作りにハマること間違いありません。

各レイヤーはそれぞれMIDIノート・ナンバーに最初から割り振られているので(C3から半音ずつアップ)、鍵盤を弾きながらでも、ピアノロールで打ち込みながらでも、簡単に自分好みのパターンを生み出すことができます。これがRegroover Proの新しさの2つ目です。

波形の細かいエディットも可能な
4×4パッドを搭載

各レイヤーは、右側中段にあるEFFECTセクションでGATE/EQ/COMPの加工が可能。GATEではノリ自体を変化させることができるし、3バンドのEQの効き具合も上々で、オーバーコンプで音楽的なひずみ感を簡単に作ってくれるCOMPも好感触です。また右下には4×4のパッドが用意されており、レイヤー上のどの部分でもアサイン可能。全体をループさせながら、パッドにアサインした新たなスネアを打ちながら加えたり、スネアのレイヤー全体をミュートし、スネア自体を新たに打ち込み直すことも簡単にできます。さらに感心したのがEDITERページでパッドに振り分けたサンプルそれぞれの波形のトリミングや、エンベローブまで可変できること(画面①)。前後の音の処理から立ち上がりのニュアンスまで簡単にエディットすることができ、“この辺りよく分かってる!”と、感心しました。

スクリーンショット-2017-09-25-20.26.52 ▲画面① EDITORページ。こちらでは4×4パッドの割り当て、再生確認のほか、それぞれのエンベロープの調整、波形のエディットまで、細かな設定を施すことができる

Regroover Proは、こうして自由に作ったレイヤーやオリジナル・キット(これらはプロジェクトとして保存し別プロジェクトや別のDAWでの使用も可能)を使い、ブレイクビーツを使うすべてのクリエイターそれぞれに自分の手なりの作り方から離れた、かつブレイクビーツ自体の持っている新たなクリエイティビリティを発見させてくれる新鮮なツールと言えるでしょう。

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サウンド&レコーディング・マガジン 2017年10月号より)

ACCUSONUS
Regroover Pro
22,300円 (価格は為替レートによって変動)
REQUIREMENTS ▪対応OS:OS X 10.8以降、Windows 7以降 ▪対応フォーマット:AAX Native/AU/VST ▪共通項目:INTEL CPU、2GB以上のメモリー、250MB以上のハード・ディスク空き容量