「NEKTAR Panorama P6」製品レビュー:DAWと高度な連携を誇る液晶画面付きキーボード/コントローラー

NEKTARPanorama P6
NEKTARは2009年にカリフォルニアのサンバレーで設立されたまだ新しい会社ですが、そのコントローラー群は評価が高く、日本でも発売されることとなりました。同社の製品は大きく分けてImpactシリーズとPanoramaシリーズがありますが、今回は最上位機種のPanorama P6が筆者のスタジオにやってきました。NEKTAR製品のコンセプトは、ソフトウェアの進化に対応したハードウェアとのこと。ミュージシャンとしては、ずっと楽器を触っている状態になるので、直感的な作業を中断されないというメリットが期待できそうです。

多くのDAWに対応し一部は完全統合
タッチの良いセミウェイト鍵盤

今回のPanorama P6は61鍵セミウェイト・キーボード仕様ですが、姉妹機として49鍵のPanorama P4、鍵盤とパッドを省いたPanorama P1があります。もともとPanorama P4は2012年にPROPELLERHEAD Reasonと連動するモデルとして発売。翌2013年にP6/P1が発売になるころにはSTEINBERG Cubaseとの連携も可能となり、現在はAPPLE Logic、STEINBERG Nuendo、BITWIG Bitwig Studioなどが強固に連動し、統合して使えるアプリケーションとしてうたわれています(NEKTARでは“DAWインテグレーション”と呼んでいます)。筆者のメインDAWはAVID Pro Toolsなので対応していないのかと思いきや、NEKTARのWebサイトを見るとPro Toolsに対応できるようにPanoramaをアップデートするMIDIシステム・エクスクルーシブが提供されていました(DAWインテグレーションではありません)。またWebサイトにはPRESONUS Studio OneやABLETON Live、IMAGE-LINE FL Studioなどへの対応方法も細かく記載されています。この辺りの状況は日々刻々と変わっているようです。

写真で分かるように、Panorama P6の本体はまるで単体シンセのよう。白/黒/赤、3色のデザインも良く、物欲を刺激してくれます。操作子の多さも特筆もので、左端にある100mmタッチセンス・モーター・フェーダーに始まり、9本の45mmフェーダー、12個の感圧パッド、30個以上のスイッチ、15個以上のエンコーダー、さらにカラー液晶ディスプレイまで付いています。こんなにいろいろ付いているのにUSBバス・パワーで大丈夫なのかな?と心配したのですが、電源供給用microUSB端子が別途用意されていました。とはいえ、しばらくは気がつかずに使えていたのは、この電源はモーター・フェーダーの動作に使うためのものだからだそうです。そしてセミウェイト鍵盤は相当タッチが良く、最高のハードウェアを追求したいという同社の姿勢がうかがえます。

統合対応ソフトでは音色の選択も可能
パラメーターも自動アサイン

まず試したのはPro Tools。基本的には汎用モードであるInternalモードでの使用になりますが、8chごとのボリュームやパン、フェーダー下のボタンでミュート/ソロ/RECアーム(それぞれを切り替え)ができます。トランスポートも機能しますし、アサインすればプラグイン音源のパラメーター・コントロールも可能です。また、コンピューターのキーボード・ショートカットをPanorama P6のボタンに8つまで記憶させることもできるので(この機能のみシステムの関係でMac OS X 10.11以降には非対応)、例えばトラックの拡大/縮小やクリップの切り分けなどを登録しておくと、スピーディに作業ができるでしょう。ミックス/編集ウィンドウの切り替えも本体上のボタンで行えます。さらに、パッドにはメモリー・ロケーションがアサインされ、ロケーターとして使用可能です。

手持ちのソフトの中でDAWインテグレーション対応がうたわれているものとして、APPLE Main Stageで試してみましょう。MainStageの性格上、基本はInstrumentモードで使うことになります。まずプリセット音色の選択が、Panorama P6上から可能(画面①)。各音色のパラメーターも自動的にエンコーダーとフェーダーにアサインされ、Panorama P6の画面にはエンコーダーのパラメーター名も表示されます。一方8本のフェーダーは基本的にADSRエンベロープ×2として機能しますが、オルガンのドローバーなどとしても使用可能。任意のパラメーターもアサインできます。

▲画面① MainStageでパッチを選択しているところ。右のエンコーダーを回してパッチ名から音色を探す。画面には現在選択しているパッチの主要なパラメーターが表示され、8つのノブに自動アサインされる ▲画面① MainStageでパッチを選択しているところ。右のエンコーダーを回してパッチ名から音色を探す。画面には現在選択しているパッチの主要なパラメーターが表示され、8つのノブに自動アサインされる

古くからPanoramaに対応しているReasonでも試してみたのですが、これこそフル・カバーという感じです。ほとんどのパラメーターやコントロールがPanorama P6上に自動でアサインされるので、かなりスピード感のある作業環境が構築できます。ReasonではTransportモードも便利です。トランスポートのボタンは本体上にありますが、このモードではカウンターやテンポなどがディスプレイ上に表示可能。さらにMixerモードではエンコーダーでEQやダイナミクス、センドのコントロールも行え、Instrument/Transportモードとの切り替えもボタンで簡単にできます。

そのほか、鍵盤やパッドで演奏するキー/スケール指定ができたり、パッドに同じノートを12段階のベロシティ違いでアサインしたりと、多くのことができるPanorama P6。ソフトや使い方によっては設定が煩雑になりますが、その設定さえ固めてしまえば、ほとんどの操作がコンピューターに触らずにできるようになりそうです。個人的にはPro Toolsもインテグレートしてほしいです!

▲リア・パネル。接続部は左からmicroUSB(電源用)、USB、MIDI OUT、フット・スイッチ端子とエクスプレッション・ペダル端子(共にフォーン) ▲リア・パネル。接続部は左からmicroUSB(電源用)、USB、MIDI OUT、フット・スイッチ端子とエクスプレッション・ペダル端子(共にフォーン)

サウンド&レコーディング・マガジン 2016年12月号より)

NEKTAR
Panorama P6
82,000円
▪外形寸法:1,007(W)×95(H)×330(D)mm ▪重量:7.7kg REQUIREMENTS ▪Mac:Mac OS X 10.7以降 ▪Windows:Windows 7以降