「NEKTAR Impact LX88+」製品レビュー:主要DAWとスムーズに統合することができるMIDIコントローラー

NEKTARImpact LX88+
Impact LX88+はセミウェイテッド鍵盤の88鍵MIDIキーボードです。ハンマー・アクションの88鍵は他社からもたくさん出ていますが、オルガン鍵盤でもハンマー・アクション(ピアノ的な重い鍵盤)でもないセミウェイテッド鍵盤で88鍵となると意外と選択肢が少なくなります。そんな中、このImpact LX88+は価格、重さ、そして使い勝手のバランスがとても良く仕上がった鍵盤だと思いました。このほかに、鍵盤数が25/41/61でシンセ鍵盤を採用した機種が用意されています。それでは早速詳しく見ていきましょう。

セミウェイテッド鍵盤で8.2kg
自照式パッドを8個搭載

本体重量は8.2kgとピアノ・タッチの鍵盤を採用した機種と比べたらそれほど重くないので、セッティングは楽でした。本体の厚みも890mmで、大きめのデスクの上に乗せて高めの椅子を用意すればちょうど良い姿勢で演奏することができそうです。鍵盤の弾き心地は軽過ぎず重過ぎず、やや深めのストローク。スプリングで重さを調整している鍵盤はグラグラしていて安っぽい印象を受けることが多いですが、Impact LX88+は安定感があって強弱も付けやすい上、打鍵音も静かです。ピアノ・スタイルのボックス型鍵盤で、繊細な強弱の表現が必要なピアノ音源の演奏からシンセ・ソロまで、あらゆる楽器にちょうどよくフィットするバランスに調整されています。個人的に気になったのは黒鍵の角がやや角ばっていて、演奏していると少しひっかかる点ですが、慣れと好みの問題だと思います。

トップ・パネルの左端にあるピッチ・ベンドとモジュレーション・ホイールは、適度な重みと滑らかさがあり高級なキーボードに使われる部品といった印象。実際DAWで記録したデータを見てみると非常に滑らかで、ガタガタすることなく美しいカーブを描くことができました。こちらも非常にバランス良く調整されていると思いました。

フェーダーは9本、ノブは8個付いています。こちらもモジュレーション・ホイールと同様とても滑らかで、かと言って重過ぎず、シンセなどのパラメーターを操作していてもとても気持ちが良いです。後述するDAWとのインテグレーションにもとてもマッチする良いバランスだと思います。さらに自照式パッドは8つあります。結構強くたたかないと鳴らないようなパッドではなく、NATIVE INSTRUMENTS Maschineのように弱い力でも機敏に反応するタイプです。軽く触れるだけで反応してしまうパッドは演奏していて疲れない反面、ミス・タッチを拾ってしまうことも多々ありますが、本機はそうしたことがほとんどなく、またしても“ちょうど良い”感触です。

個人的に特筆すべき機能はパッドのノート設定が簡単に行える“Pad Learn”機能。本体設定ボタンでPad Learnモードにしたあと、設定したいパッドをたたき、その後アサインしたいMIDIノートを鍵盤で弾く……ということを繰り返していくとあっという間にパッドのアサインが終わります。こうした作業を他社製MIDIキーボードではジョグ・ダイアルや矢印ボタンなどを使って一つ一つ変更していたのに対し、Impact LX88+では非常に直感的に素早く操作できます。ドラム・キットを各パッドにアサインするといった基本的なものだけでなく、鍵盤では限界がある同音連打を2つのパッドを使って演奏する場合などにも生かせて非常に実用的です。

そのほかのトランスポート系のボタンや設定を変えるためのボタンはソフトなゴム製。こうしたボタンでありがちなグニャッとした押し心地ではなく、ソフトなクリック感があり、“押した”という実感があります。見た目以上に細かなこだわりを感じます。

主要DAWの設定を一発登録できる
“DAWインテグレーション”機能

ここまでは主に本体のハードウェア的な部分のレビューをしてきましたが、次はMIDIコントローラーの本分であるところの“いかに素早く目的のMIDIデータをDAWに送れるか”を見ていきましょう。まずImpact LX88+には、今どきのMIDIコントローラーによくあるエディターがありません。そうしたエディター・ソフトの代わりに“Nektar DAW インテグレーション”と称して、各メジャーDAW(STEINBERG Cubase、MOTU DP、APPLE Logic、PRESONUS Studio Oneなど)上でImpact LX88+の設定を一発登録してくれる便利な設定ファイルが用意されています。試しに私が使っているStudio One用の設定ファイルをインストールしてみると、ソフト内で外部デバイスとして画像付きで登録され、デバイスのMIDIポートの設定まで終わった状態になっていました(画面①)。この部分は初心者にはとてもうれしい機能ではないでしょうか。また、本体では“Mixerモード”と“Instモード”をボタンで切り替えることができ、Mixerモードでは各チャンネルのフェーダーやパンの調整を、Instモードでは一部のプラグインのパラメーターを即座に操作することが可能となっています。まさにDAWインテグレーション。DAWと溶け合う操作性。今後のさらなる機能充実にも期待です。

▲画面① PRESONUS Studio Oneのデバイス編集画面。Nektar DAWインテグレーションの専用ファイルをインストールするだけで、MIDIポートの設定まで自動で登録してくれる ▲画面① PRESONUS Studio Oneのデバイス編集画面。Nektar DAWインテグレーションの専用ファイルをインストールするだけで、MIDIポートの設定まで自動で登録してくれる

実際に触る前は、上位機種のPanoramaに比べると見た目が地味な廉価版という印象があったImpact LX88+ですが、弾き心地のちょうど良さ、細部へのこだわり、必要十分な機能、そしてちょうど良い価格……。オールジャンルで使い倒せる、とても良いMIDI鍵盤であると感じました。

▲リア・パネルには、左からフット・スイッチ端子(フォーン)、MIDI OUT、USBポート(電源供給とデータ転送用。iPadで利用の場合、別売りのAPPLE Camera Connection Kitが必要)を備える ▲リア・パネルには、左からフット・スイッチ端子(フォーン)、MIDI OUT、USBポート(電源供給とデータ転送用。iPadで利用の場合、別売りのAPPLE Camera Connection Kitが必要)を備える

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サウンド&レコーディング・マガジン 2017年5月号より)

NEKTAR
Impact LX88+
47,000円
▪キーボード部:88鍵ベロシティ対応、セミウェイテッド鍵盤、ピッチ・ベンドとモジュレーション・ホイール、スプリットとレイヤー・ボタン、トランスポーズ・シフト・ボタン(アップ/ダウン) ▪コントロール部:ロータリー・ポット×8、30mmフェーダー×9、ボタン(割り当て可能)×9、専用トランスポート・ボタン×6、プリセット・コントロール設定の保存×5、ページ・ボタン ▪パッド:8つ(ベロシティ対応)、イルミネーション(4色LED)、4種のベロシティ・カーブと3種の固定ベロシティ、ノート・ラーン機能、パッドごとにノートとMIDI CCの設定が可能、4個のパッド・マッピングの保存と呼び出し、クリップとシーンLEDボタン ▪外形寸法:1,276(W)×890(H)×279(D)mm ▪重量:8.2kg REQUIEREMENTS ▪対応 OS:OS X 10.7以降、Windows 7以降(DAWの動作条件も要確認)、iOS