
出力用のエフェクトを駆動させるDSP
本体からUSBストレージに直接録音可
Fireface UFX IIは、アナログ+デジタルのオーディオ入出力を30イン/30アウト備え、最高24ビット/192kHzのビット&サンプリング・レートに対応したオーディオI/Oです。Mac/Windowsをサポートし、コンピューターとはUSB 2.0で接続します。入出力の内訳は、アナログ・イン/アウトが12ch、AES/EBUイン/アウトが1系統、ADATイン/アウトが2系統という構成で、ADATのうち1系統はS/P DIFイン/アウトとしても使用可能。このADATのチャンネル数が動作サンプリング・レートによって異なるため、トータルの入出力数は44.1/48kHz時に30イン/30アウト、88.2/96kHz時に22イン/22アウト、176.4/192kHz時には18イン/18アウトとなります。アナログ・インはch1〜4がマイク/ライン・インで、アナログ・アウトは4ch分が2系統のヘッドフォン・アウト。このほかワード・クロック・イン/アウトを1系統、MIDI IN、OUTを2系統装備しています。
すべての入出力は、Mac/Windows対応の専用ミキサー・ソフト、TotalMix FX(無償)でルーティング可能。APPLEのApp Storeで発売されているiPadアプリ、TotalMix FX For iPad(480円)を購入すれば、iPadとFireface UFX II(クラス・コンプライアント・モード)をUSBで接続して操作することもできます。
TotalMix FXは全出力にEQ、コンプ、リバーブ、ディレイを備え、これらはFireface UFX IIの内蔵DSPで処理されるため、レイテンシーがほぼ皆無の状態でエフェクト込みのモニター・ミックスを作れます。プロジェクト・スタジオなどで、各ミュージシャンのためにそれぞれ違ったモニター・バランスを作るようなこともできます。
ハードウェア面での特徴と言えるのが“DURec”(Direct USB Recording)。これは、フロントのUSB端子に接続したUSBストレージやハード・ディスクへ直接マルチトラック・レコーディングできる機能です(最大30trをWAVで録音可)。Fireface UFX IIへの入力をDAWソフトなどに録音しながら、バックアップ用のレコーダーとして回しておくのもよいでしょう。ライブ録音中に回しておけば、万が一コンピューターがフリーズした際にも保険をかけておけるので、非常にありがたい機能ですね。
以上の機能はFireface UFXとほぼ共通ですが、今回一番の変化がAD/DAやアナログI/Oなど基本性能の刷新ということなので、実際に試してみることにしましょう。
ハイファイかつ密度を感じるD/Aの音
A/Dの音は従来機より自然でクリーン
検証に使用したのは、APPLE Mac Pro(Mid 2012)モデルとAVID Pro Tools 12.7、コンデンサー・マイクのNEUMANN U87、マイクプリのSHEP/NEVE 31102です。まずはモニター音から聴いてみましょう。必要な周波数がバランス良く出ていて、ミックスしやすい音色ですね。全体的に最近流行のサラッとしたハイファイさで、かと言って軽いわけではなく密度は十分という印象。TotalMix FXのミキサーがよくできているので、本体をパワード・スピーカーに直接つないで、ミキサー側で音量を下げていっても詰まる感じはしないです。モニター・コントローラーを介さずに、本機のみでモニターした方が、音抜けが良い場合もあるかもしれません。
次に内蔵のマイクプリを試してみます。ゲイン・レンジが75dBあり、PAD無しでも大音量が受けられるため、どんなマイクでもそのまま使えそうですね。ボーカルとアコースティック・ギターでチェックしてみたところ、変なギラつきやひずみも無く、中~高域のつながりが良いナチュラルでクリーンなサウンドです。筆者が使ったことのある同社過去モデルのマイクプリには、単体機のマイクプリに比べてちょっと痛いピークがあるなと感じていたので、大幅に改善されたポイントだと思います。
続いてはマイクプリを31102に変えてテスト。NEVE系のモヤついた低域が整理されて、現代的な音色が得られました。以前のモデルはハイエンドなADコンバーターに比べると高域の天井が低く、抜け切らない感じがしていましたが、本機ではスッと抜ける感じになっていますね。これは価格を考えると驚異的。楽器編成が小規模な録音でも、あまりいじらずに音作りができそうです。
最後にDURecをチェック。ライブ録音時に止まってしまうシチュエーションを想定して、録音中にコンピューターを落としてみましたが、USBストレージ内のファイルは音切れもなく無事。そのファイルをPro Toolsにインポートして、Pro Toolsで録音したデータと逆相でミックスしてみたところ、完全に無音になりました。
RMEオーディオI/Oの特筆すべきところは、スペックもさることながら安定性にあると思います。筆者はこれまでに複数のモデルを購入してきましたが、ドライバーの安定性と更新頻度、更新期間の長さは他社では考えられません。これだけでも安心してお薦めできます。


撮影:川村容一
(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年8月号より)