
50kHzまでの再生能力を持つツィーター
内蔵パワー・アンプはICEPOWER製
特徴はまず目に留まるであろう、シルバー・グリルの中でゴールドにきらめくリボン・ツィーターではないでしょうか。50kHzまでの再生能力を持っており、高周波領域で圧倒的な分解能を誇っています。剛性の高いウーファーもツィーター性能に対応すべく新たに開発されました。入力には標準でXLR入力端子とRCAピン入力端子を備えており、プロ機からコンシューマー機まで対応可能。さらに本機は独自のHEDDブリッジ・システムというデジタル接続の拡張ポートがあり、DanteやAES/EBU、AES67などに対応する拡張モジュール(別売り)が用意されています。USB 2.0でコンピューターとダイレクトに接続可能なモジュールやBluetoothを使用したワイアレス接続が可能になるモジュールなどもあり、あらゆる機器から入力することが可能な点が新しい世代のスピーカーだと感じさせられました。
また、高性能なスイッチング電源を使用しているICEPOWERのデジタル・アンプを採用しており、電源はユニバーサル仕様で85V〜265Vという幅広い電圧に対応しています。このサイズのスピーカーでユニバーサル仕様のものはあまり見かけないので、自宅からスタジオまで、あらゆる場面で使えるスピーカーだと思います。
透明感のある高域と量感豊かな低域
高解像度で細部にわたる表現力
まずは7インチのウーファーを持つType 07を筆者のスタジオに設置して試聴してみました。余談ですが、筆者は初めてADAMのスピーカーを聴いたとき、“なんて奇麗で高解像度な音を出すツィーターなのだろう”と感心したのを覚えています。ただ個人的に試した幾つかのモデルについては、高域に対して低域が付いてきていない印象で、そのアンバランスさが惜しいなと感じたこともありました。ADAMの流れを汲むHEDDのスピーカーもそこが気になっていましたが、リファレンスCDを再生した瞬間、良い意味で期待を大きく裏切られ、“これはすごいスピーカーだ!”という認識に変わりました。
まずリボン・ツィーターが鳴らす高域にひずみ感が全く無く、高解像度でどこまでも開放的かつ透明感があります。小さな音量でも大きな音量でもその特徴は変わらず、今までさまざまなスピーカーを聴いてきましたが、このような特性は初めての経験です。その恩恵か、音源の距離感が分かりやすく、録音している空間の空気感が伝わってくるようです。そこにタイトで、なおかつボリューム感も併せ持つウーファーの低域が合わさり、聴いていて本当に気持ちが良く、今までのスピーカーでは物足りないと感じるほどの衝撃がありました。音圧感もType 07より一回り大きなスピーカーと互角か、それ以上の高音圧にも応えてくれる印象です。リズム録りなどの大きな音が入力されるような場合でも安心して使用できるでしょう。
いろいろなジャンルの音楽や自分が現在進行しているセッションの音源などを再生してみましたが、どの音源でもそのイメージを崩さず正確なサウンドで、このスピーカーの実力を実感できます。細部にわたる表現力を感じ、いろいろな音楽をあらためて聴きたくなるスピーカーに出会えたという気持ちになりました。
次に、自宅作業スペースなどに相性の良さそうな一回り小振りのType 05も試聴しましたが、こちらもType 07と全く変わらないサウンド・イメージで、ウーファーのサイズが6インチにもかかわらず、とてもタイトで量感のある気持ちの良い低音を再生してくれました。このサイズでここまでの質感を持つスピーカーはほかに無いのではないかと思います。もう一つ感じたことは、どちらのモデルもスタジオのような音響環境が整った場所で鳴らしたときと、自宅のような音響環境のあまり良くない場所で鳴らしたときの音の印象がほとんど変わらないということです。設置する場所の環境に左右されにくいので、さまざまな現場で使いやすいスピーカーではないでしょうか。
これだけの魅力ある音でありながら、とても手にしやすい価格帯を実現していることにHEDDの本気が伝わりました。モニター・スピーカーの新しい時代がやってきたと感じざるを得ません。ぜひ実際にお店などで聴いて、新世代のスピーカーの音を体験してみてはどうでしょうか。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年4月号より)