「RME Fireface UFX II」製品レビュー:新たなAD/DA部を持つRMEのフラッグシップ・オーディオI/O

RMEFireface UFX II
RMEは1996年の創業以来、安定性と信頼性の高いオーディオI/Oを作り続け、確固たる地位を築いたブランド。その製品は、ミュージシャンの自宅スタジオやライブ・レコーディングの現場はもちろん、放送局やプロジェクト・スタジオなどに業務用機器として導入されるなど、“定番”と言っても差し支えないレベルで浸透しています。そんなRMEがフラッグシップ・オーディオI/OのFireface UFXをリファインし、Fireface UFX IIを発売したとあらば、いやが上にも期待が高まります!

出力用のエフェクトを駆動させるDSP
本体からUSBストレージに直接録音可

Fireface UFX IIは、アナログ+デジタルのオーディオ入出力を30イン/30アウト備え、最高24ビット/192kHzのビット&サンプリング・レートに対応したオーディオI/Oです。Mac/Windowsをサポートし、コンピューターとはUSB 2.0で接続します。入出力の内訳は、アナログ・イン/アウトが12ch、AES/EBUイン/アウトが1系統、ADATイン/アウトが2系統という構成で、ADATのうち1系統はS/P DIFイン/アウトとしても使用可能。このADATのチャンネル数が動作サンプリング・レートによって異なるため、トータルの入出力数は44.1/48kHz時に30イン/30アウト、88.2/96kHz時に22イン/22アウト、176.4/192kHz時には18イン/18アウトとなります。アナログ・インはch1〜4がマイク/ライン・インで、アナログ・アウトは4ch分が2系統のヘッドフォン・アウト。このほかワード・クロック・イン/アウトを1系統、MIDI IN、OUTを2系統装備しています。

すべての入出力は、Mac/Windows対応の専用ミキサー・ソフト、TotalMix FX(無償)でルーティング可能。APPLEのApp Storeで発売されているiPadアプリ、TotalMix FX For iPad(480円)を購入すれば、iPadとFireface UFX II(クラス・コンプライアント・モード)をUSBで接続して操作することもできます。

TotalMix FXは全出力にEQ、コンプ、リバーブ、ディレイを備え、これらはFireface UFX IIの内蔵DSPで処理されるため、レイテンシーがほぼ皆無の状態でエフェクト込みのモニター・ミックスを作れます。プロジェクト・スタジオなどで、各ミュージシャンのためにそれぞれ違ったモニター・バランスを作るようなこともできます。

ハードウェア面での特徴と言えるのが“DURec”(Direct USB Recording)。これは、フロントのUSB端子に接続したUSBストレージやハード・ディスクへ直接マルチトラック・レコーディングできる機能です(最大30trをWAVで録音可)。Fireface UFX IIへの入力をDAWソフトなどに録音しながら、バックアップ用のレコーダーとして回しておくのもよいでしょう。ライブ録音中に回しておけば、万が一コンピューターがフリーズした際にも保険をかけておけるので、非常にありがたい機能ですね。

以上の機能はFireface UFXとほぼ共通ですが、今回一番の変化がAD/DAやアナログI/Oなど基本性能の刷新ということなので、実際に試してみることにしましょう。

ハイファイかつ密度を感じるD/Aの音
A/Dの音は従来機より自然でクリーン

検証に使用したのは、APPLE Mac Pro(Mid 2012)モデルとAVID Pro Tools 12.7、コンデンサー・マイクのNEUMANN U87、マイクプリのSHEP/NEVE 31102です。まずはモニター音から聴いてみましょう。必要な周波数がバランス良く出ていて、ミックスしやすい音色ですね。全体的に最近流行のサラッとしたハイファイさで、かと言って軽いわけではなく密度は十分という印象。TotalMix FXのミキサーがよくできているので、本体をパワード・スピーカーに直接つないで、ミキサー側で音量を下げていっても詰まる感じはしないです。モニター・コントローラーを介さずに、本機のみでモニターした方が、音抜けが良い場合もあるかもしれません。

次に内蔵のマイクプリを試してみます。ゲイン・レンジが75dBあり、PAD無しでも大音量が受けられるため、どんなマイクでもそのまま使えそうですね。ボーカルとアコースティック・ギターでチェックしてみたところ、変なギラつきやひずみも無く、中~高域のつながりが良いナチュラルでクリーンなサウンドです。筆者が使ったことのある同社過去モデルのマイクプリには、単体機のマイクプリに比べてちょっと痛いピークがあるなと感じていたので、大幅に改善されたポイントだと思います。

続いてはマイクプリを31102に変えてテスト。NEVE系のモヤついた低域が整理されて、現代的な音色が得られました。以前のモデルはハイエンドなADコンバーターに比べると高域の天井が低く、抜け切らない感じがしていましたが、本機ではスッと抜ける感じになっていますね。これは価格を考えると驚異的。楽器編成が小規模な録音でも、あまりいじらずに音作りができそうです。

最後にDURecをチェック。ライブ録音時に止まってしまうシチュエーションを想定して、録音中にコンピューターを落としてみましたが、USBストレージ内のファイルは音切れもなく無事。そのファイルをPro Toolsにインポートして、Pro Toolsで録音したデータと逆相でミックスしてみたところ、完全に無音になりました。

RMEオーディオI/Oの特筆すべきところは、スペックもさることながら安定性にあると思います。筆者はこれまでに複数のモデルを購入してきましたが、ドライバーの安定性と更新頻度、更新期間の長さは他社では考えられません。これだけでも安心してお薦めできます。

rear2 ▲リアは左から、電源端子、MIDI IN、OUT、USB端子、iPadをつなぐためのUSB端子、ワード・クロック・イン/アウト(BNC)、2系統のADATイン/アウト(オプティカル)、AES/EBUイン/アウト(XLR)、ライン・アウト×8(XLR、フォーン)、ライン・イン×8(フォーン)が並ぶ
Totalmix_802 ▲TotalMix FX。Fireface UFX II本体の入出力を柔軟にルーティングできるほか、メイン・モニターやミュージシャン・モニターなど、すべての出力にかかるDSPエフェクトが備えられている。これにより、ニアゼロ・レイテンシーでのモニターが可能だ

撮影:川村容一

link-bnr3

サウンド&レコーディング・マガジン 2017年8月号より)

RME
Fireface UFX II
オープン・プライス(市場予想価格:240,741円前後)
▪接続形式:USB ▪オーディオ入出力数:最大30イン/30アウト(アナログ+デジタル) ▪ビット&サンプリング・レート:最高24ビット/192kHz ▪最大入力レベル:+18dBu(マイク・イン、ゲイン±0dB) ▪SN比:115dB RMS(unweighted、マイク・イン) ▪周波数特性:3Hz〜45.8kHz(−0.5dB、96kHz時) ▪全高調波ひずみ率:0.00032%(−110dB以下) ▪外形寸法:483(W)×44(H)×210(D)mm(ラック耳を含む) ▪重量:3kg REQUIREMENTS ▪Mac:OS X 10.6以上 ▪Windows:Windows 7以上 ▪共通:INTEL Core I3以上のCPU、USB 2.0/3.0端子×1