「WAVES Brauer Motion」製品レビュー:多彩なモジュレーションを生成可能なステレオ・オート・パンナー

WAVESBrauer Motion
今回はコールドプレイやジョン・メイヤーをはじめ、数々のヒット作品を手掛け、グラミーを受賞したエンジニア、マイケル・ブラウアーがプロデュースするプラグインBrauer Motionを紹介します。Mac/Windowsで動作し、AU、VST、AAX NativeのほかスタンドアローンやSoundGridなどでも使用可能です。

4種類のLFOなどを設定できる
2系統のPANNERを用意

Brauer Motionはどのような効果のプラグインでしょうか? 画面からして予想がつくと思いますが、本プラグインはモジュレーション系の、ステレオ・オート・パンです。Brauer Motionを知る上での予備知識として、オート・パンは周波数の低い交流信号(LFO)を使用してパンの値を変調し、時間に伴って値を変化させることで、ステレオ音源であれば音像が左右に規則的に動く効果を生み出すもの。Brauer Motionが変調に使用できる波形の種類はサイン波、三角波、ノコギリ波、矩形波の4つで、サイン波や三角波では、左右のパンのピーク値の間を行き来するように変化し、音像は往復する形になります。ノコギリ波ではピークに達すると逆位相側にジャンプするので、結果音像の動きとして右→左といった一方通行になるのです。

画面を見ていきましょう。右側の球体は音像の動きを表示するエリアになっており、LFO波形の種類により音像を表す丸点が動くので、どのような音像変化が起きているか一目りょう然です。また画面上で、音像の変化するスタート地点と、変化のピーク値となるA地点&B地点を設定できます。

画面左側が設定パラメーターです。上にPANNER 1/2のタブがあり、まずここで入力された音声がPANNER 1/2と入力そのままのドライ信号の3つに分岐されます。以下は、PANNER 1/2それぞれで設定可能なパラメーターです。上に4つのモード・セレクトがあり、続いて音像の動きを決めるPATH TYPE、LFOの波形選択をするMODULATOR、MOD DELAYなどを設定。PATH TYPEは4種類から選べ、CLASSICは通常の音量バランスで平面的に音像が動き、CIRCLEは左右と同時に前後し、上から見ると音像が円を描く動きです。A地点とB地点を同じにして、LFO波形にノコギリを選ぶと音像がグルグルします。そしてTRIGGERでは、入力の音量が一定の大きさを超えたときだけエフェクトがかかるようにすることが可能。5種類のモードが用意されており、PANNERの動作をコントロールすることができます。

続くDYNAMICSは、DRIVE(ひずみの付加)とコンプレッサー、ローパス/ハイパス・フィルターを、信号経路に対して選んで設定します(画面①)。最下段のMOTION FILTERでは、PANNERの音像の位置により任意の周波数以上をシェルビングで増減可能。例えば音像がCENTERに来たときには1kHz以上をブーストし、SIDEに来たときにはカットされるように設定すると、音源がSIDEに行くほど遠ざかる効果を付加することができます。

▲画面① DYNAMICSの項目では、上にルーティングされる信号の選択項目があり、下にひずみを加えるDRIVE、コンプ、ハイパス/ローパス・フィルターを備えており、多様な音色変化を施すことができる ▲画面① DYNAMICSの項目では、上にルーティングされる信号の選択項目があり、下にひずみを加えるDRIVE、コンプ、ハイパス/ローパス・フィルターを備えており、多様な音色変化を施すことができる

PANNER 1/2を経た信号は最終的に画面右下のミキサーでバランスを取り出力される仕組み。ここで、PANNER 1/2をそれぞれ単体で聴くことができますし、ドライ信号を任意の音量で足すことも可能です。

著名エンジニアによる
即戦力プリセットを内蔵

プリセットを選び実際の音にかけてみました。ちなみにプリセットは、マイケル・ブラウアーはもちろん、デイブ・ペンサド、トニー・マセラッティなど名だたるエンジニアが作っています。ギター、シンセ、ドラム、効果音など、さまざまな音に使ってみましたが、“MHB String Mood 1 (SEND)”では、原音に対して立体的でランダム感のある揺らぎと、揺らぎに応じたひずみ感……というか倍音の変化が起こるため、かなり濃厚に音色が変化しました。試しにこのプリセットを使って、今手掛けている映像音楽用に、静かなサウンドトラック的なシンセ・ストリングスを作成してみました。まずベーシックなノコギリ波のシンセを入力し、DAWミキサーのインサートで前段にディレイとリバーブをかけ、Brauer Motionで揺らぎを付加。

後段にもさらにリバーブを足してみたのですが、オシレーターを重ねたのとはまた違った心地良い揺らぎとアナログ感あるシンセ・ストリングスを作ることができました。後段にリバーブを追加するとかなり気持ち良いことが分かったので、このプラグイン・チェインにエレキギターを入力してみました。前段にはさらにディストーションも付加し、PATH TYPEでCIRCLEを選んでグルグルさせて弾けば、アルペジオを繰り返すだけでもずっと遊んでいられるような、アンビエント感たっぷりの世界に浸ることができました。ほかにも、爆発系のFXの余韻だけを左右に逃して、センターにほかの音の空きを作ったり、もともと左右に位相が散らばったシンセ・パッドを上手にモノっぽくまとめつつ、別な揺らぎを付加してバランスを取るなど、

Brauer Motionを使うだけで、時間軸と音像の変化でバランスを取りつつ自分でもびっくりするくらい音をスラスラとレイヤーすることができました。Brauer Motionは今回のテストで手に取るまでは興味をあまり持っていなかったモジュレーション系エフェクトだったのですが、想像以上に効能があることが判明したことは大きな収穫です。今では自信を持ってオススメできると言えます。

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サウンド&レコーディング・マガジン 2017年10月号より)

WAVES
Brauer Motion
11,900円
REQUIREMENTS ▪対応OS:OS X 10.10.5〜10.12.4、Windows 7以降 ▪対応フォーマット:AU/VST/AAX Native/SoundGrid、スタンドアローン ▪共通項目:INTEL Core I3/I5/I7/Xeon、8GB以上のメモリー