
Midas Proマイク・プリアンプを搭載
WAVファイルでのレコーディングが可能
MR12/MR18の筐体は、軽量かつしっかりとした作りです。サイズはMR12が333(W)×95(H)×149(D)mmで、重さは2.9kg。MR18は333(W)×140(H)×149(D)mmで3.9kgと、非常にコンパクトで可搬性も高いです。この大きさならリュックなどに入れて簡単に持ち運びができますね。
フロント・パネルの端子を見ていきましょう。MR12の入力は、Midas Proマイク・プリアンプを搭載した4ch(XLR/フォーン・コンボ)とライン8ch(フォーン)を用意。ch11/12はHi-Zに対応しているので、エレキギターやベースを接続可能です。出力はメイン・アウト2ch(XLR)+AUXアウト2ch(フォーン)を装備しています。MR18の入力はMidas Proマイク・プリアンプを搭載した16ch(XLR/フォーン・コンボ)とライン2ch(フォーン)。出力はメイン・アウト2ch(XLR)+AUXアウト6ch(XLR)の計8chを装備しています。そのほか、後述するコンピューターから操作を行うときに有線接続できるイーサーネット端子やMIDI IN/OUT、USB端子も用意。USB端子に接続したストレージやコンピューターに非圧縮のWAVファイルでレコーディングができ、MR12は2ミックスのみ、MR18は18trマルチ録音に対応します。また、MR18にはULTRANET端子があり、BEHRINGER製CUEシステムなどの接続が可能です。
100バンドのリアルタイム・アナライザーで
音を視覚的にとらえてEQを調整
先述の通り、操作はiPad/Androidタブレット用アプリのM Airで行います(画面①)。セットアップは非常に簡単。タブレットのWi-Fi設定からMR12/MR18を選ぶだけで、アプリが認識してくれます。インターフェースは非常に分かりやすく、すぐ直感的に操作できました。

それでは実際にマイクをつないでプリアンプを試してみます。音の第一印象は低域から高域までバランスが良く、しっかりとした太めのサウンドです。これまでに培われたMIDAS製品の特徴を継承しているのでしょう。低域もしっかり出ており、それでいてよどまないキレの良い音だと感じました。40ビット浮動小数点のデジタル処理なので、低めの入力レベルでも解像度は良好です。
各チャンネルには4バンド・パラメトリックEQが備わっています(画面②)。EQには何と100バンドのリアルタイム・アナライザーを搭載。どの周波数がどれくらい出ているのか、音を視覚的にとらえながら細かく補正/調整が可能です。ハウリングにも素早く対応できますね。EQポイントを直接タッチする操作もできますが、筆者はQ幅を調節するときのピンチ・イン/アウトが苦手なので、ツマミをタッチして数値を見ながらコントロールできるのがうれしいです。コンプやゲートも各チャンネルにあり、マスター・アウトにはグラフィックEQ、パラメトリックEQが標準装備されています。

内蔵されているエフェクトは4系統あり、それぞれ60種類以上から選択して使用可能です。一般的なリバーブやディレイのほか、ビンテージのEQやコンプなどのモデリング、コーラス、フランジャー、エキサイター、マキシマイザー、ギター・アンプ・シミュレーターまで用意されています。MR18はマルチトラック録音/再生可能なので、ライブ・レコーディングし、内蔵されたエフェクトを使ってそのままミックス〜マスタリングまでできますね。その中の1つ“Dual Xtec EQ5”という、PULTEC MEQ-5を元に作られたEQを使用してみました。高域と低域をブーストしてゲインを上げていくと、まさに真空管のひずみ方をしてくれます。“うーん、うまく作られているな”とうなってしまうほどの出来。これは使えますね。
また、グラフィックEQをチャンネルにインサートできるのがありがたいです。ピン・マイクや多数のスピーチ用マイクを使う際、会場によってはパラメトリックEQだけでハウリングを抑えきれず、十分なゲインを得られない場合があります。そういうときにグラフィックEQをインサートすれば、ハウリング・ポイントをより繊細にカットすることが可能です。それに加え、会議などのスピーチ現場で強力なアシストをしてくれるのが、MR12/MR18に備わっているオートマチック・ミキサー機能。会議などで複数のマイクを使用するときに話している人を自動的に検知し、各チャンネルのゲインとトータル・ゲインを自動的に調整してくれます。
コンピューター用ソフトM Air Edit
1画面でチャンネル全体を把握できる
MR12/MR18はiPadやAndroidタブレットだけでなく、Mac/Windows/Linuxからのコントロールにも対応しています。そこで筆者のMacに専用ソフトウェアのM Air Editをインストールしてみました(画面③)。MR12/MR18は内蔵のWi-Fiルーターを使用してワイアレス接続する場合、最大4台の端末で操作可能になっています。今回はiPadとMacの両方からコントロールしてみました。M Air Editのインターフェースはタブレット用アプリとはかなり見た目が違います。よりシンプルに、1画面でチャンネル全体の状況が見えやすいインターフェイスになっていますね。タブレット用アプリはかなり完成度が高いのですが、画面の大きさの制約上、チャンネル全体の状態がどうなっているのか少し把握しづらい部分があります。タブレットでの操作に加え、コンピューターでM Air Editの画面を見ながら操作すると、より快適にミックスができました。タブレットよりコンピューターで操作する方がやりやすいという方もいらっしゃると思いますし、対応プラットフォームが多いと言うのは大きなメリットだと思います。

MR12/MR18は、非常にコンパクトなサイズにWi-Fiルーター、40ビット浮動小数点で動作するデジタル・プロセッサーを搭載し、ミックスに必要不可欠なエフェクト、EQの種類も豊富に内蔵しています。さらにスピーチなどでの現場で強力にアシストしてくれる機能も用意。専用アプリ/ソフトのプラットフォームも多く、オールラウンドに活躍してくれるコンパクト・デジタル・ミキサーだと感じました。
撮影:川村容一
(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年10月号より)