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UADプラグインが変える音楽制作の現場② ケネックノックのライブPA+UAD

UADプラグインはよくモデリングされている
“良いダシが出ている”感じがするんです

高性能なDSPの処理能力を生かして専用プラグイン・エフェクトを動作させるUNIVERSAL AUDIO UAD-2。ハードウェアの選択肢とプラグインの種類が年々増えており、特にオーディオI/O上でUADプラグインが動作するApolloシリーズの登場によって、PAでもUADを導入したいというユーザーも増えてきた。今回はそんな一例として、PAカンパニーのケネックノックで代表を務める杉山茂氏(写真左)と、同社エンジニアの重永直人氏(同右)にお話を伺った。

FOH Rackにアナログ・インサートしてもレイテンシーは問題無い

「もともとは、スタジオのPro Toolsでのミックスで使っていたんですよ。UAD-2 Octoを2枚入れてその感触が良かったので、PAの現場でも使えないかと考えていたときに、Apolloが登場したんです」

そう語る杉山氏。キャリア40年のベテランである氏は、FOHを担当しているAIのライブにApollo+UADプラグインを持ち込んだという。同社のメイン・コンソールAVID Venue D-Showのエンジン部であるFOH RackとApolloをアナログ接続。コンソールのチャンネルにApollo内のUADプラグインをインサートする形だ。

「UADプラグインはよくモデリングされている。もちろんコンソール内蔵エフェクトは便利だし、これらもクオリティは高いです。でもUADプラグインは……こういう表現で伝わるか分かりませんが、“良いダシが出ている”感じがするんです」

コンソールのDA/ADを経由することで生じるレイテンシーも気になるところだが、実用上問題は無いと杉山氏は語る。

「例えばUADのNeve 1073 Preamp and EQだとプラグインの遅延は1ms程度で、AD/DA変換を合わせても3msほどです。コンサートPAの場合、3msは距離で言えば1mですから、システム全体としては問題になりません。UADプラグインだと、マスタリング向けのPrecisionシリーズは40msくらい遅延があるのでPAで使うのは現実的ではありませんが、気をつけなければいけないのはそれくらい。ほかのUADプラグインはApolloでほとんど遅延なく使えますね」

ビンテージの名機を含めた何十Uのラックに匹敵するエフェクトを持ち歩く

杉山氏にほかの現場でのUAD使用状況を伺おうとしたところ、「実は弊社のスタッフで取り合いになってしまって、僕にあまり回ってこないんです。もう1台Apolloを買わないといけないかも(笑)」との答えが。そこで重永氏に使用例を聞いてみた。

「男性アイドル・グループのツアーにApolloを持っていき、リバーブとマスターのコンプレッサーとして使いました。会場によってコンソールが変わるので、自分のエフェクト・ラックを持っていくような感覚です。ただ、Apolloとノート・パソコンだけで何十Uというラックに匹敵してくれる。バス・コンプにしても、NEVEが合わなければSSLに変更することもできるわけですから。今後予定している別の現場では、イアモニを使うボーカリストの方へのモニター・ミックスにUADプラグインを使おうと考えています。モニター・ミックスの質を上げていく意味でもUADが使えるのではないかと」

杉山氏が自身の経験をもとに、こう付け加えてくれた。

「この価格で実機と近いものが使えるというのはすごいことです。ビンテージのアウトボードを持っていくのはいろいろな意味でリスクがあるし、現在出ている復刻版のもハードと比べても、ApolloとUADはかなりいいレベルで再現できていると思います」

FOH Rackとクロック・ジェネレーターの上に置かれたApollo(初代)。8系統のライン入出力を使ってFOH Rackと接続することで、Apolloを8ch分のエフェクト・プロセッサーとして使用しているという FOH Rackとクロック・ジェネレーターの上に置かれたApollo(初代)。8系統のライン入出力を使ってFOH Rackと接続することで、Apolloを8ch分のエフェクト・プロセッサーとして使用しているという

ケネックノックのUADプラグイン 5選

Neve 1073 Preamp And EQ

正式なライセンスを受けNEVE 1073をモデリングしたプリアンプ+EQ。ApolloシリーズのUnison対応で、インピーダンスやゲイン変化と併せて倍音の付加も再現 正式なライセンスを受けNEVE 1073をモデリングしたプリアンプ+EQ。ApolloシリーズのUnison対応で、インピーダンスやゲイン変化と併せて倍音の付加も再現

