
スタンドアローンだけでなく
一部機能はプラグインで動作
本製品は、機能の数によって、Elements(オープン・プライス:市場予想価格16,000円前後)、Standard(オープン・プライス:市場予想価格42,000円前後)、Advancedと3つのバージョンがあります。価格も異なりますので、どの機能が欲しいかによって選ぶと良いでしょう。実際に使ってみた感想としては、音楽制作におけるノイズ系の除去であればStandardは欲しいところです。すべての機能を使えるAdvancedは、Dialogue Isolateや風の音を軽減するDe-wind、空気感を合わせるAmbience Matchなど、映像系のポストプロダクションでは特に威力を発揮するでしょう。
本製品は基本的には、Mac/Windowsで動作するスタンドアローンのソフトウェア。WAVファイルなどを直接編集するのであれば、DAWを立ち上げなくても作業できます。スタンドアローンの機能の中から、より使用頻度の多い処理を、AAX/AudioSuite DPM/AU/RTAS/VSTのプラグインとして使うことができます。音楽制作においては、処理できる機能は限られていますが、気軽にDAW上で使えるのはうれしいところでしょう。また、スタンドアローンのすべての機能をDAW上で使いたい場合は、DAWとRX 6アプリケーションを両方立ち上げて、DAWからRX 6 Connectを介してRX6にオーディオを送り、処理をしてDAWに戻すというやり方も可能です。このとき、RX Monitarプラグインを使えば、RX 6で処理している音をDAW内で聴くこともできます(画面①)。

音楽制作で特に気を遣う
ボーカル処理の機能を追加
今回のアップグレードでは、音楽制作において一番気を遣うボーカル処理の機能が増えました。ディエッサーの“De-ess”、口の“ペチ”や“クチャ”という音を取る“Mouth De-click”、ブレスの音量を調整できる“Breath Control”です。Breath Controlのみプラグイン版はありませんが、しっかりノイズを取ってくれ好印象です。
では実際にPro ToolsとRX 6を使って、処理をしてみましょう。まずボーカルの波形にノイズが乗っていた場合。波形を選択してAudioSuiteからMouth De-clickを選び、RENDERするだけで奇麗に消すことができました。さすが声に特化したMouth De-clickだけあって、今までのDe-clickより使いやすくなっています。
次にアコギで、フレット・ノイズが大きくなってしまった場合です。ここでは“SpectralRepair”を使いたいので、RX Connectを使ってRX 6にオーディオを送ります。そしてフレット・ノイズの部分のみ選択し処理すると、ノイズが軽減され良いバランスになりました。SpectralRepairは消したい部分のみを選択することで、ほかには影響せずにピンポイントでノイズを処理できます。この処理は、ライブのアンビエンスの中から突発的な客の声を軽減したり、宅録で救急車のサイレンが入ってしまったなど、特定の帯域だけ消したというときに非常に有効です。また、これもよくありますが、宅録でレベルを大きく録音してしまってひずみっぽくなってしまった場合。そんなときは“DeClip”を使えばひずみ感を軽減できます。これは2ミックスでも有効です。デジタル環境で中域が張っている音源の場合、レベルを突っ込むと数カ所でひずんでしまうことがありますが、DeClipなら、全体のレベルをあまり落とさずにひずみを軽減できるので、マスタリングでも活用されているのです。
ほかにも、シンセのシーケンス音の高域でアタックが強過ぎるときや、ライブの拍手がノイズっぽくうるさいときなど、EQで高域を削るとこもってしまいますが、“DeClick”を使えば高域はあまり削らずに聴きやすくなり、後処理がしやすくなります。また、“De-bleed”は、ヘッドフォンからのクリック音漏れを、”De-hum”は、ディストーション・ギターのハムノイズの軽減に役立ちます。このようにRX6は、簡単にノイズを改善もしくは軽減することができる、困ったときの助け舟ツールと言えます。
ここで紹介したのはほんの一部で、RX 6のすべての機能を紹介するのは、この誌面上だけでは到底無理です。ノイズを取る以外にも豊富な処理が本製品には詰まっています。今回のアップデートで、ポスプロだけでなく音楽制作でも便利!と言えるようになったでしょう。そのほかの機能は、IZOTOPEのWebサイトでたくさん紹介されているので、それも併せて参考にしてみてください。実は筆者は、もうこれ無しではいられない……というくらい使用頻度の高い製品になっているのです。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年8月号より)