
最大音圧レベル140dBを達成
上位機種と同等のマイクプリを搭載
H4N Proは、内蔵XYステレオ・マイクの2chとマイク/ライン・イン(XLR/フォーン)2chを、計4tr同時録音可能なハンディ・レコーダーです。また簡易MTRとしての機能もあり、その場合は同時録音数が最大2trに制限されますが、楽器を録ってからボーカルを録音するなどのオーバー・ダビングや、内蔵のギター・エフェクトなどを活用した楽曲制作にも使用可能です。
今回の機能強化で内蔵のXYステレオ・マイクが最大音圧レベル140dBまで対応しました。これによってライブ会場などで爆音になってしまう状況でも、音が割れずに適正なレベルで録音をすることが可能です。また同社のハンディ・レコーダーの中では、現状、最大の音圧レベルとなっているので、ZOOMの本気度がうかがえます。合わせてマイク自体の音質もグレード・アップ。SN比も向上し、上位機種と変わらぬクオリティとなりました。マイク/ライン・インもH5やH6と同等のマイクプリになっており、こちらも“Pro”という名にふさわしいアップデート。最高24ビット/96kHzでの録音が可能です。
また個人的に気に入ったところは、マイク・イン(XLR)部分にケーブルの抜けを防止するロック機能が搭載されたことです。こちらは上位機種のH6などにも無い仕様で、録音中のケーブル脱落や接触トラブルの心配が無くなり、よりProの名に合った製品だと思いました。
電源は単三電池2本で約6時間動作します。さらにバック・パネルの電池ケース内にあるスタミナ・スイッチを入れることで、録音フォーマットは16ビット/44.1kHzのWAVに限定されてしまいますが、約10時間の連続使用が可能。また電源オフ時にUSBケーブルでコンピューターとつなぐことで、USBバス・パワーが供給され、SDカード・リーダーやオーディオI/Oとして機能します。
アウトプットはヘッドフォン/ライン兼用の端子(ステレオ・ミニ)が1つサイド・パネルに付いていますので、デジタル一眼カメラなどのホット・シューに本機をつけてライン・アウトをカメラの入力につなぐことで、カメラ内蔵マイクよりも高音質な音を映像に同録することが可能です。
なお、一つ注意点として本機で使用できるSDカードはSDHC(最大32GB)までの対応になり、多少相性があること。製品ホームページの推奨SDカードを確認することをオススメします。
操作ミスが起きにくいボタン配列
大音量再生でも破たんしない音質
さて実際のテストですが、今回ホール・ライブの仕事があり、現場メモ録音で普段はH6やH2Nを使用するところを本機に変えて使用してみました。
内蔵のXYマイクはステレオ指向角を90°と120°で切り替え可能。今回は広がりが欲しかったことと、設置場所の正面にお客さんが居たため、120°にて使用しました。
ゲインの設定はサイド・パネルにあるボタンで数値指定するのですが、これが意外と使えるな、という印象。ライブ現場で微妙な設定ができるため、時間の限られた中でベストなレベルへ敏速にセッティング可能です。また数値をメモしておくことで、同じような現場の際に正確なリコールができ、セッティングの時間をより短縮できます。
録音中は曲ごとにRECボタンを押し、マーカーを入れていましたが、その際のボタンの押下もしやすかったです。調べてみるとH4NSPからの変更で、RECボタン横の再生/停止ボタンの形が○から□に変更になり、RECボタンとの区別がなされたとのこと。暗いライブ会場でも手探りでボタンが識別でき、間違って止めてしまった!なんて事故を未然に防ぐことができると思いました。
実際に録音した音をスタジオで確認しましたが、大きな音量で出力しても音が破たんせず、普段H6で録っているものと変わらない、クオリティの高い音質で収録されていました。サイズはH6より一回り以上も小さいですが、大変優秀だと思います。
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H4N Proは小さなカバンにも収まるサイズでありながら、音質や使い勝手は上位機種に対抗でき得るものがあり大変驚きました。コンパクトさの中に充実した機能、良質な音質を備えているので、ハンディ・レコーダーの購入で迷っている方にはぜひともオススメします。より良い録音ライフを楽しんでみてはどうでしょうか。



(サウンド&レコーディング・マガジン 2016年10月号より)