
アクセサリー違いで全6種がラインナップ
最大入力音圧レベル159dBを達成
まずモデル説明から始めましょう。ATM350PL(オープン・プライス:市場予想価格39,000円前後)はマグネット式ロング・グースネックが付属したピアノ用、ATM350U(オープン・プライス:市場予想価格33,000円前後)はクリップ式のスタンダードなマウントを装備した管/弦楽器用、ATM350UL(オープン・プライス:市場予想価格34,000円前後)はクリップ式のロング・グースネック仕様でコンガなどの打楽器や大型の管/弦楽器用、ATM350W(オープン・プライス:市場予想価格39,000円前後)は木管楽器に最適な面ファスナー式のマウントが付属。ATM350UCW(オープン・プライス:市場予想価格22,000円前後)はワイアレス専用モデルとなっており、今回レポートするATM350Dにはドラム・マウントのAT8491Dが同梱されています。
全種類のマイク自体はすべて同じものですが、プリアンプの変更により、最大入力音圧レベルが旧モデルの149dBから159dB(1kHz@1%THD)まで上がりました。周波数レンジの広さの王様であるピアノにも使えるということは、同社の自信の表れと言えるでしょう。
159dBという数値は、アリーナ・クラスのPAスピーカーがフルで鳴っているときに、ホーンのスロート部にマイクを突っ込んでも得られるかどうかという音圧レベル。なので、ひずんでしまったときの音を聴いてみるのは無理です。また、感度は一般的なダイナミック・マイクより4〜5dB高い程度に収められているので(ネオジム・マグネットを採用したダイナミック・マイクと同等と思えば良いです)、取り扱い上は何ら問題無いでしょう。
そのほかの変更点としては、コードの出力コネクターがXLRミニからHIROSE HR10になりました。
味付けが無く汎用性の高い素直な音
軽量だが精度高く安定するグースネック
さて今回はスタジオにて、ドラムの収音用にいつも使用しているマイクと一緒に、ほぼ同じポジションで本機をマイキング。ちなみにいつものマイクとは、キックにAUDIO-TECHNICA ATM25、スネアに42年間愛用のSONYのコンデンサー・マイク、タムにSHURE SM57というものです。
自分でドラムをたたき、録音したものを聴いてみました。どのキットの収音でもAUDIO-TECHNICAらしい“余分には手を加えないが何もこぼさない、味付けは調理人(ミキサー)に任せる”という誠実な音を獲得。特にキックは、流行しているローブースト、ロー/ミッド・カットのロック・キック・チューニングによるマイクの音とは違い、ロック以外のジャンルにも使える音質です。ただ、本機を知らないドラマーのキックに向けると、“こんな小さなマイクで拾えるの?”と言われることがあるかもしれません。周波数特性グラフにある通り、40Hzは2〜3dB下がりはするものの、楽に拾えているように思われます。ピアノ収音にも問題無いでしょう。
タムやスネアに関しては小型カプセルならではの、周波数にかかわらず設定した指向性を保ちやすいという長所があり、角度や距離が多少変わっても倍音成分が変化しにくい印象です。どの帯域でも指向性はハート形になっています。本機はオプションで無指向/鋭指向性のカプセルも用意されていますが、同じ傾向のものであることを願います。
各楽器に適したクランプ部を持つATM350シリーズ。ショック・アブソーバーとウィンド・スクリーンを兼ねたスポンジにマイク・ヘッドを差し込んで使用するのですが、今回からクランプ部とグースネックをネジ止めで固定し、取り付けの際も90°ずつ回転できるようになりました。ネック部は軽量ですが、剛性が高く、少し触れたぐらいでは動きません。ネジ止め部も精度が高く、安定しています。
ATM350Dはクランプ部をドラムのチューニング・ボルトの上に連結でき、クランプを付けたままチューニングができる仕様。しかし筆者としては使いづらかったです。必ずしもチューニング・ボルトの上がベスト・ポジションというわけではないし、この連結したボルトの感触を嫌うドラマーもいると思います。ですがスネアのボトムに取り付ける際には便利だと思いました。またマウント部のどこかにマイク・スタンド用のネジが切ってあればなお良いです。そうすれば、とても素直な音で収音できるマイクなので、ドラムのオーバー・ヘッドにも使用できるでしょう。





(サウンド&レコーディング・マガジン 2016年11月号より)