
レイヤーにディストーションを忍ばせて
海外プロデューサーの音に迫れ!
初めまして。海外を拠点にEDMプロデューサーとして活動しているJapaRoLLです。第1回目は、IMAGE-LINE FL Studio 12で制作しているプログレッシブ・ハウスのトラックを題材に、“海外プロデューサーに引けを取らない音”を作るための技を紹介します。
特定帯域をひずませることができる
Fruity Fast Distを愛用
僕は、ドロップのメイン・リードやベースをレイヤーして作ることが多く、その一部にディストーションをかけてひずませています。愛用しているのは、FL Studio 12に付属のプラグイン・ディストーションFruity Fast Dist。シンプルながら狙い通りにひずませたりブーストすることが可能で、初心者の方にもオススメです。
それではまず、ドロップのリードへのかけ方を見ていきましょう。このリードは8つの音色で構成しており、そのうち中域を多く含む音にFruity Fast Distをかけて、ひずませながらブーストしています。またこのFruity Fast Distをコンプの代役として使っているのもポイント。ひずませるとピークがつぶれる(=音量のバラつきが少なくなる)のでコンプ代わりになるわけですが、エフェクターとしての特性は異なるため、明らかにコンプをかけたような音を避けたい場合にこうした使い方をしています。

このリードのエフェクト・チェインを説明しておくと、まずはFruity Parametric EQ 2で不要な帯域をおおまかに削り、後段にFruity Fast Distをインサート。ひずませることが主な目的だったので、インプット・ゲインの“PRE”を右に回し切りました。PREの右隣にある“THRES”はひずませる帯域を調整するためのノブで、右へ回すほどワイド・レンジになるのですが、帯域を絞ってひずませたかったため最小値に設定。“MIX”ノブでは原音とエフェクト音のバランスを決めることができ、出音を実際に聴きながら“落ち着いた音に聴こえるな”と感じる少し手前に設定しています。アウトプット・ゲインの“POST”も、ほかのレイヤーとの音量バランスを聴きながら上げ過ぎない程度にセットしました。
ディストーションをかけた音は、原音と聴き比べたときに違いがよく分かると思います。ひずませた音の方が分厚く、前に出てきます。ただしそのままだとほかのレイヤーとのバランスが悪かったので、コンプをかけて軽くまとめた後、ひずませたことによって持ち上がった不要な高域(この場合10〜20kHz辺り)をEQでカットしています。ディストーションはファットな音を作るのに役立ちますが、すべてのレイヤーにかけると、ただひずんだ汚い音になってしまいます。なので一部のレイヤーにさりげなく使用するのがポイントです。

Fruity Blood Overdriveで
サブベースに温かみを加える
次は、サブベースをひずませて低域に温かみを加える方法です。題材曲のサブベースに使ったのは、FL Studio 12に付属のディストーションFruity Blood Overdrive。Fruity Fast Distよりも高域の持ち上がり方が上品で、より自然なブーストや倍音が期待できます。

この曲のサブベースは、サード・パーティ製のNATIVE INSTRUMENTS MassiveとFL Studio 12純正のBooBassで作った2つの音色をレイヤーして作っています。キックがタイトなのでデュレーションを長めに設定し、ベロシティはキックと重なるところを若干強めに、それ以外の部分を弱めに鳴らして強弱を付けました。そして2つの音色をバスにまとめてFruity Parametric EQ 2で400kHz以上をばっさりとカットし、Fruity Blood Overdriveをかけています。

この曲ではサブベースにFruity Blood Overdriveを使いましたが、キックに用いることもあります。例えばサウンドにもうひとパンチ加えたいときは、浅めにかけると効果的です。ただしリリースが短く、タイトなアタック感を求める場合には逆効果ですので、ご注意ください。
最後は応用編。リード・ベースのひずませ方です。リード・ベースはサブベースの上に乗るパートで、フレーズの輪郭を担うもの。この曲ではサード・パーティ製シンセLENNAR DIGITAL Sylenth1を使用し、サブベースと同じパターンで鳴らしてからノートを短めにエディットしました。これには2つの理由があります。一つはサブベースとの差別化。サブベースは長めのノートで構成していますが、リード・ベースも同じように長くするとバランスが悪くなってしまいます。そしてもう一つの理由は、ノートを短くすることで疾走感を出せるからです。

このリード・ベースも幾つかの音色をレイヤーして作っていますが、今回はメインとなる音をガッツリとひずませてみました。エフェクト・チェインに関しては、サード・パーティ製のマルチバンド・コンプ、WAVES C6でアタックとリリースを調整しつつ足りない中低域をブースト。その後Fruity Parametric EQ 2で不要な低域と高域をカットしました。こうした処理をした上で、CAMEL AUDIO Camel Crusher→Fruity Fast Distの順に2つのディストーションをインサート。これらを併用したのは、ひずみのかかり方と質感が違うからです。前者では現代のダンス・ミュージックらしいひずみと骨太なサウンドが得られ、後者では狙った帯域にエッジを加えることが可能です。それから幾つかのサード・パーティ製プラグインをかけ、最後にFL Studio 12付属のFruity Reeverb 2で残響を少し加えました。


今回解説した通り、ひずみはさまざまな使い方が可能です。そして一番大事なのは“さりげなくかける”こと。深くかけたい場合は“2段使い”や複数のプラグインを併用することで、スムーズなひずみを作り出せます。一つの音を細かく作り込むことで海外レベルに近付くでしょう。
FL Studio シリーズ・ラインナップ
FL Studio 12 All Plugins Bundle(99,990円)
FL Studio 12 Signature Bundle(パッケージ版のみの販売:31,000円)
FL Studio 12 Producer Edition(24,000円)
FL Studio 12 Fruity Edition(12,800円)
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