
ツィーターとウーファーを刷新し
トランジェント・レスポンスを改善
LYDシリーズの3モデルは、生産完了となったBM MKIIIシリーズのラインナップのサイズを踏襲しているのですが、キャビネットの色が黒から白へ変更された点がインパクト大です。
それから全モデルのアンプ部が24ビット/96kHzのシグナル・パスを持ったクラスDアンプに統一されました。リア・パネルには入力端子(XLR/RCAピン)のほか、感度を変えるSensitivityや非使用時に省電力モードにするStandby Modeを搭載。また、低音域拡張の設定ができるBass Extension、可聴位相のずれを誘発せずに音色を変化させるSound Balanceと、スピーカーと後壁からの距離によって起こる低周波域のひずみを改善するPosition、といったDSP機能も用意されています。
またトピックの一つとなるのは、クロスオーバー周波数が高くなったこと。モデルによってポイントは違いますが、ツィーターとウーファーが担当する周波数の境目がBMシリーズの2kHz辺りから4kHz辺りへと高い位置に変わりました。新開発のソフトドーム・ツィーターとマグネシウム・シリケート・ポリマー素材を使用したウーファーを採用することで、トランジェント・レスポンスが良くなるほか、ウーファーが広いレンジを請け負えるようになったということですね。音の変化が気になります。
締まった低域と伸びの良い高域
ワイドかつクリアな音像でモニターできる
まずはスタジオでLYD 7/8を聴いてみました。入力はXLRで接続し、DSP機能はとりあえずフラットにしておきます。BM MKIIIシリーズからスピーカーの中身はいろいろと変わってはいますが、良い部分をそのまま保持しながらも音像がワイドでクリアになっています。周波数特性はそれほど変わっていないですが、低域の締まった感じを残しながらも高域が奇麗にはっきり伸びているところが好印象。ボーカルの周辺となる中域の定位感もトランジェントが良くなったせいか、さらにはっきりしました。
次にリア・パネルの設定を見ていきます。まずSensitivityを、最高出力が+20dBu以上のプロ仕様のオーディオI/Oを使用する場合に有効な−6dBで試聴。すると余裕が出るのか、音が広がって奥行きが出ました。逆に感度を上げていくとどんどん詰まっていくように感じます。使う機器に合わせて変更していけるということでしょう。
DSPの設定も変えてみます。Bass Extensionを変更してみると、聴いている音量が変わるわけではないのですが、低域の感じ取り方が変わり、それに影響されて全体の出音の印象も変わってきました。個人的には“0Hz”が自然で良かったです。
LYD 7と8では、LYD 8の方が若干音質がクリアで、音量を大きく出した際のパワーにも余裕が感じられます。リズム録りなどではLYD 8の方がやりやすそうですね。
次に自宅の作業部屋でLYD 5/7を聴き比べてみました。両者とも音色が似ていますが、LYD 5は僕の環境では少しパワー不足。高域も若干強く感じました。全体的に音はコンパクトですが、もちろんLYD 7と比べてそう感じるだけで、机上でスピーカーの間隔を左右70cmほど空け、上から見て正三角形となる位置でモニターするのには向いているように思います。Bass Extensionを“−10Hz”、もしくはSound Balanceで、20Hzを1.5dB上げて20kHzを1.5dB下げる“D”にすることで好みの音になりました。
LYDシリーズはタイトな音を聴かせてくれて、スタジオでも自宅でも低域の感じが分かりやすく音像もつかみやすいモニター・スピーカーです。自宅ではあまり大きな音が出せない方も多いかと思いますので、各モデルでの音の差が少ないことはうれしいですよね。スタジオではLYD 8、自宅ではLYD 7という選択も良いかもしれません。


(サウンド&レコーディング・マガジン 2016年10月号より)