「RME ADI-2 Pro」製品レビュー:DSDの録音/ネイティブ再生にも対応したUSBオーディオI/O

RMEADI-2 Pro
筆者はLYNX STUDIO TECHNOLOGY AES16EやMERGING HorusなどのオーディオI/O、FORSSELL TECHNOLOGIESやPRISM SOUNDのAD/DAコンバーターを使い分けていますが、以前はRMEのPCIオーディオI/Oを使用しておりました。安定性や音質にも満足していたので、今回同社の新しいオーディオI/O=ADI-2 Proを試せるのが楽しみです。

アナログ部はすべてバランス回路
レンジが広く前に来るPCMの音質

ADI-2 Proは、Mac/Windowsに加えiOSにも対応したUSBオーディオ・インターフェースです。アナログ入出力の数は2イン/4アウトで、メイン・アウトL/R(XLR&フォーン)からch1/2、2つのヘッドフォン・アウト(TRSフォーン)からはch1/2とch3/4を出力することが可能。各ヘッドフォン・アウトからは同じソースを出力することも、異なるソースを出力することもできます。また、アナログ部分はすべてバランス回路で構成。通常はプロ機でも、バランス入力後にアンバランスへ変換し、出力段でバランスに変換しているので、本機はハイエンドな仕様と言えます。こういう部分に、RMEの本拠であるドイツっぽさを感じます。そしてこの仕様にもかかわらずハーフ・ラック型。電源はスイッチングですが、それを差し引いて考えても驚きの設計だと思います。

デジタル入出力はステレオ1系統で、付属のブレイクアウト・ケーブルにAES/EBUイン/アウト(XLR)とS/P DIFイン/アウト(コアキシャル)、本体にS/P DIFイン/アウト(オプティカル)を備えています。

さてADI-2 Proは最高32ビット/768kHzのPCMのほか、1ビット/11.2MHzまでのDSDの録音/ネイティブ再生(DSD over PCM)に対応しています。まずはPCMから試してみましょう。アナログ・レコードの音を、ADI-2 ProのADコンバーター経由でSTEINBERG Nuendoに録ってみます。量子化ビット数は32ビットに固定し、44.1kHz、96kHz、352.8kHz、384kHzと、聴き慣れている44.1kHzからNuendoの最高サンプリング周波数まで段階的に録音。プレイバック時は、普段のAES16E+PRISM SOUND DA-2の組み合わせと再生レベルが合うようにADI-2 Proの出力レベルを調整し、コンピューターでASIOのデバイスを切り替えながら、まずはAES16EとDA-2のどちらもが対応している44.1kHzと96kHzで比較試聴します。

ADI-2 Proの音の印象は、どちらのサンプリング周波数でもクリーンで素直、ハイファイです。AES16E+DA-2の方が押し出し感やエッジの強さ、高域の柔らかさに富んでいますが、ADI-2 Proのハイファイな鳴り方はネガティブな感じではなく長所として聴こえます。どちらを選ぶかは音楽に選ばされるイメージで感心します。

352.8kHzと384kHzでの録り音は、ADI-2 Proでのみ再生。96kHzの録り音と比べてもワイド・レンジに感じられ、見通しが良いけれど前に来るイメージでとても良い印象です。また予想外なのは、352.8kHzと384kHzの違い。DXDと同じサンプリング周波数の352.8kHzでは音が滑らかで、DSD音源を聴いているときの印象に近いのです。384kHzでは高域にピークがあり、派手にエッジのある感じになっています。

ピークもディップも感じられない
DSDフィルター150kHz時の音質

次はDSDをチェック。DAWのMERGING Pyramixで録音したDSDファイルをTASCAM Hi-Res Editorに読み込み、プレイバックしてみます。ADI-2 Proに内蔵されているDSDフィルターを50kHzに設定して聴くと、PCMとDSDの良い部分だけを足した感じの音に。力強くてエッジがあり、PCMには見られない臨場感も再現されていると思います。ただし低域に少しだけピークがあるようにも、高域にディップがあるようにも聴こえます。DSDフィルター150kHz時は、ピークもディップも感じられないとても素直な音。ただし低域の押し出し感が少し減ります。筆者は、DSDの高域のノイズがどういう部分にネガティブに作用するのか体験したことがないので、このフィルターは好みで使い分ければよいかなと思います。

DSDネイティブと“DSD to PCM conversionモード”の切り替えもADI-2 Pro本体で可能ですが、出音はどちらも全く変わらないように聴こえます。前者の場合、出力音量は固定になりますが、後者ではフロントのロータリー・エンコーダーを使って調整できます。

AD/DA以外に印象深いのは、ヘッドフォン・アウトの音質。スピーカーの出音と同様にとてもクリアかつハイファイな印象で、素晴らしいと思います。また5バンドのパラメトリックEQと、ハイ&ローの2バンドのシェルビングEQが内蔵されていて、入出力に設定することが可能。このEQも素晴らしく、位相が狂わないリニア・フェーズ的な効き方でマスタリングにも使えそうです。なお、すべての設定は、フロントの液晶画面で容易に行えました。

今回、オーディオ・インターフェースは進化していると実感させられましたし、以前使っていたRMEの製品よりハイファイになっていたのも驚きです。海外サイトのマスタリング・フォーラムでも、ハイエンドのスタンドアローンAD/DAコンバーターよりRMEのオーディオ・インターフェースの方が好きというマスタリング・エンジニアの書き込みが増えてきたので、なるほどという感じです。

▲リア・パネルには左から、電源端子やUSB 2.0端子、S/P DIFイン/アウト(オプティカル)、デジタル・イン&アウト(D-Sub 9ピン、付属のブレイクアウト・ケーブルを使うとコアキシャル入出力のAES/EBUとS/P DIFに対応)、メイン・アウトL/R(XLR&フォーン)、ライン・インL/Rをレイアウト ▲リア・パネルには左から、電源端子やUSB 2.0端子、S/P DIFイン/アウト(オプティカル)、デジタル・イン&アウト(D-Sub 9ピン、付属のブレイクアウト・ケーブルを使うとコアキシャル入出力のAES/EBUとS/P DIFに対応)、メイン・アウトL/R(XLR&フォーン)、ライン・インL/Rをレイアウト

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サウンド&レコーディング・マガジン 2017年4月号より)

RME
ADI-2 Pro
オープン・プライス(市場予想価格:185,185円前後)
▪接続:USB 2.0(USB 3.0互換) ▪入出力数:アナログ2イン/4アウト ▪周波数特性:1Hz〜124kHz(ライン・イン、−1dB、@384kHz)、0Hz〜88kHz(メイン・アウト&ヘッドフォン・アウト、−1dB、@192kHz) ▪SN比:約120dB(@+13/19/24dBu、RMS、Unweighted) ▪全高調波ひずみ率:0.00016%(@−1dBFS、−116dB) ▪サンプリング周波数:44.1/48/88.2/96/176.4/192/352.8/384/705.6/768kHz(PCM)、2.8/5.6/11.2MHz(DSD) ▪クロック・ソース:インターナル、AES/EBUイン、S/P DIFイン、ADATイン ▪外形寸法:215(W)×44(H)×130(D)mm ▪重量:1kg REQUIREMENTS ▪Mac:OS X 10.6以降 ▪Windows:Windows 7以降 ▪Mac/Windows共通:INTEL Core I3以上のCPU、USB 2.0もしくはUSB 3.0端子 ▪iOS:iOS 7以降、DockもしくはLightning端子