
組み立て/収納が簡単で
慣れない作業でも安心
Eon Oneが入っている箱はかなり大きめなのでちょっとびっくりしましたが、箱から取り出してみると片手で楽々と持ち上がる重量で、コンパクトに仕上がっています。デザインもモダンで、サイドの波型ラインや全体の流線型イメージは自動車のプロダクト・デザインのようでかっこ良いです。ウーファーを兼ねる本体上面にミキシング・コンソールがビルド・インされていて、後面に高域用スピーカー・バー、およびその連結用バーが収納されています。いわゆるオールインワンですね。高域用スピーカーには2インチ・ドライバー・ユニット6個が縦のライン状に配列されていて、扇形になるように角度がついています。お互いの音の干渉を避けるように設計されているのでしょう。
組み立てはとても簡単で、特にケーブルなどは必要ありません。高域用スピーカーを取り付ける位置にコネクターが付いていて、ウーファーの上部に押し込むだけで完了です。連結用バーもそれぞれ上下にコネクターが付いているので、そのまま押し込んで接続するだけでとても簡単にセットアップできます。あとはウーファー後面に電源を接続するだけ。初めての組み立てでも10分もかからないで完成しました。スピーカー・スタンドが必要なものだと、スタンド自体の組み立てが難しかったり、そのスタンド上部にスピーカーを持ち上げることが危ない作業だったりします。その必要が無いため、音響機材に慣れていない方でも簡単に運用できそうです。Eon Oneを使用しないときは一式をまとめて収納できるので、保管も容易になっています。
低域から高域までバランスの良いサウンド
自然な音の広がりが得られる
パワード・ミキサーには6ch分の入力があります。2系統のモノラル入力はXLR/フォーン・コンボになっており、マイク/ラインの入力切り替えスイッチ、高域/低域用のトーン・コントロール・ノブ、リバーブのオン/オフ・スイッチとコントロール・ノブが搭載されています。また、ライン用のステレオ・インプットが2系統あり、それぞれフォーン、RCAピン入力に対応。もう1系統は3.5mmステレオ・ミニが入力できるようになっており、携帯メディア・プレーヤーも簡単に接続できます。さらに、Bluetoothによる入力機能も搭載しており、スマートフォンなどの対応機器とボタン一つでペアリングでき、BGMの再生をワイアレスで行えます。
早速、ミキサーにポータブル・プレーヤーを接続して音を聴いてみましょう。マスター・ボリュームを上げて音を出してみると、奇麗にサウンドが再生されました。異なったタイプの楽曲を幾つか試してみたのですが、低域から高域までとてもバランスが良く再生され、EQ調整の必要が無いくらいしっかりとしたサウンドが聴き取れます。マイクをつないで声を出してみましたが、こちらもEQが必要とは思えないナチュラルな音色です。
次に、大きい音量で曲を再生して10mくらい離れた場所で聴いてみましたが、音の伝達も問題なく、距離に対する自然なロール・オフで、うるさく聴こえることはありませんでした。スピーカーの指向角度は水平方向100°×垂直方向50°となっています。音源を再生し、スピーカーから5mくらい離れたところを横方向に歩きながら確認してみると、水平指向が100°でスパッと切れるというよりも、もう少し自然に広がっているように聴こえました。エリアの中心に置けば、前方から後方まで1台でも十分にエリア・カバーできるでしょう。
Eon Oneの実力を確かめたところで、実際の現場に持ち出してテストしてみることに。インストア・ライブで舞台の中央後方にセットし、その前でアーティストに演奏してもらいました。アーティストからは好評で、自分の音に包まれる感じでモニタリングしやすかったとのこと。また客席へは自然な広がりで音が届いていました。スペースの関係でFOHは常設のスピーカーも併用しましたが、ステージ上の環境は格段に良くなりました。
Eon Oneが実際に使用される場面は、小さなレストランやショッピング・モール内でのイベント、アコースティック・ライブ、公共施設での講演会などが多いと思います。そういった場所でもセットアップが簡単で、しっかりした音色と使いやすい機能を持っており、プロのエンジニアでなくても運用ができる良さを持ったポータブルPAシステムだと思います。


(サウンド&レコーディング・マガジン 2017年2月号より)