
重厚でしっかりとしたボディ
各DAW用のマッピング・プリセットを内蔵
事前に価格のリーズナブルさなどを知っていたので勝手なイメージを持っていたのかもしれませんが、まず箱から出して手に取ったときに重量感のあるしっかりとした作りに良い意味で裏切られました。別売の専用LCDモジュール、Platform-D(15,000円)を取り付けると、ますますドイツ生まれらしい貫禄のあるたたずまいになります。
そんなPlatform-M、コントローラーとしてはとてもシンプルな作り。8本のチャンネル・フェーダーをメインとして、各チャンネルにロータリー・エンコーダーやボタン、パネルの右側にはマスター・フェーダーや録音/再生などを行うためのトランスポート・コントロールがレイアウトされています。
コンピューターとの接続は、汎用性の高いUSB 2.0なので困ることはないでしょう。また本体に各DAWへ向けたマッピング・プリセットが内蔵されているので、設定も簡単。現時点で対応しているのはABLETON Live、APPLE Logic Pro、AVID Pro Tools、BITWIG Bitwig Studio、COCKOS Reaper、MAGIX Samplitude、PRESONUS Studio One、PROPELLERHEAD Reason、STEINBERG Cubase、Nuendoの10種類で、主要なDAWを網羅していると言って良いでしょう。これらのプリセットは、Platform-M本体から切り替えることができます。またIMapという付属ソフトを使えば、オリジナルのマッピングを作って本体に転送可能。IMapは本稿執筆時、Windows版のみがリリースされていますが、Mac版も近日発表される予定です。
フェーダー間に余裕があり使いやすい
ポリシーを感じるシンプルな設計
Mac(OS X 10.11)とWindows 10の両方の環境においてPro Tools、Cubase、Logic Pro、Liveなど数種類のDAWでチェックしてみましたが、まずはシンプルな取扱説明書に感心。各DAWについて、設定の方法がたった数点の画面キャプチャーと番号で説明されているのです。キャプチャーのDAWの言語選択が英語になっているので読み替えは必要ですが、番号通りにやればビギナーでも間違えることなく設定できると思います。
実際に操作してすぐに気付くのが、フェーダー間の広さから来る余裕のある操作感です。多くのコントローラーが20mm前後なのに対して、Platform-Mは25mmほどあります。この5mmの差は思いのほか大きく、隣のフェーダーのことを気にすることなくガシガシ動かせます。また各チャンネルに装備されているボタンは、チャンネル・セレクト、ミュート、ソロ、レック・スタンバイのみというシンプルなラインナップで、このことも操作にスピードと安心感を与えるポイントです。マスター・フェーダーのすぐ隣にある4つのボタンとジョグ・ダイアル、縦横2つのズーム・ボタンはDAWによってアサインされる機能が変わります。マッピング・プリセットではチェンネル・フェーダーにはチャンネルの音量、各チャンネルのロータリー・エンコーダーにはパンが割り当てられるよう設計されており、設定がなるべく簡潔になるよう徹底しています。
バス・センドやエフェクト/インストゥルメントのパラメーターなどをコントロールできないこの仕様は、最近のコントローラーがボタン操作などでアサインを切り替え、より多くのパラメーターにアクセスできるようにしているのとは真逆のアプローチです。少し頑固で無骨な感じもしますが、レコーディング〜ミックスにおいて最も重要なファクターである“音量と定位”を、極力シンプルな操作で安心してコントロールできるようにしたのがPlatform-Mではないでしょうか。フェーダーやボタンなどの物理的なレイアウトや、簡潔なプログラムの設定などに一貫したポリシーを感じます。何でも器用にこなす多機能な製品ではありませんが、大事なポイントにフォーカスを絞っており、シンプルでタフな一台と言えます。
今後ソフトウェアの改良により、もっと多くのパラメーターへアクセスできるようになる可能性もありますが、個人的には今のシンプルで分かりやすい操作性に魅力と安心感を抱いています。タッチ・センス付きのモーター・フェーダーを駆使して、オートメーションを書いてみたいと考えている方などには、Platform-Dとセットでの導入をオススメします!(写真①)。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年4月号より)