「もちろん実機も知っていますが、やっぱりいいですね。音が緻密(ちみつ)です。1073は、セカンド・ハーモニクスも多いし、サチュレーションの仕方も独特。それが音が前に出てくるという特徴につながっています。このプラグインでも実機のそうした部分がよく再現できているという感触を得ています。マイク・プリアンプとして使うにはステージからFOHまでアナログ回線を数十mも引き回さないといけないので、AIさんのボーカル・チャンネルにインサートするライン・アンプとEQとして使用しています」(杉山)

Lexicon 224 Digital Reverb

1978年にリリースされたデジタル・リバーブの名機。デジタル演算部のみならずアナログの入力トランスや12ビットAD/DAの特性までも再現している 1978年にリリースされたデジタル・リバーブの名機。デジタル演算部のみならずアナログの入力トランスや12ビットAD/DAの特性までも再現している

「これもボーカルのメイン・リバーブとして、少し広げる目的でAIさんのツアーで使用しました。LEXICON 224もリリースされた当時から使ってきましたが、よくモデリングしているという印象を受けました。中高域にある独特なツヤのある感じが特徴的です」(杉山)

Neve 33609 Compressor

2chバス・コンプ/リミッターの名機、NEVE 33609/Cを正式なライセンスを得て再現。出力ゲイン調整などの機能も追加 2chバス・コンプ/リミッターの名機、NEVE 33609/Cを正式なライセンスを得て再現。出力ゲイン調整などの機能も追加

「他社コンソールの内蔵エフェクトにこのタイプのコンプがあり、感触が良かったのでUADでも使ってみましたが、クオリティはUADの方が上。PAでも近くで音が鳴ってくれる感じがするのに、マキシマイザーより自然で、効果は絶大でした」(重永)

AMS RMX16 Digital Reverb

1980年代のデジタル・リバーブの名機を、実機の設計者がオリジナル設計図を引っ張り出しプラグインとして2年かけ開発 1980年代のデジタル・リバーブの名機を、実機の設計者がオリジナル設計図を引っ張り出しプラグインとして2年かけ開発

「RMXも実際に持っていたので、その音は承知しています。NonLinearやAmbienceというプログラムがあって、奥行きを出していくのに使えるリバーブです。おとなしめの曲で、リッチに広げるのに向いていると思います」(杉山)

Pultec MEQ-5 Mid-Range EQ

中域にフォーカスした真空管パッシブEQ。全帯域を扱うEQP-1Aなど、他のPULTEC製EQもUADで再現されている 中域にフォーカスした真空管パッシブEQ。全帯域を扱うEQP-1Aなど、他のPULTEC製EQもUADで再現されている

「この種のEQやFAIRCHILD 660/670といった真空管コンプは、スタジオならば3時間かけてウォーム・アップができますが、PAではそれもできませんし、当時の音が保たれている実機もそう多くない。だとしたらUADで使う方がいいと思いますね」(杉山)

UADとは?

DSPアクセラレーターのUAD-2ユニット上で稼働するプラグイン・エフェクト・システム。90種類以上の高品位な対応エフェクトをコンピューターに負荷を与えることなく使用できるのが特長だ。最新設計のオーディオ・インターフェースにUAD-2機能を搭載したApolloシリーズもラインナップされ、複数台のUAD-2/Apolloを同時に使用することも可能。各プラグインはUNIVERSAL AUDIOの公式サイトで購入できる。

PCIeカードのUAD-2と、Thunderbolt接続のUAD-2 Satellite Thunderbolt。UAD-2 SatelliteにはFireWire接続モデル、USB 3.0接続モデル(Windows専用)もある PCIeカードのUAD-2と、Thunderbolt接続のUAD-2 Satellite Thunderbolt。UAD-2 SatelliteにはFireWire接続モデル、USB 3.0接続モデル(Windows専用)もある
ラック・マウント型のApollo 8。Apolloシリーズのマイクプリには、アナログ回路をDSPを組み合わせたプリアンプ・モデリング技術、Unisonも搭載されている ラック・マウント型のApollo 8。Apolloシリーズのマイクプリには、アナログ回路をDSPを組み合わせたプリアンプ・モデリング技術、Unisonも搭載されている
テーブルトップタイプのApollo Twin MKII。モニター・コントロールやトークバックなどの機能も内蔵 テーブルトップタイプのApollo Twin MKII。モニター・コントロールやトークバックなどの機能も内蔵

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サウンド&レコーディング・マガジン2017年8月号より転載